花を召しませ

 

「私達、入部希望です」


 女の子達を見て、俺は驚いた。

 まるでドッペルゲンガーみたいに、同じ二人が並んでいた。


 背丈も同じ、可愛らしい顔も同じ、制服の学年を示す色は天音と一緒で、

 シンプルなバレッタで留めた、ピョコンと跳ねたサイドアップの長い髪が特徴的だ。

 アイドルと言われてもおかしくない位の美少女が二人も立っていた……


花井紗菜はないさなです」

花井香菜はないかなです」


 同時に二人がユニゾンで自己紹介する。


「私達、双子なんです」


 そうか、瓜二つなのはそのせいか……

 でもどこかで見かけたことがあるぞ。


「花井先生のお嬢さんだね」


 八代先生が声を掛ける。


「はい!母がいつもお世話になってます」


 そうだ、天音の担任である花井先生の娘さんだ。

 天音の教室に行った時、声を掛けたことがある。


 天音を呼んで貰おうと思って、廊下で頼んだんだ。

 その後すぐに出て来たので、お礼を言ったのに怪訝な顔をされた事があった。


 さっき頼んだばかりなのに、何でそんな顔されるのか、

 分からなかったのが、妙に印象に残っていたんだ……

 なるほど、双子なら納得がゆく、

 俺は、別々の娘に声を掛けていたんだ。


「でも、あんな映像を見ても、平気なの?」


 先ほどのDVDの件を問いかける。


「はい、母から歴史研究会や天音さんの事は聞いています。

 それで何か、私達で協力出来ないかなって……」


「ありがとう……」


 天音が感激して二人に歩み寄り一人ずつ握手を求める。


「紗菜ちゃん、ありがとう」


「…… 私は香菜」


 天音が、かあっ、と赤くなる。


「あっ、ごめんなさい、間違えて……」


「大丈夫だよ、子供の頃から慣れてるもん」


 紗菜ちゃんが笑いながら答える。


「見分け方は髪型なの、左向きに髪を結わえてるのが私、紗菜。」

「そして右向きに結わえているのが、私、香菜」


 香菜ちゃんが右手で結わえた髪の先端を触りながら答える。


「親でも間違える位だからこうしないと紛らわしいの」


 香菜ちゃんも明るい笑顔を見せる。


「子供の頃から服のサイズも同じだから、

 ブラやパンツにも、名前を書かないと分からなくなっちゃうんだよ」

「こら! 香菜、余計な事言わないの……」


 紗菜ちゃんが真っ赤になりながら慌ててたしなめる。

 双子でも性格は結構、違いそうだ……


「じゃあ、これで部員は五人になった! あと一人、加入してくれれば

 大会に参加出来る最低人数が揃う」


 八代先生が嬉しそうに俺達に声を掛ける。


「もう少しの頑張りだな……」


「うん!! お兄ちゃん」


 天音の目指す、大会出場へのスタートラインにもうすぐ立てそうだ。

 現在の部員は、朝霞部長、天音、弥生ちゃん、花井姉妹の五人だ。

 もう一人、何とか加入者を探さねば……


 その後、部室に戻り新メンバーも含め、ミーティング兼、お茶会をした。

 話題の中心は今後の活動予定について、話し合った。


 もちろん以前のような、部員を危険な目に遭わせる活動はやらない。

 企業などでも当たり前だが、コンプライアンスを守らなければ、

 高校の部活動でも大問題になる。


 当然、土偶男子フェスのイベント出場が当面のゴール地点だ。

 いや、絶対に優勝しなければならない。


 バックアップを約束してくれた校長のコネで、優勝に向けて

 各方面に人材、研修の場を設ける予定だと、八代先生が教えてくれた。


 でも、優勝の為の研修って何だろう?

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