第101話:モンスターパーティー②

 一角獣の銀角を手にしたアルストは、特殊効果がもう一つあることに気づいていた。

 攻撃魔法であることは確認しているものの、MP消費が激しく今のアルストでは三回が限界である。

 どうするべきかと悩んでいたものの、フレイムではアリーナのように多くのモンスターをまとめて倒すことができないこともあり、一度使ってみることにした。


「もう一つの特殊効果を発動します!」

「えっ! もう一つあったの!」

「俺のMPだと三回が限界なんで、躊躇してたんです!」

「やっちゃえやっちゃえ! なんとかなるわよ!」


 何を根拠に、と思ったアルストだが結局のところ使わないといけない状況に変わりはない。

 杖の先端を一番モンスターが多い方向へ向けると、アルストは特殊効果――範囲殲滅魔法を発動した。


「グランド・エア!」


 地面と空中に対となる緑の魔法陣が浮かび上がると、間の空間にかまいたちが出現して範囲内にいるすべてのモンスターを光の粒子へと変えてしまう。

 あまりの威力にアルストだけではなく、魔弾を撃ち続けていたアリーナまでもが驚愕の表情を浮かべていた。


「……ちょっとアルスト君! それヤバすぎだから!」

「だけど、俺のMPじゃあと二回しか使えないですよ!」

「なーに、なんとかなるなるー!」

「軽いな!」


 今の一撃で相当な数のモンスターが減り、アリーナは正面のモンスターを押し返すことに成功した。

 しかし、いまだにモンスターは湧き出てきている。

 フロアに閉じ込められる前に見たモンスターの数を有に超える数のモンスターを倒しているはずなのだが、いまだに途絶えることがない。

 外のモンスター以上に、別のところからも湧いているのだろうかと不安を覚えてしまう。


「これっていつ終わるんですかね?」

「多分だけど――右上に変なカウントが出ているのよね」

「えっ? ……ほ、本当だ、気づかなかった」

「これがモンスターを倒すと減ってるから、このカウントが〇になれば終了じゃないかしら」


 これで光明が見えた、そう思ったもののその数は現時点で235を示しており、これが多いのか少ないのかがアルストには分からない。


「ちなみに、アルスト君がグランド・エアを使ったときには52減ったわね」

「……全然足りないですね」


 残り二回で同じ数を倒せたとしても半分にも届かない。

 アリーナと協力すれば残る数を倒し切ることは可能だと思うのだが、一つの懸念が存在する。


「ボスモンスター、いるんですかね?」

「いると思うわよー。たぶん、死にそうになった状態で戦うことになるんだと思うわ」


 別にボスフロアがあればひと息つけるのだが、モンスターパーティの最後に現れるとなればそのまま戦闘になるので危険な状況となる。

 一つ目の山場を乗り越えられたとしても、二つ目の山場が訪れる。


「まあでも、やるしかないわよね」

「モンスターが一匹なら、グランド・エアがなくても対抗できそうですし」


 まずは目の前のモンスターパーティを乗り越えることを目標として二人は動き出した。

 アリーナはMPの残りを気にすることなくメテオバレットを二丁から放ち続ける。

 アルストもフレイムを着弾と同時に連続発動させて少しずつではあるが数を減らしていく。

 包囲網が狭まり接近戦になったタイミングで、アルストは二回目のグランド・エアを発動した。


「これで、残り137!」

「結構減ったわねー」

「次が最後ですからね!」

「分かってるって!」


 再び目の前のモンスターを押し返し始めたアリーナは、あえて自分から前に出て積極的にモンスターを倒していく。

 実のところ、モンスターパーティ開始当初はカウントが500あった。

 その内、半分以上を倒しているのがアリーナである。

 そのアリーナが積極的にモンスターを倒しにきたとなれば、その数は一気に減少を見せていく。


「アルスト君は自衛に努めててね!」

「ア、アリーナさんは!」

「残りは私が、なんとかしてあげる!」


 二丁銃を手にモンスターの群れに突っ込んでいくアリーナ。

 まるで舞を踊っているかのような動きでモンスターの攻撃を掻い潜りながら、至近距離から魔弾を撃ち込む。

 メテオバレットだけではなく、サウザンドバレットやハンマーバレットと範囲や威力を重視した魔弾を惜しむことなく撃ち続ける。

 アルストがグランド・エアを放った時よりも一度で減少する数は少ないものの、絶え間なく減り続けるので気づけば残り50を切っていた。


「俺も、負けられないな!」


 ここまで減ると包囲網にも穴が出てくる。

 アルストもフレイムと合わせて肉弾戦を駆使して一匹ずつ確実に仕留めていく。

 ヒールサークルのおかげでHPも八割まで回復している。

 HPを気にすることなく戦えるというのは、これほど積極的になれるのかと驚いてもいた。


 間もなくして──カウントは残り1となった。

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