第12話:忠告
アリーナからは今ここでステイタスを割り振れと言われてしまい、アルストは仕方なく割り振ることにした。その結果──
──────
アルスト:レベル9
腕力:30(+11)
耐久力:25(+11)
魔力:18(0)
俊敏:24(+9)
器用:18(0)
魅了:18(0)
知恵:18(0)
体力:23(+6)
運:20(0)
DP:0
──────
本来ならステイタスをパーティ以外に見せることはほとんどないのだが、アリーナとフレンド登録しているアルストは特に気にすることなく振り分けたことを伝えるために開示した。
「ふむふむ、まさに
「そうですね」
「ただ、
「そうですか?」
首を傾げるアルストにアリーナが説明を始めた。
「このステイタスはアルスト君の基本ステイタスであり、転職した時も変わりません。多少は職業補正があるとしても、職業レベルは1からだからそれほど期待もできないわ。今の状態で
「魔導師になってからレベル上げしたらいいんじゃないですか?」
「その頃にはアルスト君のレベルも30になっちゃってるのよ? そこから魔力を上げるとなれば、相当難儀するわよ?」
そこまで言われてようやく納得した。
今はまだレベルも低く簡単にレベルが上がるものの、レベルが上がれば次のレベルまでに必要な経験値が増えるのは当然のことだ。
ソロでプレイする以上、魔導師になった時に弱いままではより難儀することになるだろう。
「……分かりました、気をつけます」
「うむ、素直でよろしい。もしパーティプレイが必要になったら声を掛けてよ。時間があれば付き合うからさ」
「えっ! でも、いいんですか?」
「こんな素晴らしい素材を預けてもらえるんだから当然よ」
言いながらアリーナは再び【ゴルイドの剛骨】を撫でる。
「確か、アイテムのレア度って1から10までありましたけど、これはどれくらいなんですかね?」
「……それも詳細に書いてあるわよ。まあいいけど、これのレア度は7ね」
「えっ! メチャクチャ高いじゃないですか!」
「だから凄いのよ!」
レアボスモンスターを倒した恩恵がこれなのかと、アルストは唖然としてしまう。
ならばと
「……レア度、8」
「凄いでしょ? だから本当に、ほんとーに、気をつけるのよ?」
「……はい」
アリーナから様々な忠告を受けた後、アルストは一度ログアウトすると断りを入れて別れた。
また何かあれば連絡してね、と言われた時は申し訳ないと思いながらも、おそらくまた連絡することになるだろうと考えてありがたくお礼を口にした。
天上のラストルームでは現実世界の時間と同じようにゲーム内の風景が切り替わっていく。今は太陽が沈み暗くなっているので夜なのだと人目で分かる。
メニュー画面にもデジタル時計が付いているのだが、そこを見なくても感覚的に時間が分かるのはありがたい。
そんなことを考えながら、アルストはアリーナの武具店の前でログアウトをして現実世界に戻っていった。
※※※※
ベッドから立ち上がると台所へと向かい冷えた水を一気に喉へと流し込む。
頭の興奮に体も水分を欲していたのか、冷えた水が喉を通る感覚に驚いてしまった。
「……楽しかったな」
そう呟くのがやっとだった。
再び水を飲みコップを流しに置いたその手に視線を向ける。
ゴブリンを斬ったその感触はゲーム内での感触である。脳が本当に肉と骨を斬り裂いたと錯覚させているだけなのだが──
「……でも、リアル過ぎるだろ」
料理に使う肉を切ったことはある。
だが、それは抵抗することのない捌かれた後の肉であり、当然ながら特に嫌悪感を覚えたこともない。
ただ、矢吹は確実に現実世界で肉を切るよりも、ゲーム内でゴブリンを斬る方が嫌だと感じてしまったのだ。
それほどリアルであり、多くのプレイヤーがのめり込む要素の一つなのだと実感してしまった。
「少し休んだら、またやろうかな」
そう呟いた矢吹はお湯を沸かしながら戸棚の中からお気に入りのカップ麺を取り出す。
しばらくしてお湯が沸くと、カップ麺に注いで暫し待つ。
この待っている時間ももったいないと思ってしまう自分に再び驚きを感じながら、普段よりも早く晩ご飯を終わらせるとベッドへと戻りHSを装着。
「……俺も、ヤバいかも」
矢吹は知らず知らずのうちに天上のラストルームにどっぷりとハマっていた。
そう感じながらも、手に入れた固有能力を思い出して苦笑する。
「強くは、なれないかもな」
ランキングとかを気にしなくても十分に楽しめる。そう自分に言い聞かせながら、矢吹は再び天上のラストルームにログインした。
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