第127話 騒動の終わり
「う……うぅん……」
朝。俺は自分の体に何か重みがあると感じて目を覚ます。
それは決していい目覚めなどではない。そして目を開けるとそこには……なんとアリスがいたのだ。今の時刻は朝とはいうが、すでに十時前だった。ということは、もしかして……。
「先生ー! 来ちゃいました!」
ニコッと微笑みながらこちらにズイっと顔を寄せてくる。俺はとりあえず自分の上に乗っているアリスを退けると、ベッドから出ることにした。
「はぁ……退院したのか?」
「はい! 実は前々から決まってたんですが、驚かせたくて!」
「……まぁ驚きはしたが」
いつになくテンションが高いので、怒るに怒れない。というよりも、アリスはアリスで色々とあったというのにこうして明るく振る舞っているのだからそれを喜ぶべきなのだろう。
そして俺はアリスの頭を優しく撫でる。
「……うえっ!? ど、どうかしたんですか?」
「いや。したいから、してみただけだ。悪かったか?」
「い、いえ……そんなことは……」
と、いつもは覇気に溢れているのに今は顔を下に向けて、少しだけ赤くなっていた。マセているような言動が多いが、実際には年相応の女の子である……と俺は改めて認識するのだった。
「じーっ……」
俺の部屋でそんなやりとりをしていると、部屋のドアからじっとフィーのやつがこちらの様子を窺っていた。
「フィー。そんなところでどうした」
「別に……ただ、当たり前のようにアリス王女が来てるんだなーと思って」
「ふふん! 私は先生に信頼されてますからねっ!」
自信満々に胸を張ってそういうアリスだが、俺はこの家の鍵を自分から渡した記憶はない。確か家族の誰かにもらったという話でそのまま俺が受け入れた……という話だったはずだが、まるで俺からもらったかのような振る舞いだ。
流石にそれを訂正しようと思い、言葉を出そうとするが……。
どうやら二人はいつも通り、口論を初めてしまうのだった。
「ふふん! フィーには負けないからっ!」
「む……今まで大人しいと思っていたら、ここで牙を向いてくるわけですか」
「先生は絶対に歳が近い方が好きなんだから。フィーみたいな年上にはダメだね〜。もうおばさんだよ〜」
「おばっ!? ちょっと! いくら王女であろうとも言っていいことと悪いことがありますよっ!」
「ふん! 別にいいもんね〜!」
そうして二人は俺に向かって急に、年上がいいのか年下がいいのかと尋ねてくる。俺は「はぁ……」とため息をつきながら二人の口論をどこか懐かしく思いながら、苦笑いを浮かべるのだった。
◇
第四章 王国内乱編-When she cry- 終
第五章 農作物研究編 続
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