僕は認めない!! 奇跡の◯〇〇と言われるお兄ちゃんが△△△になるなんて!?

 どれ位、意識を失っていたんだろう、

 目を覚ますと、身体に柔らかな感触を感じていた……

 周りを見回すと天音の部屋だ、どうやらベットに寝かされてたようだ、

 俺には薄い肌掛けの布団が掛けられていた。

 天音の愛用しているボディミストの香りがした、

 確かフィアンセという銘柄だっけ、


「んっ?」

 違和感を感じて飛び起きる、慌てて自分の腕の香りを嗅ぐ、

 違う! 布団からじゃない……

 俺自身の身体から女子高生の女の子のような香りがしている?


 気絶したショックで頭が変になったんだろうか……


 香りに続いて首回りに違和感を感じた、

 おそるおそる首に手をやると、サラサラな髪の毛に掌が触れる、

 首回りの違和感は俺の髪の毛がいきなり伸びていたんだ!?


「なんじゃ、こりゃ!」

 ロングヘヤーになった頭を抱えながら、思わず驚いて声が出てしまう……

 慌ててベット脇にある天音のドレッサーを覗き込む。


「!!」

 俺は自分の目を疑った……


 そこには見知らぬ女の子が鏡に写っていた……

 肩まで伸びたミディアムヘヤ、両サイドを後ろで纏めたハーフアップ

 抜けるような透明感のある白い肌、清楚な感じのメイクで

 憂いを含んだ瞳、綺麗にカールした長い睫が印象的な女の子だ、


「か、可愛い……」

 驚く事に鏡の中で、頬のチークと同系色のリップが塗られたキュートな唇が、

 俺のしゃべった言葉とシンクロしたんだ。


「えっ!えええっ!?」

 あんぐりと口を開けても美少女のままだ、

 信じられないが、鏡の中の女の子は俺なんだ……

 しばらく身動きが出来なかった、俺の身に何が起こってしまったんだ、


 ある朝、目が覚めると美少女に転生したとか?

 良くあるラノベか……


「お兄ちゃん、目が覚めた?」

 その時、突然ドアが開き、天音が部屋に入ってきた、


「あっ!天音 お前っ! 一体俺に何をしたんだ」

 可憐な美少女のまま、天音に詰め寄る、


「完璧! 想像以上の仕上がりだわ……

 お兄ちゃん、あまり動かず顔を良く見せて」


 天音が俺の顎を軽く押さえながら、自分の顔を接近させる……


「んっ……」


 男装女子に顎クイをされる美少女な俺、

 何だ、この構図は…… 頭がクラクラする。


「二人とも入ってきて!」

 天音が声を掛けると、おずおずと制服の女の子達が入ってきた、


 弥生ちゃんとさよりちゃんだ、

 二人とも俺を見て驚いた表情になり、目を丸くする。


「本当に猪野先輩なんですか? 嘘、可愛すぎ……」


「さっきは意識を失っていたから分からなかったけど、

 目を開けると本当に女の子みたいです」


「弥生ちゃん! さよりちゃん! 三人でメイクの練習した甲斐があったね、

 こんなに可愛い男の娘が出来あがるんだから」

 天音の言葉を聞いて理解した、これが男の娘になれって指令の一環なんだ。


「おい!天音、それにしても荒っぽ過ぎないか?

 スタンガンで気絶させて拉致るなんて」


「本当にゴメンね、でもこれ位しないとお兄ちゃん、

 照れて男の娘メイク拒否するでしょ……」


「私からもお詫びします、あのスタンガンは護身用で、

 お祖父ちゃんに通学電車での痴漢対策に持たされた物なんです、

 でも怖くて一度も使ったこと無かったんです……」


 申し訳なさそうに謝るさよりちゃん、本多会長が持たせた物か、

 孫娘を溺愛している会長らしいな。


「でも、猪野先輩、ちょっと嫉妬しちゃうな……

 私よりカワイイかも……」

 複雑な表情をみせる弥生ちゃん、


「そんな事ないよ、弥生ちゃんの方が絶対カワイイから」


 思わず弥生ちゃんの手を握り、力説する俺、


「えっ、本当ですか? カワイイなんて、照れちゃいます……」


「こらこら、女装のまま、二人の世界に入らないでくれる」


「でもこの女装は何の為なんだ?」

 我に返り、天音に問いかける俺。


「こんなに強行手段を取るには理由があるんだろ……」


 そうだ、俺を男の娘に仕立てるには特別な意味があるはずだ。


「天音ちゃん、私達にも教えて欲しいの」


 えっ! 二人とも知らされてないんだ……

 良くノリノリで俺をメイクしたもんだな。


 俺たち三人、いや、男の娘の俺を入れた女の子三人が天音に注目する。


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