無実の証拠
「……なるほどね。吸乳鬼にラミアさんの正体。信じられない話だね。確かに。てか、
「ごめん、
高架下での一件の翌日、誠は早朝に生徒会資料室を訪れ、尺取に対して隠していることを全て打ち明けた。内緒にしていたラミアの正体と吸乳鬼の存在。そして乳仮面のことについて。
「こうなったら、尺取に全面的に協力してもらおう」誠はそうラミアに伝え、それをラミアも承諾したために、こうやって洗いざらい打ち明けているのだ。
誠の対面に座っている尺取が、誠の足下を見た。
「それで、その吸乳鬼の女王たるラミアさんはどうしたんだい? いまどこに?」
「ああ、それなら僕の影の中さ。彼女は夜行性らしくて、日中は眠っているんだよ。それより尺取、こんな朝早くに呼び出してごめんね」
「別にいいよ。たまには遅刻せずに学校に行くのも悪くなかった。……それで、誠くん」
尺取はスッと眼を細め、パソコンに表示されたバストサイズ一覧の、
「誠くんの話を聞く限り、現時点で一番怪しいのは小鷹さんだ。その、吸乳鬼を作り出す……乳仮面ってのを所持している可能性が高い」
「やっぱり…‥‥尺取もそう思うのか。でも、僕は結衣の無実だって信じたい。からこそ、僕は結衣の潔白を晴らすために、結衣が犯人じゃないって証拠を掴みたい。だから力を貸してくれないか?」
「もちろんいいよ。他でもない誠くんの頼みだ。おっぱいの友だからね」
「ありがとう。尺取。それでさっそくなんだけど、どうやって結衣が乳仮面所持者かどうか調べたらいいと思う? まったく僕には見当がつかないよ」
誠が唸って見せると、尺取が「そうだね」と腕を組んだ。
「誠くんと結衣は許婚なわけだし、カマを掛けてみる方法もあるだろうけど…‥‥まあ、性格的に向いてないだろ。真っすぐすぎるからね。誠くんは」
「ははっ。そうだね。きっと感情的になってしまって、直接聞いてしまうと思う」
「だね。だから、取りあえず、証拠を集めてみたらどうだろう」
「証拠……?」
誠は、尺取が述べた「証拠」がなにを示すのは理解できず、首を傾げた。すると尺取はパソコンを操作して、2枚の証明写真を表示した。
「ちょっと、これを見てくれ」
2枚の証明写真にはそれぞれ女子生徒の顔が映っている。誠はそのうちの一枚の写真を見て、「あっ」と声を上げた。
「この写真、雨宮こころさんだ。昨日出会った、吸乳鬼の」
「そう、1年A組の
尺取はもう一枚の写真を指差す。
「
「AA……僕は好きな言い方じゃないけど、この子も貧乳だ。でも、尺取。この土倉さんがなんだって言うんだい?」
「おいおい、もう忘れたのかい? この子は、誠が最初に出会った吸乳鬼の女の子だろ?」
誠は「あっ」と声を上げた。
「思い出した! 最初に出会った吸乳鬼の女の子だ。おっぱいしか見てなかったから気が付かなかったよ。スゴイね尺取。なんでわかったんだい?」
「ははっ。さっき誠が話してくれた内容から、誠が初めて遭遇した吸乳鬼の女の子はこの子だろうって見当が付いたんだよ。どうにも一昨日から、入院してるって情報もあったしね」
「さ、流石おっぱい博士! ……でもさ」
誠は二枚の写真を指差した。
「だからって、なんでこの写真を僕に見せたんだ?」
誠が首をかしげてみれば、尺取が「えっとね」と言って椅子に座り直す。そして、2人の証明写真が表示されたPC画面を指差した。
「それは小鷹さんが本当に乳仮面所持者なのかどうか調べるためだよ。もし仮に、小鷹さんが犯人であれば、この2人と……つまり、雨宮さんと土倉さんと接触しているはずだ。だから、この2人の友人に『最近、お友達の雨宮さん/土倉さんが、小鷹結衣という人と会っているのを見たことがある?』って尋ねてみるのさ」
誠は「はっ」と気が付き、顔を上げた。
「つまり、結衣とこの2人に接触があったかどうかを調べるってことだね」
「そうなる。……ただね、誠」
尺取は困ったような顔になる。
「雨宮さんと土倉さんの友達が誰なのかまでは、分からない。人の友人関係はおっぱいと関係ないからね。だから、まずは2人の友人を探し出すことから始める必要がある」
「なるほど。なら尺取。手分けして、雨宮さんと土倉さんの友人を探そう!」
「うん。そのつもりだよ。それじゃあ私は、土倉さんを担当するよ」
「わかった。じゃあ僕は雨宮さんだ」
その後、誠と尺取は、念のため雨宮と土倉の証明写真を印刷しそれぞれが所持した。そして円滑に事が運ぶように、小鷹結衣の証明写真も印刷し手元に置く。
するとそのタイミングで、尺取が「それで誠君」と苦笑いを浮かべた。
「誠くん。その証明写真の出所を誰かに言わないでくれよ。生徒会が持っている生徒の写真を私が勝手に拝借してるだけだから、限りなくグレーに近いブラックだ」
「分かっているさ。危ない橋を渡らせてすまない。尺取。この件が解決したら、なにかお礼をするよ」
「たしかに、なにかお礼でもしてもらわないと割に合わないかもね」
「ははっ。その通りさ。……あっ。尺取。そろそろ行こうか。遅刻しちゃう」
誠は手に鞄を持ち、壁に吊るされた振り子時計を指差す。
8時25分。朝のHLまでにはいくぶんか時間があるが、生徒会資料室は特別連棟にあり、二年生教室は一般連棟にある。そのため、移動時間を考える必要があった。
「そうだね。そろそろ行こうか」
誠は尺取が鞄を手にするのを待ってから、2人して扉に向かう。
が、そのとき。
生徒会資料室の扉が開かれ、ある男子生徒が姿を現した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます