【第4回】第1章 可愛い戦闘侍女が付きました②

 家族にはもう少しだけまんしてもらい、俺は本日来て下さった参列者にあいさつに向かった。

 ここにくるまでに、父の【クリスタルプレート】に馬の確認が取れたとれんらくがあった。

 どうやらまだ馬に小さな針が刺さったままだったようだ。馬の毛並みと同じ色にられていて、深々と刺さっていた針は、よくさがさないと分からないように加工されていたそうだ。やたら確認の連絡がくるのが速いと思ったのだが、まだ現場で事後処理をしていた者が数名残っていたとのことだ。

【クリスタルプレート】については色々突っ込みたい……神がこの世界のすべての人にあたえたステータス確認のための魔法なのだが、機能はまんまタブレットPCなのだ。

【クリスタルプレート】と唱えて呼び出すと、サークル状のほうじんかび上がり、A4サイズのクリスタルでできた板が現れるのだ。この魔法には色々な機能が有るのだが、その中の1つに電話のようなコール機能が有るのだ。ほかにもタッチパネル仕様でフレンド登録、メールやパーティー内のチャット機能、写真や動画保存までできるみたいだ……青い魔法陣が異世界っぽくてめっちゃかっこいい。


 さて、針が見つかった事により、俺の暗殺わくのうこうになったのだが、たった7日間しかない異世界ライフの貴重な時間を、くだらない暗殺とかでけずられたくはない。さっさと犯人をあぶり出して、可愛い婚約者と遊ぶとしよう。

 色々思案しながらシスターに付いて行ったら、みながいる教会に直ぐにとうちやくした。

「皆様、今日は私の葬儀に集まっていただきありがとうございます。先にお伝えしておびしておきます。崖から落ちた際に頭を強く打ったようで、少し記憶があやふやな事が有るかもしれませんが、その際はどうかおこらずにごようしやください。それと折角来て下さったのに生き返ってすみません……と言うのもおかしいので、ここは素直に来てくれてありがとうと言っておきますね」

『生き返ってすみません』で少し笑いがとれて、場の雰囲気がなごんだ。

 だが、ここからだ。

「私が生き返ったのはまさに神の思し召しでした。仮死状態で私は女神様に会えたのです」

「おおー、神のご加護のたまものか、素晴らしい!」

 皆、口々に生き返ったせきしようさんしてくれているが、ここでばくだん投下だ。

「女神アリア様に生き返らせて頂いたのですが、その際に私はだれかに命をねらわれたのだと教えていただきました───」

 女神アリアはこの世界の主神だ。その主神の女神様が事故でなく暗殺だと教えてくれたと教会にきてくれた皆に説明したのだ。当然神殿内でのうそたばかりはしんばつが下ると皆信じている。犯人をらえるためのわなにアリア様の名前を使わせてもらう。

「ですが、女神アリア様は犯人の名を教えてはくれませんでした───」

 さらふくせんとして、女神様は俺が犯人を見つける事ができたらほうをあげると言ってくれたと話し、もし見つける事ができなくても、神殿のしんたくで犯人を教えてくれると言ってくれたと皆に伝えた。

「ですので、俺の神から与えられた試練は、生き残ることですね。生き残れさえすれば俺の勝ちです」

 さぁどうする? これだけ言っておけば犯人も直ぐにおそってきてくれるだろう。暗殺とかいんうつな事件はさっさと解決して、異世界ライフを早く楽しみたいのだ!

 場は騒然となったが、俺は再度診療所の方に引っ込んだ。母や兄妹きようだいたちに会うためだ。


    * * *


「リューク、体調はどうだ? おかしなところは無いか?」

「はい兄様、ご心配おかけしました」

「本当に心配したぞ。心配と言うより死んだと思っていたから凄く悲しかった」

「ごめんなさい」

 兄であるカイン君は現在18歳、フォレスト家の次期当主だね。母親は俺と同じマリア母様だ。勤勉で努力家、ゆうしゆうで、フォレスト家もあんたいだと言われるほどの優等生だ。見た目もちようイケメンで父親に似ている。性格もおんこうで俺や妹のナナの事を何時もやさしく可愛がってくれる。


「兄様、ナナは凄く悲しかったです。もう死んじゃダメですよ」

 あ! この娘、ゲームのデモに映っていたくるまの可愛い女の子だ!

 妹のナナは15歳、俺にべったりのブラコンのようだ。

 母親は第三夫人のミリム母様だ。俺とは腹違いの兄妹になる。

 ナナは生まれつき足が悪く、車輪の付いた車椅子のような物に乗っている。母親に似たのかとても可愛い顔をしており、がおが素敵な女の子だ。俺たち兄弟が可愛がるのも仕方ないだろう。見た目はフィリアに負けないほどのぼうの持ち主だ。髪は王家の者に多い赤系だが、ふわっとしたライトピンクの髪をけんこうこつあたりの長さで整えている。足が悪いせいもあってあまり外に出ないため、色白でき通るようなれいはだをしている。

 母たちとナナに大泣きされた後、少し会話し、皆には部屋の外に出てもらった。父様とこの後どうするのか話し合うためだ。話を聞かせて余計な心配をさせる必要はない。

「リューク、先ほどの教会での話は本当なのか?」

「いえ、がみさまに会ったのは本当ですが。犯人あばきの神託はしてくれません」

「どうするのだ……何か案はあるのか? あそこまであおったのだ、神託の事を信じてばくされまいとものぐるいで襲ってくるやもしれぬぞ?」

「それが狙いです……本来なら、そろそろ王都に向かわないといけません。ですが少し待ってもらっていいでしょうか?」

 俺が馬車で王都に向かっていた理由なのだが、王都にある学園の魔法科に入学するためだ。今年16歳になる婚約者のフィリアとナナも同じく魔法科に通う事になっている。

 5月7日が入学式の為に、フォレスト領から馬車で3日の王都にゆうを見て向かうところだったのだ。そこを襲われ今に至る。ナナは足が不自由なため、かいの専属じよが2人付く。その者たちと同じ馬車で向かっていたので今回難をのがれた。

 ちなみに兄カインは今年卒業で俺と入れ違いだ。兄は魔法特化の俺と違い、けんなどの武器を得意とする騎士科を首席で卒業した。俺は父に似ず母に似たためか、魔法適性の方が高かったので魔法科なのだ。

 母似の俺は水系の回復魔法と風系の魔法、少しだが神聖系とかみなり系の適性もある。回復魔法はこの世界ではかなり貴重で、両親ともに大変喜んでくれている。

 貴族がけつえんを大事にする理由に、魔法属性は遺伝で受けがれるという事実がある。

 平民に魔法使いが少ない理由の1つだ。貴族が優秀な魔法適性の有る遺伝子を多く囲ってしまっているからなのだ。

 妹のナナは父の属性が付いた為、火と土属性の適性がある。そのおかげで魔法科に入れたのだが、特別魔法が優秀というわけではない。だが、足が悪いため家から出ることが無い半引きもりだ……その分勉強に時間をてたのか、魔法科の首席合格らしい。

 めいある今年の新入生代表挨拶は、首席合格者のナナがやることになっている。

「うむ。命の危険があるのだ。お前の言うとおり学園行きはおくらせ、犯人がつかまるまでは俺が厳重な警備をいて守ってやる。お前は部屋から出ぬ方がいいな」

「父様、それじゃあ犯人が俺を襲えないじゃないですか。あまりがちがちな警護はダメですね。少数せいえいで油断させるほうが良いです」

わざと襲わせるのか!? カインならともかく、お前じゃ暗殺者にやられるだけだ!」

「ここだけの話ですよ。実は女神様に会った際に有用なスキルをすでに頂いたのです」

「なんと! どのようなスキルだ? 魔法か? それともけんのような技能か?」

 これはいくら身内でも言えないよね……チート過ぎだから、とくしておこう。

「スキルの内容は家族であっても女神様との約束で教える事はできません。ですが、そう簡単に殺されるようなものではないので、ご安心ください」

 たいざい期間7日しかないのに、王都までの馬車の移動で3日もつぶされるのはごかんべんだ。

 王都への移動を待ってもらい、俺は残り6日間をたんのうするつもりなのだ。

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