第103話:モンスターパーティー④
荒れるアリーナに顔をひきつらせながらもアルストはフレイムを放ち続ける。
正直なところ自分がいなくてもアリーナだけで倒せるんじゃないかと思ってしまうのだが、この場にいる以上はやれることはやるべきだと動き続ける。
へヴィゴーレムの攻撃は近くにいるアリーナばかりを狙っているのだが掠りもしない。
しばらくして、へヴィゴーレムのHPは五割を切った。
「アリーナさん、一度下がりましょう」
「このまま押しきる! ……と言いたいけど、相手の出方を見るのもおもしろいか」
「……判断基準はそこですか?」
アリーナが戦闘狂だと確信を得たアルストはそれ以上に言葉を費やすことはなかった。
その代わり、見つめる先に佇むへヴィゴーレムがどのような攻撃を始めるのか、その一挙手一投足を見逃さないようにと集中する。
すると、土色をしていた表面に変化が現れた。
「あれは、光ってる?」
「へぇ……ねえ、アルスト君」
「どうしたんですか?」
「ちょっと魔法を放ってくれないかな」
「いいですけど……フレイム!」
言われた通りにフレイムを三発放ったアルストだったが、着弾と同時に予想外のことが起きた。
「反ってきた!?」
「やっぱりかー」
「どわわわわっ! 分かってたなら言ってくださいよ! ってかやらせないでくださいよ!」
「ごめんごめーん。私の魔弾よりもアルスト君のフレイムの方が反ってくるならマシだと思ってさ」
あっけらかんと言い放つアリーナをジト目で睨みながら、アルストはなんとかフレイムを回避する。
「あれは
「……名前の通りの結果でしたね」
「そこで一つ問題です──アルスト君はどうやって戦いましょう」
「……あっ」
転職することができないアルストにとって、一角獣の銀角を使った魔法の攻撃が最大の武器だった。
しかし魔法が封じられたとなれば攻撃手段が限られてしまう。
一角獣の銀角でパワーボムやスマッシュバードを駆使して戦うことも可能だが、その分危険を伴うことになる。
「……や、やりますよ! せっかくここまで来たんですからね! それにヒールサークルもありますから、ヤバくなったらすぐに下がります」
「私一人でやってもいいわよ? ハンマーバレットもあるし、時空を越える長靴だってあるからどうとでもなるし」
「それじゃあいる意味がないじゃないですか!」
「責任感ってやつ? まあ、前に出てくれるなら助かるけどね」
最後にはウインクで返されてしまい照れてしまうアルスト。
リアルで会う機会があったとすれば、ただモゴモゴして会話もできないだろうなと思ってしまった。
「そ、それじゃあ行きますね!」
「んっ? 何も急いでるの?」
「何でもありません!」
これ以上の会話はへヴィゴーレムの動きもそうだが、アルストのコミュ力がゲームを介しても限界になりそうだったのですぐに駆け出した。
アルストの背中を追いかけて二丁を握り締める。
へヴィゴーレムまで五メートルの距離で立ち止まったアルストがスマッシュバードを放つと、その後方から二発のハンマーバレットが撃ち出された。
顔の前に両腕を立てて攻撃を防いだへヴィゴーレムが咆哮、周囲の地面が突如陥没する。
アリーナが右側へと移動し、空いたスペースにアルストが飛び退き距離を取る。
そのまま左側へ駆け出すと、二人で挟み込むようにして攻撃を再開した。
アリーナは変わらずハンマーバレットを撃ち出し、アルストは陥没した地面を進み肉薄する。
アルストとへヴィゴーレムの距離が三メートルに迫ったところで一瞬の煌めきが発動した。
「パワーボム!」
『グウオオオオォォッ!』
振り抜かれた一角獣の銀角はアルストが思っていた以上のダメージをへヴィゴーレムに与えた。
四割まで減少したHPに驚きつつもすぐさまへヴィゴーレムの間合いから離脱。
直後にはハンマーバレットが襲い掛かった。
『ブフオオオオォォッ!』
両手で地面を殴り付けると目の前の地面から土壁がせり上がりハンマーバレットの盾になった。
ならばとアリーナの選択は、賢者の魔銃でメテオバレットを撃ち、次いで暁の魔銃でハンマーバレットを撃つ。
土壁がメテオバレットによって粉砕されると、土煙の中からハンマーバレットが飛び出していく。
土壁が破壊されるとは思っていなかったへヴィゴーレムはハンマーバレットの直撃を受けた。
HPが三割まで減少、さらに土煙で視界が悪い。
魔導師と魔導銃士の相手に魔法反射の外皮を手に入れているへヴィゴーレムにとって、物理攻撃で追い詰められている今の現状は予想外だった。
『……グオオオオォォ』
故に動きが緩慢になってしまう。
そして、それを見逃す二人ではない。
畳み掛けるようにアルストが再び肉薄し、アリーナがハンマーバレットを撃ち出す。
攻略法を見いだしたとなれば、その後からは早いものだ。
へヴィゴーレムのHPは止まることなく減少していくと、アルストの狙い通りアリーナがラストアタック賞を手にする形で光の粒子がフロアに広がった。
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