第101話 Alice in wonderland 15:迫る王女
サリアと入念な打ち合わせをした私は、早速先生に色々とアプローチをとることにしてみた。
「先生、今日もお昼どうですか?」
「ん? まぁ良いが」
ということで先生が出勤している日は、ほぼ毎回昼食に誘うことにしている。でもそれだけだといつも通りだ。問題なのは、ここから先だ。
そして私はサリアとの打ち合わせを思い出す。
「良いですかアリス様」
「う……うんっ!」
「やはり、アプローチ方法としてはアリス様が女であることを意識させるしかありません」
「女を意識させる? ぐ、具体的に?」
「そうですね。まずは密着です」
「密着!」
「そして、こうさりげなく胸を押し付けるのです」
「胸を押し付ける!?」
晴天の霹靂。
私は確かに今までそれとなく先生に迫るような行動をとっていたけれど、そこまで直接的な行動に出たことはなかった。思わせぶりな態度を取ることはできる。でも、いざ実際にそういうことをすると意識すると……顔が熱くなっていくのを感じる。
──は、恥ずかしい。
しかし、サリアがせっかく提案してくれているのだ。
まずは何事も実行すべきだろう。ということで、私は早速行動に起こすのだった。
「せ、先生。隣いいですか?」
「あぁ。というか、いつも隣だろう。どうした急に」
「え!? いや、別になんでも無いですよ! あ、あはは!」
まずい。
緊張のあまり、おかしなところを指摘されてしまった。
へ、平常心……平常心よ、私っ!
「あ……」
儚げな声を漏らして、私は食事をとっている先生の方へと体を預ける。まるで体調が悪くなったような演出を私はしてみる。今は顔も真っ赤になっているだろうし、おそらく大丈夫……大丈夫だろう。
「おっと。どうした、大丈夫か?」
「あ……その、ちょっと体調が」
「何? 熱か?」
「か、かもしれません……」
既に私は体をさりげなく、いや思い切り先生の方へと預けていた。それに胸をこれでもかとその腕に押し付けている。
正直言って、心臓が破裂しそうなほどに緊張していた。
ドクン、ドクン、ドクン、と心臓が高鳴っていく。それは徐々に早くなっていき、私はもうどうにでもなれと思っていた。
でも冷静に考えると、私のこれって痴女の類じゃ……?
と、一瞬だけ冷静になる前になんと先生が私のおでこに自分のおでこを重ねてきたのだっ!
「……ひゃっ!」
「じっとしていろ」
「……ひゃ、ひゃい」
近い、近い、近い!
顔が! すぐ側に!!
しかし緊張している私のことは意識していないのか、パッと話すと先生はレイに冷静に告げる。
「ふむ。少し熱いな。医務室にいくか?」
「じ……」
「ん?」
「自分で行ってきますー!!」
私はその場にバッと立ち上がると、そのまま屋上から下へと駆け出していく。
──あー、恥ずかしいっ!
ということで私はあまりの羞恥に耐えられなくなり階段を物凄いスピードで降りていく。
どうやら、今の私に色仕掛けはまだ早いと……そう悟るのでした。
とほほ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます