第99話 Alice in wonderland 13:彼との日々


 あれから私は無事に学院で生徒としての生活を送っていた。


「ねぇ先生」

「なんだ?」

「今日はお昼、一緒にどうですか?」

「別に構わないが……」

「じゃ、いつもの屋上で!」


 ということで私はエルと、今は先生と呼んでいるが先生と一緒に過ごすようになった。まぁ……私が意図的にそうしているんだけど。


 実は先生は、かなり人気がある。本人は全くその自覚はないが、それは私が色々と裏で手を回しているので彼には気がつかれていないという認識が正しい。


 特にその容姿から女子生徒からの人気が高く、声をかけようと画策している女子生徒は多い。だが私はそのことごとくを全て妨害し、阻止している。王族という立場を今回ばかりは利用させてもらっている。初めて王族であることを感謝したほどだ。


「そういえば……」

「どうしたんですか、先生」


 いつものように屋上で昼食を取る。


 ちなみに屋上には人が来ないようにメイドのサリアに見張ってもらっている。


「アリス、変わったよな」

「そうですか?」

「あぁ。会った当初はもっと、王族って感じがしていたと思うが……」

「今はそうでもないと?」

「あぁ。普通に友達って感じだな」

「ふふ。それは良かったです」

「良かった?」

「えぇ。その方が私は嬉しいですから」

「そういうものか」

「そういうものです」


 もともと私は根っからの王族というわけではない。むしろ庶民としての意識の方が強いので、いざ王族になると言われた時は面食らったものだ。そこから礼儀作法や立ち振る舞いなど学んだりもしたが、やっぱり彼と一緒にいる私の方が楽だし、自分らしいと思う。


「で、どうだ?」

「どうだ? どういうことでしょうか」

「学院での生活だ。授業にはついていけているのか?」

「まぁそうですね。受験勉強もかなり頑張ったので、大丈夫です。ただ卒業論文を書くのはかなり大変そうですが」

「まぁ……そうかもな」

「先生は二年でしたっけ?」

「いや厳密にいえば……半年ぐらいだな」

「え!? 半年!?」

「あぁ。フィーには黙っていろと言われているが、アリスなら良いだろう。実際は入学してからの半年で仕上げたな」

「えぇ……まじで天才じゃないですか……でも、どうして卒業が二年目なんでか? それなら一年目に卒業できたじゃないですか」

「論文の審査の方が時間がかかってな。まぁ別に卒業する時間にこだわっていたわけじゃないから、そのまままたもう一年いた感じだな」

「はえー。そうなんですねぇ……で、今はここで教師になったと」

「そうなるな」


 と、ここ最近は毎日先生と雑談を繰り広げている。


 些細な日常。


 でもこれこそが、きっと私が求めていたものだった。


 私はこんな些細な日常だけで良かった。


 けれど、状況は先生が迷宮に行き始めたことで変わったしまうのだった。

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