第108話 Alice in wonderland 23:転機
私は、オスカーお兄様と会うことになった。
自室に招くのは嫌なので、王城内の応接室に向かう。
私の後ろにはサリアが控えている。二人きりで会うのは流石に怖いと言うか、いやと言うか、ともかく彼女にも付き合ってもらった。
そして室内に入ると……オスカーお兄様がいた。
「アリス。久しぶりだね」
「お久しぶりです……オスカーお兄様……」
やつれていた。頬は少しだけこけていて。無精髭も目立つ。容姿に気を遣っている彼にしては、珍しいと思った。
思った以上に、今回の件が心に響いたのだろうか。
「失礼します」
着席すると、テーブルを挟んで彼と向かい合う。
「今回の件は、本当に申し訳なかった……」
素直に頭を下げる姿を見て、私はそれを受け入れる。別にここでそれを拒否しても始まらない。感情としては、思うところはあるのだが……毅然とした対応を見せる。
「いえ。私は直接被害を被ってはいないので。それよりも、迷惑をかけた方にしっかりと謝罪するのがよろしいかと」
「それはもちろん、すでに終わっている。と言っても、それぐらいでこの罪が許されるとは思ってはいないが……」
意外にも、殊勝なことを言うものだと思った。
この人は昔からどこか熱狂的と言うか、盲信しているところがあったので今回の反省具合はちょっと感心してしまう。
「では謝罪は受け入れたので、私はこれで」
「あぁ。わざわざ時間を作ってくれて、感謝する」
その場で頭を下げるオスカーお兄様の姿をじっと見つめ、私は視線を切るとそのまま自室へと戻っていく。
「何だか拍子抜けだったわね」
「そうですか?」
「えぇ」
サリアと戻っていく最中、そんなことを話す。
「しかし確かに、少し変わったような印象を受けますね」
「でしょ? なんか覇気がないと言うか、何と言うか……でも謝罪はちゃんとしていたから別にいいけどね」
「そうでしたが……」
「どうかしたの?」
彼女は少しだけ考えるように素振りを見せる。
そして私は立ち止まり、そんなサリアの様子を伺う。
「……逆に変わり過ぎていて、どこかおかしいと言うか……」
「具体的には?」
「そう言われると、無いのですか」
「ちょっと前と変わったから、そう思っただけよ」
「そう、でしょうか」
「えぇ」
「まぁ……そうでしょうね。私の気のせいですね」
「サリアはいつも思わせぶりなことを言うんだから。もう、全く」
「ふふ。申し訳ありません」
この時は、あの人には全く興味がないから私は適当にあしらっていた。
それよりも今は、先生がいつ帰ってくるかの方が重要なのだ。
しかし確実に、私の知らない間に大きな意志が動き始めているのは間違いなかった。
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