第131話 授業開始……?
ということでついに授業開始となった。王国の方も復旧はほとんど終わり、かなり活気付いてきているようで生徒たちもほとんど登校してきている。
「先生、おはよう!」
「先生! 久しぶりですね!」
「エル先生! 今日もかっこいいですね!」
と、朝の挨拶をするようにフィーに頼まれたので俺は校門で生徒たちに挨拶をしている最中のこと。なぜか女子生徒たちに囲まれてしまう。
俺は適当に愛想笑いを浮かべて、それに対処する。
「ははは……まぁ、おはようということで……」
そうしていると真っ青な髪を揺らしながら一人の女子生徒がやってきた。ただし、その体には真っ黒なオーラのようなものを宿していた。それは錬金術として何かしているわけではなく、あくまで比喩的なものではあるが……。
俺にはアリスの周りにそんな禍々しいものが出ているような気がしたのだ。
「せーんせい。おはようございます」
ニコリと笑みを浮かべる。どうしてか、いつの間にか周りの女子生徒たちはいなくなっていた。それはまさに、生存本能がなせる技とでもいうべきだろうか。
その一方で俺は完全に逃げ遅れてしまったので、ただ呆然と威圧感を放つアリスの前で震えるしかなかった。
「あ、えっと……おはよう」
「先ほどは周りにたくさんの女の子がいましたね」
「あぁ……そうだな」
「ふーん。へぇ……」
半眼でじっと見上げてくるが、俺はなんと返答するのが正解なのか全く分からなかった。
「えっと。そのアリスは体調はいいのか?」
「はい。何度もご心配ありがとうございます。おかげさまでとっても良くなりましたよ?」
おかげさまで、を妙に強調していたが一体何だというんだ……。そうして一人で慄いていると、「ぷ……」とアリスが笑いをこぼす。
「あははは! 先生ってば、ビビりすぎですよ!」
「おお……そ、そうか?」
「はい。久しぶりで、調子でもおかしいんですか? いつもならサラッと流しそうですけど」
「まぁそうだな。久しぶりの学院で俺も調子がまだ戻っていないのかもな」
「ふふ。先生の人間らしい一面を見れて得をした気分です。では、私はこれで」
「あぁ」
そう言ってアリスは去っていった。いや、人間らしいってあいつは今まで俺のことを何だと思っていたんだか。
「エル。もう戻ってもいいわよって……どうかしたの?」
「ん? いや、何でもないさ」
すでに生徒たちも全員校舎に入って、俺はただ一人呆然とその場に立ち尽くしていた。特に何か意味があるわけではない。ただこの光景がとても懐かしい気がして、佇んでいたのだ。
そうして俺たちもまた、校舎へと向かっていく。
ついに今日から再び授業が始めることになった。しかしそれは──再び、新しい波乱の日々の幕開けでもあった。
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