One up love
「本多会長の秘策って何なの?」
訳が分からないと言う、俺の表情を見て何故か嬉しそうな本多会長。
「小娘、言ったじゃろう、儂に任せておけと……」
「天音が入れ替わってないと、お祖母ちゃんに心配かけちゃうよ」
「なあに、心配するな、お前は早く教室に戻れ、
トイレが長すぎると皆に怪しまれてしまうぞ!」
そうだった……
俺こと沙織ちゃんは授業中に抜け出していたんだ、
あまりにトイレが長すぎても不自然だ、
我に返り、本多会長と校長先生に一礼しつつ、退席する。
その時、急に悪戯心が芽生え、お得意のミックスボイスで囁きかける
「真一郎お祖父ちゃま、お願いします……」
一瞬、本多会長の不敵な態度が消え、狼狽が顔を覗かせ、
顔だけでなく、禿げ上がった頭まで真っ赤になる。
「こら、小娘! あんまり爺さんをからかうな、
年甲斐も無く、照れるだろう……」
秘策を教えてくれない本多会長に、お返しのつもりもあったんだ。
ここまで照れるとは予想外だ。
「しかし、小娘、お前の女装には何か特別な物を感じる、
この特技が、お前を助けてくれるかもしれんぞ……」
本多会長の言っている事が、その時は分からなかったが、
お祖母ちゃんの為に始めた女装が、大きな意味を持つとは、
今の俺にはまったく想像出来なかったんだ。
急いで教室に戻ろうと階段を駆け上がる、
階段の手すりに掴まり、遠心力を利用して鋭角にターンする。
校長室を立ち去る時、本多会長の投げかけた言葉が蘇る、
俺の女装が特別だって? そして身を助けてくれる……
確かに自分で言うのも何だが、この女装の完成度は高いと思う、
でもそれが俺の運命を変える程とはどういう事だろう……
教室に続く廊下を曲がった次の瞬間、
「きゃ!」
「!?」
鈍い衝撃が俺の身体に伝わってきた、
何かにぶつかった様だ、相手が悲鳴を上げるのが分かる、
一瞬、視界が真っ暗になり、そのまま相手ともつれながら廊下に倒れ込む。
「痛ったぁい……」
倒れた時、とっさに受け身を取ったが、固い廊下に肘を激しく打ち付けてしまう、
何とか、女の子らしい声を出せたが、気をつけないと地声になってしまいそうだ。
ぶつかった相手を見て驚いてしまった……
「お麻理お姉ちゃん!」
廊下に倒れ込んだ俺が身体の下に組み伏せているのは、
誰あろう、お麻理だった……
俺の視界を奪ったのは、お麻理のおっぱいに顔を埋めていたからだった、
前のスパリゾートで見て、分かっていたが、お麻理の本物のおっぱいは、
圧倒的なボリュームで俺を受け止めてくれた……
「さ、沙織ちゃん、大丈夫、怪我してない?」
こんな時でも、お麻理はこちらを心配してくれる、
故意では無いとしても、俺が宣人のままだったら大変な騒動になっていただろう、
女装していて良かったと心から思った瞬間だった……
そして、本当の胸とはこう言う物だと身体に教え込まれた気がして、
俺の可愛い偽おっぱいがキュンと疼いた。
柔らかなおっぱいの谷間に、そのまま顔を埋めたい所だが、
これが女装効果か、強い煩悩を振り払う事に成功した。
「お麻理お姉ちゃん、大丈夫だよ、ちょっと肘をぶつけただけ……」
先に起き上がりながら、お麻理に手を差し伸べる、
「沙織ちゃん、廊下は走っちゃ駄目だぞ……」
規律に厳しい、お麻理らしいセリフだ、
子供の頃からの条件反射で謝ってしまう。
「ごめんなさい……」
俯きながら反省を口にする、お麻理の厳しい表情を予想した俺、
「沙織ちゃんに、怪我が無くって本当に良かった……」
自分ではなく、先にスカートの汚れを丁寧に払ってくれる。
「トイレが遅いから心配で迎えに来たの……」
そうか、だからお麻理が廊下にいたのか、
「下田先生から聞いたけど、沙織ちゃんって飛び級なんだって?
優秀なんだね、あっ、ごめんなさい、駅でお姉さんぶって、
学年は同じだもんね……」
えっ! 飛び級? 一体どんな設定になってるの、
本多会長の秘策って……」
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