第132話 束の間の昼休み
「ふぅ……」
無事に午前中の授業を終えた。割と期間が空いていたということもあって、少しだけ疲れてしまった。しかし、あれだけのことがあったにもかかわらず生徒たちはしっかりと学院にきて勉学に取り組んでいる。
その事実はなんだかとても嬉しかった。
「エルー? 今大丈夫ー?」
軽くノックの音が鳴る。そちらの方に顔を向けると、フィーが立っていた。
「どうした? 何か問題でもあったのか?」
「……私が来る=問題があるって認識やめてよね」
じーっと俺を見上げるような形で抗議の視線をこちらに向けてくる。なんだか学院でこのやりとりをするのも本当に久しぶりな気がした。
「で、本題はなんだ?」
「エルが久しぶりでちゃんと授業できたかなーと思って」
「なんだ。そんなことか」
「そんなことじゃないわよ。授業も久しぶりだったでしょ?」
「……なるほど。心配してくれていたのか」
「べ、別に……そういうわけじゃ……っ!」
フィーはその金色の髪を忙しなく触りながら、そう言ってくる。おそらくは本当に心配してくれて来たのだろう。フィーには本当にいつもお世話になっている。頭が上がらないな。
「じーっ……」
と、二人でそんなやりとりをしていると、今度は扉の隙間からある人間の視線がこちらに降り注いでいた。半眼でなんだか眉間にシワを寄せている。
その青い髪を見ればわかる。それは、アリスだった。
「アリス。そんなところで何をしているんだ?」
「……せーんせいっ! 一緒にご飯食べましょうっ!」
タタタと走って近寄ってくると、アリスは俺の右腕に抱きついて来た。そういえば、まだ昼食は取っていなかったな。ちょうどいいから、一緒に行くか。
「そうだな。また屋上に行くか?」
「はいっ! 今日は私が用意して来たんですよ?」
「それはありがたい」
そうして二人で室内から出て行こうとする。すると、グイッと右肩を思い切り掴まれるのだった。
「ちょっと待ちなさい……っ!」
「フィー。わざわざすまなかったな。とりあえずは大丈夫だから、もう気にしてくてもいいぞ」
「私も一緒にご飯食べてあげるわっ!」
「……そうか?」
「うん!」
その言葉に対しては、アリスが反発の声を上げる。
「フィーは忙しいでしょう? 屋上でゆっくりと食事をする時間はないんじゃない?」
「いいえ。そんなことはありませんよ、アリス王女。私は優秀なのでもう今日の仕事はほとんど終わっているので」
「ふーん。ま、ついてきたのなら来てもいいけど? ま、先生はどう思ってるか知りませんけど」
「この……王女っ……!」
いつものようになぜかすぐ口論になってしまう二人。全く、本当に変わらないものだな……と思うが、俺はこの空間がどこか心地いいと感じていた。
そうしてとりあえず、三人で食事を取ることになるのだった。
◇
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