あなたがもっと美しくなるために
「制服ファッションショー、ギャラリーも呼んであるから……」
天音達三人の発案で、俺こと沙織ちゃんの女装を完璧な物にするべく、
首都圏の主要な女子通学服、そう制服だ、弥生ちゃん、さおりちゃんの
協力もあり(自分たちが着てみたいと言うのが本音かも……)
猪野家のリビングに場所を移して開催される運びとなった。
もちろん全ての制服は用意出来ないが、俺の知らない分野だが、
男子制服のバリエーションに比べて、女子の制服は組み合わせが多い、
だけど現在、学校指定で制服を作っているメーカーは限られている、
大手で三社にしぼられ、その多くが岡山県にあるそうだ、
何故、一つの県に集中するか疑問に思ったが、お馴染みのジーンズを始め、
デニム関連も岡山県がほぼ国内のシェアを網羅している、
制服も大別すれば、ジーンズと同じく堅牢を要求される作業着だ、
我が中総高校の女子指定服もメーカーは岡山県製だ。
従来のセーラー服を駆逐したブレザータイプ、紳士諸君の中には
強烈に敵視する向きもあるが、安心して欲しい、
セーラーブレザーというハイブリット車みたいな良いとこどりの
新勢力が数を伸ばしている、これも諸説あるが起源はアニメやマンガの
キャラクターが着ている物が人気を博し、現実の学校に採用されたそうだ、
嘘みたいな話だが、制服が進路を選ぶ重要なファクターになり、
実際にそれを着る女の子達からの要望が制服を変えさせた事例もある、
ある高校で制服をモデルチェンジしただけで志願率が倍増したなんて
珍しい話じゃない。
ここにも昭和から続く、日本のカワイイカルチャーがあるんだな、
草葉の陰で内藤純一先生も喜んでいらっしゃるだろう……
って、俺は誰に語っているんだ。
「ギャラリー兼審査員の到着だよ!」
天音が来客を出迎えに向かった、
ギャラリー兼審査員って、一体誰?
「本日はお招きに預かり、光栄の至りと存じます……」
リビングに現れた人物は……
「どうしてお祖父ちゃんが!?」
さよりちゃんが驚きの声を上げるのも無理はない、
まず姿を現したのは、本多グループ会長、本多真一郎だ、
制服自由化にあれほど反対していた会長が審査員なんて、
本当に大丈夫なのか?
「僕が呼んだんだよ、制服の権威と言えば、真一郎君が適任だからね!」
本多会長が女子制服の権威だって? 天音の言っている意味が分からなかった、
「うむ、確かに女学生の制服を始め、服飾パターンの礎を築いたは
儂ともう一人、内藤純一と言っても過言では無い……」
希代のマルチアーティスト、内藤純一と本多会長が女子制服の始祖!
一体、どう言う事だ……
「その点については俺も調べて驚いたんだよ……」
続いて現れたのは具無理のマスター!?
手には一冊の本を持っていた。
「まあ、これを見てよ……」
具無理のマスターが差し出した本のタイトルは、
「内藤純一 スタイルブック」
あの肖像画を彷彿させる華麗な美少女が、
レトロな女子制服を着て微笑んでいる表紙だった……
「何、これ、すっごくカワイイ!!」
天音達が目を輝かせながら具無理のマスターを囲む、
「この後書きを見てごらん、
親愛なるSへ 君の協力がなければこの本は上梓出来なかった……」
「もしかしてSって言うのは……」
「そうだよ、本多真一郎、会長で間違いない、」
具無理のマスターの解説にも、本多会長は柔和な笑みを崩さなかった。
「帝都大学の下宿先で、儂と内藤は貧しい生活を送っていたが、
お互いの将来を語り合い、金は無かったが無限の可能性だけは
持っていたものだ……
儂がアイディアを出し、内藤がそれをデザイン画として描き溜めた、
戦後の貧しい時代だったが、日本女性に美しい装いを忘れて欲しくなかった、
お互い進む道は違ったが、日本古来の女性の美しさを絶やさない、
その理念は儂も内藤も同じだった……」
昭和という激動の時代をくぐり抜けてきた本多会長の言葉には、
重みがあった、美しい物には美しい心が宿る、
だからこそ中総高校の制服自由化にもあんなに反対したんだ。
「君達が着ている中総高校の女子制服も、会長の監修なんだよ」
「えっ、マスター、本当ですか、お祖父ちゃんがそんな凄いなんて……」
「年寄りの手慰みじゃ、たいした事はない……」
さよりちゃんの言葉に相好を崩す本多会長
こういう時は普通のお祖父ちゃんの顔に戻るんだな……
「と言うことで、天音ちゃんから審査員の依頼があってね、
ちょうど、本多会長と具無理で打ち合わせをしていたんだ……」
具無理のマスターと会長が何の相談していたんだろう?
「と言う事で、僭越ながら沙織君の制服選びに協力しよう、
が、失礼だがここでは手狭ではないか?」
本多会長の言うとおり、リビングに移動してもあの制服の数だ、
親父が帰ってきたら、さすがに驚かれてしまうだろう……
「表に皆川とスタッフを待たせてある、さよりが自主的に
これだけの制服を揃えたんだ、もっと相応しいステージを用意しよう!」
「お祖父ちゃん…… ありがとう!」
さよりちゃんと本多会長の関係も雪解けしているようだ、
俺は沙織ちゃんモードを忘れて宣人として喜んでしまいそうになり、
慌てて、表情を引き締め直した……
そして制服ファッションショーの舞台に向けて、Bカップの胸を膨らませたんだ!
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