木綿のハンカチーフ
さよりちゃんの部屋に飛び込んだ俺が見た光景は、予期せぬ物だった……
「さよりちゃんが居ない……」
一般家庭に比べたら何倍も広めの部屋は、高級ホテルの一室のようだ。
女の子らしい調度品でしつらえられた部屋のどこにも、
さよりちゃんの姿は無い……
さよりちゃんが部屋で軟禁されていると、執事の皆川さんは教えてくれた、
その情報は間違っていたのだろうか?
呆然とする俺に、突然、大音量で声が降り注いだ。
「ここまで良く来たな、小僧!」
天井のスピーカーから聞こえてきたその声の主は……
今回の黒幕、本多真一郎だった。
「さよりちゃんはどこに居るんだ!」
当然、こちらの声もモニタリングされているだろう、
俺は語気を強めて言い放った。
「最近の若造は、口の利き方も知らないらしいな」
本多会長の怒りが声だけでもこちらに伝わってくる……
「待て、俺達は争いに来たわけじゃ無い、
さよりちゃんを今まで通り、中総高校に居させて欲しい、
その話し合いに来ただけだ……」
「それは無理だ、さよりの転校先は決めてある、
都内の中高一貫の女子校に編入させる、
そこで良妻賢母となるべく、厳しく学ばせるつもりだ、
儂の母校だからと言って、男女共学の高校に入学させたのが、
大きな間違いだったんじゃ」
本多会長のどす黒い怒りが、言葉だけでも俺に襲いかかってくる。
すでに聞く耳はなさそうだ、万事窮すか……
「このまま、立ち去れば今回の件は、不問にしてやろう、
それとも不法侵入で警察に突き出した方がいいか?」
駄目だ、本多会長のペースに持ち込まれてしまった……
「十秒だけ時間をやろう、その間にここから立ち去れ!」
「十、九、八、七!」
本多会長がカウントを始める……
完敗だ、元々無理だったのかもしれない、一介の高校生に何が出来る……
「五、四、三!」
踵を返して部屋を立ち去ろうとしたその瞬間、
「真一郎の馬鹿野郎!!」
突然、部屋に飛び込んできた人物が本多会長を一喝した……
「お、お前は? 何故だ、ここに居るはずが無い……」
激しく動揺する本多会長、一体何が起こったんだ?
声の主を見て、俺は驚愕した。
部屋の中央に仁王立ちしながら、会長を一喝して黙らせた人物は、
誰あろう天音だった……
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