街へ繰り出せ!ポップギャル
「沙織ちゃんから見て、宣人さんってどう思う?」
萌衣ちゃんの質問の意図が掴めなかった…… 今の俺は猪野宣人ではなく、
いとこの沙織ちゃんだ、テーブル越しに凍り付く俺。
模範解答が浮かんでこない、もっとギャルゲーやり込んどけは良かった……
頭をフル回転させる、そうだ! あの有名な恋愛シュミレーション
「街へ繰り出せ!ポップギャル」通称ポギャルに似たシチュエーションが、
あったっけ、ポギャルは隠れキャラまで攻略出来た画期的な作品だ、
それも女の子だけでなく、男の親友(情報通)まで攻略可能だったな、
同じシチュエーションとは、女装した主人公が女だらけの女子校に
潜入してメインヒロインの出す難問をクリアするというパートだ、
あの質問の答えを思い出すんだ……
「ええっと、宣人お兄ちゃんをどう思うって?
結構、イケメンじゃない、中学の時、周りで隠れファンが多かったんだよ
あっ、でもお説教くさい事言うのがたまに傷かな?」
俺はポギャルと同じ解答をした、これでメインヒロインの
山羽トレイシーちゃんが主人公に興味を持つんだっけ。
「あのでく、いや宣人さんが、そんなに人気があったなんて……
ちょっと、信じられないかも」
萌衣ちゃんは俺の事を何と思っていたんだ、でく助の印象が強いんだろう。
「沙織ちゃん、宣人さんって女たらしじゃないよね?」
えっ! 俺の何を心配してるんだ……
「その反対だよ、女の子にいつも振り回されているんじゃないかな!」
これは偽らざる本音だった、妹の天音を筆頭に、色んな女の子に
翻弄されている、この女装もその一つだろう……
「それを聞いて安心したわ、沙織ちゃんだから話しておくね、
実は柚希を助けられるのは、宣人さんしか居ないって事を」
それは一体、どういうことだ? 俺にしか出来ない事って。
「前に柚希から聞いたことがあったの、子供の頃、性別の揺らぎが
押さえられなくなって、大変な事をしでかしそうになった時、
助けてくれた人がいたんだって……
その時の彼女の幸せそうな表情を見て、私は直感したの」
あの満月のお団子取りだ、あの一夜の事を柚希は大切に思い続けていたんだ。
「柚希は色々聞かせてくれたの、子供の頃の大事な思い出を、
そして、勇敢に戦ってくれた小さなヒーロー」
「そう、柚希はそのヒーローに今でも恋しているって……」
萌衣ちゃんが真っ直ぐにこちらを見つめる。
「その人の名前はね……」
テーブル越しの彼女から視線を逸らせなかった。
「猪野宣人! あなたなの……」
完全にバレたと思った……
頬を覆うウィッグ越しに、冷たい汗が流れる、
「萌衣ちゃん、いつから気付いていたの?」
観念して彼女に問いかける、
狂犬モードになった彼女を見るのはツラい……
しかし、ここでは甘んじて罵詈雑言を浴びよう、
言葉のご褒美、いやいや、何を期待しているんだ!
もっと真面目になれ自分。
思わず眼を閉じてしまう……
んっ、いくら待っても罵声が飛んでこない?
薄目を開けてみると萌衣ちゃんは、恍惚とした表情を浮かべていた、
「沙織ちゃん、素敵だと思わない! 柚希と宣人さん、
淡い初恋で将来を約束した二人……」
バレていない? 萌衣ちゃんは自分の世界に入っていただけなんだ。
思わず安堵の胸をなで下ろした。
「それでね、お願いって言うのは、もう一度、二人の時間を作れば、
柚希の発作も押さえられるんじゃないかって」
二人の時間って何だ?
また女の子に振り回されるターンなのか?
「柚希と宣人さんをお付き合いさせるの、
協力してくれるでしょ、沙織ちゃん!」
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