君にだけ伝えたい
嵐のような一夜が明けた……
昨晩の雷雨が嘘のように快晴の朝を迎えた。
窓越しに差し込む朝日が眩しい、
俺は慌てて毛布をはねのけ飛び起きた、
固い床では熟睡出来ず、思わず寝過ごしてしまったようだ。
毛布一枚で寝ていたはずが、俺の上に布団が追加されていた、
隣のベットには既に、萌衣ちゃんの姿は無い、
先に起きた彼女が布団を掛けてくれたんだ……
部屋から廊下に出ると、ダイニングから声が掛かる、
「でく助、早く顔洗ってこい! 味噌汁が冷めてしまうわ」
いつもの狂犬モードの萌衣ちゃんだ、昨晩の雷を怖がる彼女が嘘のようだ……
あれは本当にあったんだろうか?
俺が夢でも見ていたんじゃないのか……
半信半疑のまま、ダイニングに入る俺に向かって彼女が小声で呟く、
「昨晩は萌衣と一緒にいてくれてありがとな……」
俯く彼女の頬は真っ赤に染まっていた、
素直にお礼を言うのが照れくさいんだろう。
「昨日のような素直な萌衣ちゃんなら、毎晩だってOKだよ!」
「ばっ、馬鹿野郎! やっぱりぶっ殺す……」
わざとおどける俺に向かってお皿が飛んでくる、
昨晩のお風呂のように、包丁じゃないだけマシだが……
苦笑しながら慌てて洗面所に向かう。
先に起きた萌衣ちゃんは和食中心に、朝食の用意をしてくれていた、
ダイニングテーブルに腰掛ける。
差し向かい座る彼女はいつもと雰囲気が違う、
そうだ、普段ポニーテールにしている髪を下ろしているんだ。
髪を下ろした彼女はやけに大人びて見えた……
思わず見とれる俺の視線に気付いたのか、こちらに毒付く。
「なにジロジロ見てるんや、拝観料取るぞ!」
俺の前に掌を上にして差し出す彼女。
「ほい、ひゃくまんえん!」
差し出された手を思わず握りしめる俺。
冗談を言っていた萌衣ちゃんの顔が見る見る赤くなる……
「何、どさくさに手ぇ握っとるんじゃ、ワレ!」
強い口調とは裏腹に、彼女の動揺が掌から伝わってくる、
「お願いがあるんだ、今日一日、俺に付き合ってくれないか?」
思い切って切り出す、突然の事に黙り込む彼女、
この様子じゃ、断られるかもしれないな……
沈黙が長く感じられた。
差し向かいの萌衣ちゃんがやっと口を開いた、
「……ィよ」
小声で良く聞こえない……
「えっ…… 何?」
思わず聞き返す俺に向かって、握った手を上下に激しく揺らしながら、
「だからぁ、でく助に一日付き合ってイイのって言った!」
ブンブン俺の手を振り回しながら萌衣ちゃんが叫ぶ。
下ろした髪の毛先が、彼女の動きに合わせて軽やかに揺れる。
まるで子供のような態度に、呆気にとられてしまう、
「昨晩、萌衣を一人にしなかったお礼だよ……」
照れくさそうに微笑む彼女、
「でく助は約束を守ってくれたから、そのお返し!」
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