第107話 Alice in wonderland 22:大人な対応
「はぁ……」
ため息をつく。
先生のいない日には慣れた。でもどうしても……寂しいと思ってしまうのは、仕方がないと思う。
「いかがいたしました?」
休日。いつものようにサリアが紅茶を入れてくれる。彼女の淹れる紅茶は本当に美味しい。それに長年の付き合いということで、私の好みを本当によく分かっている。
「なんだかなぁ……と思って。先生のいないは、ちょっと寂しいって」
「慣れた、とこの前は言っていませんでしたか?」
「それとこれとは話が別なのっ!」
抗議する。
そうだ。別なのだ。理屈では理解していても、やはり感情はどうしてもそれを拒む。乙女心とは、複雑なのだ。
「あぁ……そういえば」
「どうかしたの?」
「オスカー様がアリス様にも謝罪をしておきたいとか」
「えぇ……」
「露骨に嫌そうな顔をしますね」
「だって、ねぇ……」
そう言われるが、当たり前だろう。
先生にあれだけのことをして、いい印象など全くない。そもそも他の王族とはあまり仲良くない私だが、その中でもオスカーお兄様は一番相性が良くないと言ってもいい。
何よりも、あの上から目線が嫌というか……。
それに先生に対して行ったことで、私の評価は最低だ。
そんな人に今更会うなど、正直面倒くさい。
「しかし、向かうから是非とも……と。他の王族の方々にも、現在は謝罪をして回っているとか。他のメイドからの情報ですが、なんでも真摯な対応を見せているとか」
「ここで真摯じゃない対応を見せたら、それこそ凄いけどね……」
「まぁ本当に嫌でしたら、私から伝えておきますが……」
「……」
考える。
ここで拒否してしまってもいいが、そんなに意固地になっても仕方がないとうか……。ここは私も大人の対応をすべきだろうか。というよりも別に何かされるわけではないのだ。
別に謝罪を受け取っても、なんの問題もないだろう。
「……仕方ないけど。会ってもいいわ」
「あら。どういう風の吹き回しですか?」
きょとんとした表情でサリアはそう言った。
私だって成長しているのだ。いつまでも感情だけで生きるわけにもいかないのだから。
別に先生に会えないことは……きっと関係していないと思う。
うん……。
「まぁ謝罪を受けるだけなら、いいかなって。私も大人になっているのよ?」
ふふん……と胸を張ってみる。そんな私の様子を、サリアは白い目で見つめる。
「本当の大人はそんなことは言いませんが……分かりました。お伝えしておきます」
「ちょっと待って。今聞き捨てならない言葉が……」
「いえ。私は何も言っておりません」
このメイド……意外と辛辣な言葉を吐いてくるのは慣れているが、聞き取れるようで微妙な声でいつもそう言うのだ。
本当に
こうして私は、オスカーお兄様と改めて会うことになるのだった。
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