やよいちゃんパニック! Ⅱ

 柚希が部屋を出て行った後、俺は一人考え込んでしまった、

 何故、彼女の事についての記憶を封印してしまっていたんだろう……

 そしてあんなに仲良しだった俺達四人は、一人欠けてしまったのか?


 想いに耽っていると、ベットに横たわる弥生ちゃんが意識を取り戻した、


「先輩、ここは何処ですか?」


「弥生ちゃん、大丈夫? お風呂で気を失っていたんだよ」


 弥生ちゃんが起き上がろうとしてベットから身を起こすが、

 何かに戸惑い、上掛けのシーツを両手で掴んだまま、

 彼女は急に固まってしまった……


「どうした、まだ気分悪いの?」

 俺の問いかけに、真っ赤になる弥生ちゃん、

 理由が分からず、オロオロする俺、

 その時、ベット脇に置かれた籠の中に、

 弥生ちゃんの着ていたギンガムチェックのトップと、

  黒いアンダーの水着が白いバスタオルと共に、

 ちょこんと折りたたまれている事に気が付いた……


 シーツの下の弥生ちゃんは何も身に着けていないのか? 


「先輩、お願いがあります……」

 消え入りそうな声で弥生ちゃんが呟くが、良く声が聞き取れない。


「えっ、何? 弥生ちゃん」

 聞き取れなくて、思わずベットに歩み寄る、


「あっ! 駄目、それ以上近寄らないでください」

 弥生ちゃんが更に真っ赤になりながら叫んだ、

 俺は慌てて、その場から飛び退こうとした際、

 ベットを仕切る大きな衝立にぶつかり、

 そのままバランスを崩して盛大に転んでしまった……


「!?」

 間の悪いことに次の瞬間、倒れてきた衝立に押され、

 俺はベットの上の弥生ちゃんに覆い被さるようになってしまった。


 シーツ越しの彼女は真っ裸だ、故意ではないが抱きついてはいけない……

 俺は何とか受け身を取り、両肘で弥生ちゃんとの間に空間を作った。


 それでも彼女との距離は近い、驚いて声も出ない唇が僅かな距離だ、

 何か言わなきゃ、俺も慌ててしまい、心臓がバクバクする……


「大丈夫! 受け身を取ったからセーフだよね」

 しどろもどろに訳の分からない事を口走ってしまう、

 その言葉を聞いて、茫然としていた彼女の瞳に光が戻る。


「きゃあああ!」

 我に返った弥生ちゃんが悲鳴を上げながら

 俺を思いっきり突き飛ばした、


 火事場の何とやらで凄い力だ、俺は大きな衝立ごと

 派手に後方に吹っ飛ばされた……


「ゴッ! 」

 鈍い音と共に俺は意識を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る