第104話:モンスターパーティー⑤
討伐完了の電子音が聞こえるなか、アルストはフロアを見渡していた。
クエスト内容は【五階層の宝物庫を探せ!】であり、ここがその宝物庫だとは思えない。先ほどの宝箱が置かれた部屋でもないとなれば、このクエストはまだ完了されないだろう。
「ドロップアイテム~!」
「……アリーナさん、まずはクエストを完了させませんか?」
「えぇー、いいじゃないのよー」
「ドロップアイテムは逃げませんからね?」
「……仕方がない。それに宝物庫って言うくらいだから、別にアイテムが手に入るかもしれないもんね!」
現金だなと思ったアルストだったが賢く黙っていた。
ただ、前回のレアクエストでもボスモンスターからのドロップアイテム以外に宝箱からアイテムを手にすることができたので可能性は高い。
アリーナが期待してしまうのも仕方がないと切り替えることにした。
「どこかに宝物庫につながる隠し扉や通路があるはずよね」
壁を叩きながらフロアを一周した二人だったが、それらしきものを見つけることはできない。
ならばと床を踏みつけながら歩いていると──
「あれ? ここだけ音が違いますね」
「どれどれ? ……あー、本当だね」
そう言ったアリーナはおもむろに賢者の魔銃を向けると──ハンマーバレットを撃った。
──ドゴンッ!
ゆかが破壊された衝撃で粉塵が舞う。
驚きに顔をひきつらせていたアルストだったが、粉塵が晴れた先からはさらに階下へとつながる階段が現れた。
「……この階段はどこまで続いてるんでしょうね」
「今が五階層と四階層の間っぽいから、四階層かしら」
「それだと五階層の宝物庫にならないんじゃ?」
「……こ、細かいことは気にしない! 進んだ先で上に向かう階段があるかもしれないじゃないのよ!」
進む先がここ以外にないのでどうしようもないのだが、下へ下へと向かっていることにどうしても不安を感じてしまう。
「とりあえず行くわよ! 目指せ宝物庫!」
「……お、おぉー?」
階段をさらに下りていく。今回はすぐに直進に変わる通路に出たものの薄暗くて先が見えない。
この先に何があるのか、本当に宝物庫があるのか、そんなことを考えながら進んでいると曲がり角に差し掛かった。
「……明かりが見えますね」
曲がり角の先、そこから光が漏れてきている。
お互いに武器を握り直しで顔を覗かせる。
曲がり角の先で見たもの、それは──
「あれは、転移門だわ」
「転移門って、五階層ごとにあるっていうやつですよね。なんでこんなところに」
「……なるほど、そういうことか」
一人納得したように呟いているアリーナ。
アルストは首を傾げながら次の言葉を待った。
「おそらく、あの転移門で転移した先に五階層の宝物庫があるとみたわ!」
「……他に道はなさそうですからね。でも危険じゃないですか? さっきの宝箱みたいに罠だって可能性もあると思いますけど」
「ここまで来て罠も何もないわよ! とりあえず先に進む! 気になったものはトライする! それで罠なら叩き潰す! それでオールオッケーよ!」
「……テンション高くないですか?」
「あっははー! 久しぶりにピンチの連続だったから楽しかったのよねー!」
ピンチの連続が楽しいというのはどうかと思ったアルストだが、ここでも賢く口には出さなかった。
「それじゃあ行きますか」
「今度こそ宝物庫よ! 高レアリティ素材を手に入れるのよ!」
両手を大振りしながら歩くアリーナに苦笑しながらアルストも歩き出す。
そして勢いそのままで転移門の中へと足を踏み入れた。
※※※※
歪む視界、揺れる足元、転移をする時は毎回こんな感覚になるのかとアルストは嫌な気分になっていた。
そして到着した場所、そこは──まさしく宝物庫といわんばかりに一面に広げられた金銀財宝、そしてフロアの中央には二つの宝箱が置かれている。
前回のレアクエストと似ており、宝箱にはそれぞれ意匠が施されていた。
一つには果実の意匠。もう一つには鎚の意匠が施されている。
「アリーナさんは鎚の意匠の宝箱ですよね」
「当然! ……って、アルスト君はそれでいいの?」
「構いませんよ。たぶんですけど、消費アイテム系のレアアイテムも気になりますから」
「ん~! ありがとう! アルスト君は本当にいい子だねー!」
お礼を口にしながらも気持ちが先走りスキップで宝箱に近づいていくアリーナ。
アルストも続いて宝箱の前まで移動する。
何が入っているのかドキドキしながら宝箱に触れた。
『【経験値の果実】を獲得しました。アイテムボックスをご確認下さい』
アイテム名でなんとなくの効果を予想したアルスト。
宝箱が消えるのと同時に景色が揺らぐと──宝物庫は廃遺跡へその姿を変えてしまった。
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