答えはunderstand
「猪野先輩、こんにちは」
「君は……!?」
声を掛けられ、振り返ると女の子が立っていた、
そう、男性恐怖症を克服するため、天音とコスプレデートした、
本多さよりちゃんだ。
あれ? 何か雰囲気が違う気がする……
以前のさよりちゃんは、日焼けしたスポーツ少女と言った雰囲気だった、
電車での痴漢被害に遭わない為に、意図的にボーイッシュにしていたはすだ。
本当は女の子らしい格好をしたいのに、自分を押し殺していたんだっけ。
「そんなに見つめられると、何だが照れちゃいます……」
そんな俺の疑問に気が付いたように、さよりちゃんが答える。
「メイクですよ、天音ちゃんに教えて貰って、現在練習中です」
そうか、雰囲気が違うと思ったのは、肌の印象が違うからだ。
ボーイッシュな少し日焼けした肌から、透明感のある白い肌に
イメチェンしている……
「昨日も猪野先輩の家にお邪魔して、天音ちゃん、弥生ちゃん
あと私でメイクの講習会をしていたんですよ」
そうなんだ、さよりちゃん達が家に来ていたなんて知らなかった……
「弥生ちゃんが残念がってましたよ、猪野先輩が居ないって」
ヤバい、俺が朝帰りした件は全然知らないんだ……
特に弥生ちゃんに知られたら、彼女に悲しい想いをさせてしまう。
彼女に告白された時の涙を思い出した……
「ごめんね、昨日は用事があって不在にしてしまったんだ、
またみんなで遊びに来てよ」
今朝の天音の怒りも理解出来る、俺の事故の心配もあるが、
みんなに俺を会わせたかった事を……
そんなことも分からず、俺は何をしていたんだろう。
自分の事しか考えていないと、良く天音には叱られるが、
正にその通りだ……
それにしても、あのコスプレデート以来、天音とさよりちゃん、
そして弥生ちゃんは三人、仲良くしているんだな、
三人のメイク談義を想像したら、微笑ましい気分になった。
まてよ、三人仲良く?
その瞬間、俺は名案が閃いた……
「さよりちゃん、良かったら歴史研究会に入部してくれないかな?」
何でもっと早く気付けなかったんだろう、
六人目の部員候補が、こんな近くにいた事に。
よし、これで目標人数達成だ!
コンテストにも参加出来て、合宿にも打ち込めるぞ、
俺の胸中に広がっていた、黒いもやもやが一気に晴れていく気がした。
「私が歴史研究会にですか?」
さよりちゃんの顔に驚きの色が見える。
これまで男性恐怖症克服の為、みんなで協力しあってきたんだ、
さよりちゃんなら最後の一人にピッタリだ。
「もちろん、入部してくれるよね?」
俺のハイテンションが伝わるのか、彼女は驚いた表情のまま、
言葉を発しようとしない……
しばらくの沈黙の後、彼女がゆっくりと答えた。
「ごめんなさい、歴史研究会に入部は出来ません……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます