【第3回】第1章 可愛い戦闘侍女が付きました①

【異世界生活1日目】


 女神様のいってらっしゃいとともに目の前が真っ白になり、またフワッとゆうかんおそったと思ったら現実に落ちていた……けいこくがけからもっか転落中である。

 女神様! いきなりハードモードのアトラクションですね! こわすぎなのですが!

 どこかにぶつけたのか、頭に強いしようげきを受け意識がもうろうとなる。

 あ……今、俺のおくが脳内で統合されているみたいだ。感覚的にか理解できた。

「リューク様! だいじようでございますか! すぐに回復ざいを……ああっ! 容器が割れてしまっている。だれか! 回復剤かヒールを! リューク様しっかり!」

 この大声でさけんでいる人はの1人だ。今回俺を王都まで護送してくれる任にあたっていた人だよな? 公爵家が所有している騎士隊の二番隊隊長で今回の護衛任務の隊長さんだ。

 どうやらこちらの世界の俺の名前はリュークと言うみたいだ。

 崖を落ちる前に、俺が『馬車の操作をやってみたい』と、反対する騎士たちを困らせたのだが、人のい隊長さんはぎよしやわって俺を指導してくれていたようだ。で、王都に向かう渓谷の道が細くなる崖の手前で、『危険なのでここまでです』と言われ、御者に替わろうと馬車を止めに入った時に事件が起こった。

 馬が急に暴れだし暴走したのだ。そのまま、もうスピードで崖沿いの細い道にっ込んで行き、渓谷の谷底に馬車ごと転落してしまったのだ。隊長は必死で俺をき留め衝撃から守ろうとしてくれたが、最後に地面にしようとつしたひように投げ出され、その先の岩に頭をぶつけてしまったみたいだ。崖から降りてきている騎士たちの声が聞こえてきたが、そこで俺の意識が無くなった。

 意識が無くなる前にある記憶を思い出す。馬が暴れ出す前に御者と操縦を替わろうとした時に、ぐうぜんかげからき矢のようなモノを使った人物を目のはしとらえていた。

 がみさまは仮死状態にしてあげると言っていたが、まさか俺は暗殺されたのだろうか?


    * * *


 意識が戻り、最初に感じたのは異常な寒さだ。それもそのはず、俺の顔や体の周りには氷と沢山の色とりどりの花がちりばめられている。

 うん……これかんおけの中だね。

 はぁ~仮死状態ね……女神様、マジかんべんしてくださいよ!

 俺はこおりけでガクブル中だ。動きがにぶくなっている体を必死で動かし、なんとか体を起こす。

「うぉ! まさかそう中にゾンビ化しおったか!」

 神父らしき人が叫んだしゆんかんあちこちから悲鳴が上がる。葬儀に参列していた騎士の1人が剣をき俺のもとけつけてきた。このままだとこの騎士に首をねられてしまう。

「あ~、葬儀中にごめんなさい。まだ死んでないのですが……氷漬けで寒くて本当に死にそうです」

しやべった! ゾンビ化しておらぬのか!? 生き返りおった! おお! 神よ!」

 どうやらゾンビは喋らないようだ。

 寒さでほとんど動けない俺はひつぎから出してもらい、毛布を巻き付けられている。俺にすがり付いて泣いて喜んでいるれいな人は、俺の母親のマリア母様だね。


 そのまま教会の奥にあるしんりようじよのベッドに連れて行かれ、横にならせてもらったのだが、場はそうぜんとしたままだ。葬儀を行っていた教会の方からのざわつきがここまで聞こえている。さて、現状のあくから始めるとしますかね。

 神官っぽい人に回復魔法をけてもらい、診察が終わると凄く体が楽になった。

 初魔法がヒールですよ! もう僕ちゃん大感激です! とうしようを起こしていてもおかしくないのに、回復魔法で何事もなかったように調子が良い。異世界スゲー!

 診察を終え神官が出ていくと、ぐに入れ替わるように男の人が騎士2名を連れて入ってきた。えーと、この人はゼノ父様だね。

「良かった! 本当に生き返ったのだな! ああ、神よ! 感謝いたします!」

 母親の時もそうだったが、統合された記憶を思い出すのに、少しだけタイムラグがある。

「えーと、父様……ですよね? ごめんなさい、どうも頭を打った時に少し記憶が変になったようです」

「な!? もう一度神官を呼べ! 直ぐに再診いたせ!」

「父様、俺はどうなったのでしょう? 崖から谷に落ちたのは覚えているのですが……その後の事が思い出せません」

「そうか、実は騎士の操作ミスで馬が暴れて、お前は谷に落ちて死んでしまっていたのだ。不運な事故だったが、葬儀中に生き返ったのでびっくりしたぞ。教会で生き返るとは、まさに神のおぼしだな」

 でも死者は絶対生き返らないそうなので、仮死状態というのが正しいのだろうね。

「あれ? 事故あつかいになっているのですか?」

「ん? どういう意味だ?」

「あれは、事故ではないです。事故に見せかけ俺を殺そうとしたやつがいます。俺はその時御者台に居たので気付けたのですが、たまたまあの時、馬に吹き矢で針のような物を吹いた奴を視界のすみで捉えました。崖から落ちた馬はどうなりましたか?」

「落ちた馬は2頭とも死んでしまってまだ谷の底だ。ゾンビ化するとまずいし可哀かわいそうなので、明日にはしようきやく処分にする予定だ」

「良馬だったのに残念な事です。敵方に先に処分されてなければよいのですが、右側の馬のおしり辺りに針のさったあとが残っているはずです。かくにんしてもらえますか?」

「分かった、直ぐに人を向かわせる。でも誰が何のために?」

「分かりません……」

 まさかいきなり暗殺者に襲われるとか、アリア様、この異世界体験、危険すぎやしませんか? 俺、ハードモードとは聞いていませんよ? 勘弁してくださいよ。


 再度診察してくれた神官と入れ替わりに、とても美しい少女が入ってくる。ぎんぱつに近い色をしたストレートの綺麗なかみこしの下辺りまでびている。とても愛らしい顔をしているのだが、ふんは声を掛けるのを躊躇ためらうほどの神秘さをかもしだしている。その雰囲気を言葉にするなら、ようせい・天使・れん・純潔とかそういうおごそかな感じだ。

 ちがいなく美少女なのだが、話しかけてナンパできるような感じではない。思わず拝んでしまいそうになるほどのオーラが出ている。お年寄りなんか見ただけで「ありがたや、ありがたや」と唱えそうだ。そして、何より胸が大きい……つい目がそっちにいってしまう。そのようなむすめが俺を見た瞬間にき付いてきてワンワン泣き出したのだ。父様も俺たちを微笑ほほえましそうに見ている。他の騎士2名も同じ感じだ。

 この美しい娘は俺のこんやく者だ……。

 彼女の名前はフィリア。フォレスト家のにあたるラッセルしやく家の長女だ。

 10歳の社交界デビューの際に、俺にひとれをしてしまい、『わたくしの結婚相手はリューク様でないといやです!』とをこねおおさわぎ。聖属性の回復ほうが得意な家系という事もあって、俺とあいしようがいいのではと早くから婚約が成立した。

 フィリアはあまり気のないまだ幼かった俺と、もっと良い娘がいるのではないかと思っていた父親に少しでも好かれようと、しん殿でんに神聖魔法を学びに通った。がんった彼女は何時いつの間にかフォレスト領では『フォレストの聖女様』とまで言われるほどの女性になっていた。父様も今ではが非でもフォレスト家にむかえ入れようと考えているみたいだ。

「リューク様~! 良かった~エグッ、すごく悲しかったのですよ! ヒグッ」

「フィリアごめんよ、心配をかけたね」

 こんな可愛かわいい子が婚約者とは……アリア様のチョイスはらしい!

「あの、ゼノ様。部屋の外でナナちゃんが心配そうにしていましたよ」

「おお、そうだったな。直ぐに呼ぼう」

「お待ちください父様、先に俺の葬儀に来て下さった人たちに感謝と謝罪をしたいのですがよろしいでしょうか? 爵位を持った諸侯たちをいつまでも説明も無しに待たせては申し訳ないです。俺が直接謝罪した方が良いでしょう。家族とはその後ゆっくりしたいです」

「今日のお前はなんだかしっかりしていてたのもしいな。悪戯いたずら好きの15歳の子供と思っていたが、いつの間にか成長していたのだな。父としてうれしく思うぞ」

 あれま、変に気をつかいすぎたかな。中身23歳の営業マンだし、15歳の子と比べたらしっかりしていて当然だよね。

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