おっぱあぁぁぁぁぁぁいっ!

「おっぱあああああああああああい!」


 誠は雄叫びを上げ、眼を開く。瞬間、眼前に迫っていたユーリの身体が吹き飛んだ。


「なにぃぃぃぃぃぃ?!」


 吹き飛ばされたユーリは、きりもみ状態で家の壁面へと激突する。ガコン! ドコン! 鈍い音と共に、壁面に陥没痕が刻み込まれた。


「なっ! がああっ なんだッ! その力っ?! なんだその量はぁ?!」


 ユーリは自らを突き飛ばした、ソレが描く放物線を睨みつけた。白濁色の液体。甘い香りの液体。自身を弾き飛ばした……


「母乳だとぉ?? いったいどこから! どこからそんな母乳が?!」


 誠の足下に出来た影。そこから噴き出すのは大量の母乳。まるで、入口を狭めたホースから吹き出す水のごとく、凄まじい勢いを保っていた。それがユーリを突き飛ばしたのだ。


『まあ、私は歩く乳タンクと呼ばれていた。これくらいは当たり前だな』


 ズズッを影がうごめき、中から緑色の髪をした少女が姿を現す。

 金色の双眼に、裸体を包む腰まで伸びた緑の髪。吸乳鬼の女王たる――ラミア。


「ラミア……さん」


 誠はよろよろと立ち上がり、眼の前に立つラミアに歩み寄ってゆく。


「ラミアさん……僕は…‥僕は」


 だがラミアは、誠に向かって胸部を突き出した。


「さあ、誠。私のおっぱいを吸え。お前は……私のおっぱいを吸ってくれるのだろう?」

「……はい。もう迷いません。僕はラミアさんのおっぱいを吸います!」


 ガブリ! ジュルルル! 誠はラミアの乳房に吸いつくと一気に母乳をすすり上げた。


「んひぃぃぃぃぃぃぃ! しゅごいいいいいいいいいいい!」


 ブシャアアアアアア! ラミアの乳房から母乳が溢れ出し、誠はゴクン! ゴクン! と喉を鳴らし飲み込んでゆく。すると、


「ひっ、ひいいいいいい! 誠ぉ。なぜお前は幼女のおっぱいを吸っているんだぁぁぁ!」


 その様子を見たユーリが、カタカタと身体を震わせ始める。震える手で、誠とラミアを指差した。


「気でも違ってしまったのか誠?! 少女のおっぱいを吸うなんて……君はどうにかしている!」

「――いいや! どうもしていない!」


 誠はラミアの乳首から乱暴に口を離し、ユーリに向き直った。


「ユーリ! 君の言ったように僕のおっぱいの愛は重いかもしれない! おっぱいの愛は偽物かもしれない! 父さんのような変態かもしれない! だけど僕は!」


 誠はグッと両手を握りしめる。


「僕はおっぱいが吸いたい! この気持ちは本物だぁぁぁ!」


 瞬間、誠はユーリに向かって突っ込んだ。

 策などない。ただ真正面からユーリを打ち抜く。そのために拳を振り上げる。


「くらえ! 伝導共鳴!」


 ガコン! その拳がユーリの頬を捉えた。


「んほぉ!」


 瞬間、ユーリの乳首から母乳が飛び出し、服を突き破った。だがすぐさま体勢を立て直し、ギリッと歯を食いしばる。

「なんてことだ。誠。君は、君の父親以上の変態じゃぁないか! こんな変態を世に出すわけにはいかん! お前を生かせば、世界中の女のおっぱいが狙われてしまう! クソ!」


 瞬間、ユーリは跳躍し、仏間へと駆け込んでゆく。それを追う誠。


「まて! ユーリ! 大人しく人間に戻るんだ!」

「いいやダメだ! こんな大変な変態は生かしておけん! 生かしておけない!」


 ユーリは仏間に転がっている結衣の元までやってくると、バリバリ! と服を裂き、乳房を露出させた。


「母乳を吸ってパワーアップだ! 誠! お前の許婚の乳でなぁ!」


 ガブリ! ユーリは結衣の乳房にかぶりつき、母乳を吸い上げる。ビシャ! ビシャ! と音と共に結衣の身体が大きく跳ねた。


「んぎょおおお! なにコレ! どこココ!? 食事会に招待されて家に来て……ああっ! なんで私、夜神くんにおっぱいを……おっほおおおおおおおお!」


 ブシャァァァァァ! 結衣の乳首から噴き出した母乳は天井まで到達し、まるで雨漏りのごとく、ポタポタと畳の上に落ちてゆく。

 ドン! その畳を踏み抜きユーリが犬歯を覗かせた。


「さあ、いくぞ。誠。僕は世の女のために、君を生かしてはおけない! そして同時に僕は復讐を果たす!」


 ユーリが睨みを利かせたその先。そこにいるのは眼を見開き、歯を食いしばる誠の姿だった。


「許さん‥‥…許さんぞ! ユーリ! よくも結衣のおっぱいを!」


 誠は駆け出し、拳を振り上げる。


「うおおおおおおおお! 両刀伝導共鳴ツイン・バイブス・トランスミッション!」

「うおおおおおおおお! 誠ぉ!」


 対するユーリは開いた両手を放つ。

 バチン! 拳と手の平がぶつかった。すかさずユーリは、誠の拳を両手で鷲掴みにする。そのために誠はその場から動けなくなる。

 むろんユーリの乳房から母乳が流れ出たが、その量はわずかだった。


「君のおっぱいを吸うためなら、僕のおっぱいを生贄にしてもかまわない!」


 ブオン! ユーリが誠に乳房に向かって牙をむいた。


「さあ、今度こそおっぱいを吸わせろ! 死ぬまで吸い尽くしてやる!」


 ユーリの口が誠の乳房を捉えた。そのとき。


「このときを待っていたぞ! ユーリ!」

「なに?!」


 瞬間、誠は、ユーリに向かって胸を突き出した。自ら、ユーリの口に乳房を近づけたのだ。


「君も結局は吸乳鬼っ! 僕が最初に出会った吸乳鬼と同じだ!」


 ジュルルッ! 音を上げユーリは誠の乳房に吸いつく。


「んひぃ! しゅごい! だが、僕だって君を打ち倒すために、自分の母乳を犠牲にしてもかまわない! それだけの覚悟が! うおおおお覚悟が!」


 ガコン! 誠はユーリを胸で押し切り、仏壇へと突っ込んだ。誠の母の遺影がはじけ飛び、お供え物が地面に転がり、白濁色の液体が仏壇へ飛び散った。


「覚悟を持っているんだだああああ! くらえ! 往復運動伝導共鳴ピストン・バイブス・トランスミッション!》)


 ガンガンガンガンッ! 誠の拳が何度もユーリに叩き込まれる。肉打ち、骨響く音が重なって聞こえるほど素早い打ち込みだった。


「砕いてやる! その邪悪なおっぱいに対する価値観を! どりゃああ!」


 ドゴン! 体重を乗せた誠の拳が、ユーリに叩き込まれると仏壇はバラバラに砕け散ってしまった。

 ユーリは虚ろな眼をして、肩で息を繰り返す。

 だが、それは誠も同じだ。よろめきそうになったが、なんとか踏ん張って立っている。


「もうよすんだ。ユーリ。復讐からは何も生まれないぞ」

「お前が復讐の是非をどうこう言える立場か、この阿呆がっ。それに、誠ぉ……僕には君が言っていることが…‥‥正しいとは思わない。僕は……この世界から巨乳という存在を……無さなければいけないっ」


 咳き込み、吐乳し、乳首から母乳を垂れ流し、それでもユーリは立ち上がる。


「僕の母さんがそうだったように……貧乳とは弱さだ。弱さとは悪だ。だが、貧乳を虐げ、貧乳を貧乳たらしめている巨乳はもっと悪だ! だから僕はっ!」


 ユーリがバッと顔を上げた。赤い眼がグン! と光を放つ。


「巨乳という存在を抹殺する! そのために僕は吸乳鬼を使って世界に立つ! そのためには誠ぉ! お前が邪魔なんだよぉ!」


 ユーリが凄まじい勢いで突進する。


 同時に、両腕を胸の前で押し固める。ギュッと脇を絞め、ボクサーのように顎に手をあてがう。完全に乳房を覆い隠したのだ。


「これでどうだぁ誠! おっぱいは出てないぞぉ!」


 乳房が隠された。それは誠にとって痛手だ。伝導共鳴は吸乳鬼の乳房に打ち込んでこそ真価を発揮する。だが、


「関係ないさユーリ! 僕の拳で打ち砕くっ! 打ち抜いて見せる! おりゃあああああっ!」


 ガコン! 誠の右拳がユーリの腕に直撃する。それにともない2人の動きが止まった。


「止まったなぁ! 誠! このまま搾乳タイムだ!」

「まだぁあああああああ! まだ終わってなぁい!」


 誠は左手で右手首を掴み、一気に押し込む。


「突き抜けるぞ! 僕の拳は! くらえ! 突貫伝導共鳴ラッシュ・バイブス・トランスミッション!」


 ズドン! 誠の拳がユーリの腕を押しのけ、胸部に叩き込まれた。


「なぁにぃ?!」

「うおおおおおお! 母乳を噴出させて吹き飛べ! ユーリィ!」


 ブオオオン! 誠はバットでスイングするかのように、斜め上に向かって腕を振り抜いた。

 刹那、ユーリの乳房から母乳がロケット噴射のように飛び出し、ユーリの身体を持ち上げてゆく。ブシャアアアア! という音と共にユーリの身体が上へ上へと持ち上げられ、バリバリバリッ! と天井を突き破ってゆく。


「なっ、なんだこれはっ! これはあああああっ!」

「月まで吹っ飛べ! 母乳のすい星を描きながら!」


 ビシャアアアアアア! そうしてユーリは天井に大穴をあけ、そのまま空へ空へと舞い上がって行った。遠くその姿が消えてゆき、最後にはそれらしい影すら見えなくなった。

 ドサッ。誠は音を立て地面に倒れ込んだ。仰向けになり、大穴の空いた天井から夜空を見上げる。夜空には、ユーリが巻き散らかした母乳がキラキラと輝いていた。


「まるで母乳が描く流れ星。いや、天の川。ミルキーウェイだ……」


 そうして誠は眼を瞑った。だが直後、足音がして声を掛けられる。


「誠。よくやってくれた。よく、私のおっぱいを吸ってくれたな」


 その声は僅かではあるが、震えていたように誠は思う。だから誠は言った。己の中で一つの答えとして、確立した考えを。


「おっぱいは……正義です。だから、正義であるおっぱいを吸うのも……正義です。可笑しくなんかありません」

「ああ、そうだな」とラミアが笑った。


「そうだ。おっぱいは正義だ。ほら、私のおっぱいを飲め」

「……はい」


 誠が飲んだその母乳の味は、いままで一番美味しいと感じた。

 そこに少しだけしょっぱさを感じたのは、きっと気のせいだ。誠はそう思い、口の中に広がる母乳を味わっていた。


 ――おっぱい。美味しい。いっぱい。

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