本歌取
「今宮みすゞ? 肖像画に隠されていた手紙の宛名と同じ名前だね……」
我楽多 具無理のマスターが、口髭をさすりながら呟く。
俺達三人は、さよりちゃんの託してくれた画像のヒントを元に、
昭和に造詣が深いマスターに聞いてみる事にした。
画像のポスターをよく見て貰う、男装した天音にそっくりな人物が、
問題の今宮みすゞだ、
「宣人くんが驚いたのも頷けるね、見れば見るほど絵と瓜二つだ……」
写真と天音を交互に見て、マスターが感嘆の声を漏らす。
「お兄ちゃん、絵って何?」
そうか、天音達には話してなかったっけ、内藤純一の肖像画の事を。
「お嬢さん方、こちらへどうぞ」
マスターに案内されて二階に続く階段を上がる、
踊り場のスペースに布を掛けられて、肖像画は置かれていた。
マスターが覆われていた布を取り去る、
「……これって、天音ちゃん?」
「どうして、僕そっくりなの……」
「今はゆっくり説明している時間は無い、
この絵に隠されていた手紙の宛名が 今宮みすゞだった……
そして本多真一郎も、この肖像画を探しに具無理を訪れたんだ」
「さよりちゃんのお祖父さんが何でこの絵を?」
「それはまだ分からない…… あの少女歌劇団のポスターが
その接点だと思うけど」
俺達の会話を黙って聞いていた、具無理のマスターが、急に店の奥に移動した。
「どうしたんですか、マスター?」
「ちょっと待ってな、今思い出したんだ……」
店の奥はカウンターがあるスペースより広くなっており、
こちらにはレトロな昭和のガラスケースを利用して、
レコードや映画のパンフレット、雑誌などが陳列されている、
マスターがその一角から古びた雑誌を取り出した。
「あった、あった、この本だ」
埃を払いながら俺達にその雑誌を差し出す、
「あっ!」
その表紙を見て驚きの声を上げてしまった……
かなり古い雑誌で、ジュニアらめーる、と誌名がある、
雑誌の表紙には、天音そっくりの男装の麗人のバストアップの写真、
そしてタイトルには東京竹梅歌劇団トップスター
「今宮みすゞ」と大きく紹介されていた、
俺が驚いた理由はそれだけでは無い、
その本の表紙に大きく書かれた文字、
「女性の生き方はもっと美しく出来る」
「責任編集 内藤純一」
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