第11話:レアアイテムとは
アリーナは口を開いたまま固まってしまった。
どうやら、これも人前に出すのは控えた方がいい一品なのかもしれないと思い、アルストはどうしたものかと考え始めた。
「俺、将来的に
アルストの質問にしばらく固まったままのアリーナだったが、思考がようやく現実に追いついたのか慌てて表情を繕っていた。
「……あ、あぁ、えっと、そうだね。これは魔術師レベル1が装備していていい物じゃない。下手をしたら、奪おうとする輩に
「あー、それは嫌ですね」
PKはMMORPGでもあまりよく思われていないのだが、楽しみ方は人それぞれであり、PKを楽しみにMMORPGをプレイしている人もいる。
そういったプレイヤーに狙われてしまえば、ログインした直後から狙われ続けて
「PKを止めてほしかったらその杖を寄こせ、って言われるのよ」
「絶対に嫌です!」
「だったらしばらくはアイテムボックスの肥やしにしておくことをオススメするわ。本当にもったいないことだけどね」
「魔術師のレベルが上がってからってことですか?」
「初期職じゃダメね。最低でも発展職のカンストか、複合職じゃないと見合わないわ」
先の長い話にアルストからは自然と溜息が漏れていた。
「……ん? 待ってくださいアリーナさん。それって、アリーナさんに【ゴルイドの剛骨】を使って剣を作ってもらっても、俺は装備できないんじゃないですか?」
【ゴルイドの剛骨】もレアアイテムである。それを使った剣であれば、やはりレア武器であり
「……あー、そう言われればそうね」
「アリーナさん!」
「あはは、ごめんごめん。だけど、これはそのままじゃ使えないし、どちらにしても何かに作り替えなきゃ意味がないからさ。大丈夫、ちゃんと考えとくから」
「……そこはお願いしますけど」
他に頼れる人がいないアルストは、【ゴルイドの剛骨】をアリーナに預けることにした。
「【折れた魔剣(ディアブル)】も預けますか?」
「いえ、そっちは私とは分野が違うわ……悔しいけどね」
鍛冶師のアリーナと分野が違うと言われ、アルストは首を傾げてしまう。
「折れた系や砕けた系の素材は再生屋にいくつかの素材を持ち込んで、名前の通り武器を再生させるのよ。アイテムの詳細を見てごらん」
「詳細ですか? あぁ、これか……って、あれ? 必要素材のところが全部
詳細画面にはアイテムの簡単な説明と、再生に必要な素材一覧が書かれているのだが、その素材が全て
「でしょうね。これは所有者が獲得したことのあるアイテムだった場合に表示されるんだけど、まだ獲得したことのないアイテムだった場合は今みたいに
「……これもだいぶ先が長いってことですか」
「最悪、見つけられないかもしれないわね」
「そ、そんなにレアな素材が必要なんですか?」
見つけられなければゲーム内に存在している意味がないと思う。単純に初心者のアルストに対しての言葉だったのか気になり問い掛けてみた。
「そういうこと。私が知る限りでは、再生屋で再生された武器は二桁いってないはずだよ」
「それって、攻略組でもってことですか?」
「仰る通り。だから言ったじゃない、最悪見つけられないかもってね」
一角獣の銀角よりも、【折れた魔剣(ディアブル)】の方がアイテムボックスの肥やしになりそうだとアルストは思ってしまった。
「まあ、折れた系は気長に素材が集まるのを待つのが常識よ」
「どの素材かも分かりませんけどね」
「確かにそうだ」
笑いながらアリーナは【ゴルイドの剛骨】を撫でている。
「……アリーナさんはレアボスモンスターとの出現条件って分かりますか?」
ふと、アルストはそんなことを聞いてみた。
「知らないわね。知っていたら私だって狙って動くし、攻略組だって……って、まさかアルスト君、出現条件を――」
「違いますよ! 聞いてみただけです! ……ただ、俺がボスフロアに入る前にステイタスを振り分けたんです」
「まあ、レベルアップしてたら当然よね」
「その時に、運を上げてみたんですよ」
「…………はあ? なんで運なんか上げたのよ?」
アリーナの反応は当然だろう。アルストですら何故上げたのかと聞かれると答えに困ってしまうのだから。
「攻略サイトでは信憑性のあるないは別にして、運が絡んだ色んな事が書かれていたのでせっかくだからと上げてみたんですよ」
「いくつ使ったのよ」
「10です」
「10! それってだいぶもったいないことしてるわよ?」
「でも、そのおかげでレアボスモンスターに出会えた可能性ってないですかね?」
「ないわね」
まさかの即答にアルストは何も言い返せなかった。
「運を上げてレアボスモンスターに出会えるなら簡単すぎるもの。それって絶対に攻略組の誰かが試してるわよ。本体とソフトさえあれば一人で複数のキャラを作ることもできるんだから」
言われてみればそうだと思いアルストはがっかりしてしまった。
それと同時に、ホッともしていた。
「……15のステイタス、割り振らなくてよかった」
そんな呟きが聞こえたのか、アリーナは右手で顔を覆っていた。
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