デリカシーに雨が降る

「沙織ちゃん、くまちゃんの代わりになってね……」

 大会優勝に向けての強化合宿、その初日、厳正なくじ引き?の結果、

 花井姉妹の天然担当、香菜ちゃんと同じ部屋になった。

 現在は沙織ちゃんモードの俺こと、猪野宣人。

 自分でもすっかり女装男子が板につき、どっちが本当の自分か

 分からなくなる……

 天音、弥生ちゃん、さよりちゃんの協力もあり、

 ここまでは男バレは回避出来ているが、今回はかなりヤバい状況だ……

 歴史研究会一、いや中総高校一番と言っても過言では無いロリ系美少女、

 花井香菜ちゃんとあろうことか、同じベット、同じ布団、同じくまちゃんで

 寝ると言うことが、健全な男子ならおわかりだろう。

 女装男子の結界が解けてしまいそうだ……

 俺のデリカシーに雨が降る!


「あ、あのね、香菜ちゃん、ちょ、ちょっとストップっ!」

 白いくまちゃんに押しつぶされながら、必死にストップを掛ける。


「沙織ちゃん、ダメなのっ! 香菜の抱き枕になってもらうんだから」

 下からのアングルから香菜ちゃんを見上げる格好になる。

 トレードマークの結わえた髪の毛も乱れ、普段の幼い印象と違って見える、

 見慣れた白いおでこも前髪で隠れて、ベットでもつれあったからか、

 頬も上気して桜色に彩られている、やっぱり可愛い……

 俺は普段、年上好みを自覚しているが、禁断のロリ系に目覚めてしまいそうだ。


 観念した次の瞬間、香菜ちゃんのホールド攻撃が止まった……

 良かった! 解放してくれるのか?


 俺に馬乗りになったまま、上体を起こす香菜ちゃん、

 両手に抱えたくまちゃんをベットの脇に置き、

 ぬいぐるみの頭をそっと撫で始めた。


「ごめんね、くまちゃん、今晩はここで眠ってね……」

 と言うことは……


「沙織ちゃん、続きするよっ!」

 俺達の間を遮るくまちゃんはもう居ない……

 俺のおっぱいに顔を埋める香菜ちゃん、

 みんなの協力で作り上げたBカップのおっぱい

 そのおっぱいの間に香菜ちゃんの顔が挟まれる格好になる。


「わあっ、やっぱり沙織ちゃんのおっぱいおっきいな、

 香菜にも分けて、分けて♡」

 香菜ちゃんがおっぱいに埋めた顔をスリスリするように激しく動かし出す。

 予想外の行動に驚きのあまり、声も出ない、

 あ、ああ、俺の理性のダムに亀裂が入り始めたのが分かる。

 俺の偽おっぱいは秘密兵器のブラとパットで作り上げたBカップだか、

 香菜ちゃんのおっぱいのサイズはそれよりも小さいから、

 大きなおっぱいの女性に憧れていた事を思い出した。

 スパリゾートでも他のお姉さん達のおっぱいを触って、

 紗菜ちゃんに叱られていたっけ……


 いやいや、そんな事は今考えることじゃないぞ!

 宣人に戻るな、沙織ちゃんを維持するんだ。


「香菜ちゃん、そんなに激しく動かしたら、おっぱいが痛いよぅ……」

 デリカシーを保つんだ、可憐なミックスボイスで懇願する。

 おっぱいに埋めた香菜ちゃんの頭の動きが止まる、

 こちらからは表情は見えない。


「にゃ、ゴメンね、香菜、沙織ちゃんとお泊まりするのが嬉しくって、

 つい、興奮しちゃったんだ……」

 子猫の様な声を出し、顔を上げながら謝る香菜ちゃん、

 やっと分かってくれたか……


「お詫びに、香菜のおっぱい、触っていいよ……」

 え、今なんて言ったの?、おっぱいを触るって。


「おっぱいだけじゃないよ、香菜の全部、触っていいんだよ!

 なんちって、キャッ、言っちゃった……」

 恥ずかしがって、足元に乱れていた布団を被る香菜ちゃん、

 かまくらの様に布団の中で丸くなる……

 俺の中でデリカシーという名のダムが、完全に決壊した。


「香菜ちゃん……」

 丸まった布団に震える両手を伸ばす俺、

 片手で布団の端を持ち上げる香菜ちゃんが、

 小悪魔のような微笑で俺を誘う。


「沙織ちゃん、こっちに来てイイよ……」

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