第100話 Alice in wonderland 14:狙うべきは……!


「はぁ……」


 ため息をつく。


 先生が迷宮探索に行くようになってから、私は彼と出会うことがかなり少なくなった。それにフィーがずっと側にいるのは私としては色々と納得がいかない。と言ってもこれは感情的な問題なので、実際のところフィーの優秀さは知っている。


 彼女は先生が現れる前には、ずっと天才と謳われていた錬金術師だった。もちろんその名声は私の耳にも届いている。


 アルスフィーラ・メディス。


 今となっては完全に先生の影に隠れる形になってしまっているが、その実力は折り紙つき。誰もが彼女の優秀さを認めるところだ。


 だから先生の迷宮探索にフィーがついて行くのは至極当然だろう。


 でもしかし、やはり私の感情的には色々と思うところがある。


 ということでその日の夜に、サリアに相談してみることにした。


「で、どう思う?」

「私に聞くのですか?」

「そう! 参考にしたくて」

「私はそのお二人が一緒にいるのはあまり多くは見ていませんが……エルウィード・ウィリス様はともかく、アルスフィーラ・メディス様の視線に色があるのはわかりました」

「そ、そうよね!? でも、教師が元生徒に……ってどうなの?」

「問題はないでしょう。今となってしまえば、同僚なのですから。教師と一生徒なら問題でしょうが、今はそんな枷もありません」

「ということは……?」

「アリス様が想定している可能性も、あるということでしょう」

「あ……」


 スプーンが手からこぼれ落ちて、それが机に落ちる。サリアは、「別のものにお変えします」と言って冷静なままだが一方の私は冷静でいられるわけはなかった。


「ど、どうしよう!? やっぱり、フィーって何かしてるよね!?」

「それは分かりませんが……アプローチの一つはしているかもしれません」

「サリア、私はどうしたらいいと思う」

「……これはあまりオススメしませんが」

「とりあえずなんでも言って!」

「既成事実です」

「き、既成事実……?」


 意味自体は知っている。


 だがそれをいざ意識すると、顔が熱を持つのが容易にわかってしまった。先生には色々と匂わせた感じで接しているが、いざそうなると考えるとまだ私は恥ずかしさの方が先行してしまう。


「既成事実さえれば、どうとでもなります」

「ほ、本当に……!?」

「えぇ。男なんて、そんなものです。女の涙には敵いません」

「よ、よし……じゃあ!」

「でもアリス様の場合は、少し事情が特殊ですので」

「どういうこと?」

「王女の方から熱烈にそのようなアプローチをかけるのは、外聞が悪いのです」

「つまり?」

「外堀から埋めるしかありません」

「な、なるほど……っ!」


 その後、サリアに色々と教えてもらった私は早速行動に移すことにするのだった。

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