女装男子、最大の危機か?
「宣人君、気を付けるとよい、女難の相が出ておるぞ」
花井和尚の言葉が、頭の中でどんどん大きくなって来るのが感じられた……
「一体、女難の相って何なんだ?」
俺は部屋に戻りながら、思わず独り言ちてしまった、
気を付けろと言われても、漠然としすぎて検討も付かない……
女装男子モードでも女難は降りかかるのだろうか?
離れの部屋に戻った所で、別れ際に香菜ちゃんが言っていた事を思い出した。
「よーし、沙織ちゃん、部屋まで競争だよ!」
確か香菜ちゃんはそう言って走り去ってしまったんだ……
でも部屋の前には香菜ちゃんの姿は無い、
もしかして自分の部屋にもどったんだろうか?
まあ、俺にとっては好都合だ、一緒にお風呂なんか入ったら一巻の終わりだ。
安堵の溜息を付きながら部屋に入る、間取りは花井姉妹の部屋より広く、
丁度品のしつらえから推測すると、どうやら客人用の部屋みたいだ、
ちょっとした高級な旅館の和室部屋みたいだ、
「ふうっ……」
俺は一息つきながら座卓の前にあぐらをかいた。
テーブルにはお茶が入れられるようになっており、お菓子も置かれていた、
誰が用意してくれたんだろう? 朝、出掛ける時はなかった筈だ。
一日、雑巾掛けレースの特訓で、体中が筋肉痛でしんどい、
確かに、一風呂浴びたいところだ……
俺は部屋を見回した、確か内風呂があったっけ、
昨晩は時間が無く、ユニットバスでシャワーを浴びて済ませてしまったんだ。
こんな所も高級旅館なみに、ベランダスペースに内風呂の浴槽があるんだ、
香菜ちゃんに誘われる前に入浴をすませてしまえば、リスクも軽減できるぞ、
善は急げだ!、旅行鞄から着替えを用意する、弥生ちゃんが選んでくれた
かわいい下着セットから、ピンク系の上下をチョイスする、
女性物のブラとショーツにも随分慣れてきたが、最初は片手に収まる位の
ショーツを穿くときにはかなりドキマキしたもんだ……
今は逆に男物のトランクスのほうがフィット感が無く感じられる、
慣れとは恐ろしいものだ。
ベランダに出ると、心地よい夜風が頬を撫でてくれる、
内風呂はベランダの半分のスペースに設置されており、
外部からの視線は目隠しされているので、覗かれる心配も無い、
本物の温泉なのかは判らないが、硫黄の匂いと、浴槽の檜が相まって
良い香りが鼻腔をくすぐる、埃や枯れ葉が入らないよう、
お風呂にはふたがしてあり、その隙間からもうもうと湯気が立ち上る。
片膝をつき、ふたを少し空けて湯加減を確かめる、うん!丁度良い温度だ。
汗まみれのジャージの上を脱ぎ、脇にあるランドリー入れに放り込む、
内風呂で誰にも見られていないと言う安堵感から、
ブラのままでベランダに仁王立ちする、気持ちいいな!
こんなに開放感を感じるのは久しぶりだ、
何せ、女装バレしないかと、一時も気が抜けない状況だったからな……
そのまま、目を瞑り、手を頭の上で組みながら大きく伸びをする、
「はあっ、気持ちいいな……」
ジャージを脱ごうとしてズボンに手を掛けた瞬間、
いきなり背後から目隠しをされた、何者だ、全く気配を感じなかったぞ、
柔らかい手のひらに顔を包まれると共に、ほのかなシトラスの香り、
この香りは覚えがある、今日一日過ごした女の子の香りだ、
「だ~れだ?」
女の子が耳元に問いかけてくる。
「紗菜ちゃんでしょ?」
答えは分かっているが、最後の抵抗でわざと間違える。
「ぶぶ~!ハズレだよ」
香菜ちゃんが目隠しをした手を外さないまま、
さらに耳元に唇を接近させながら囁きかけてくる。
「ね、沙織ちゃん、もっと気持ちよくしだげよっか?」
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