お茶会へのお誘い 三

 お茶会用の正装って、和装の着物かな?

 そう思いつつ、さよりちゃんの可愛い着物姿に見惚れ……


 あれっ?

 目の前に現れたさよりちゃんに、己の目を疑う。

 ものすごくフリルの付いたエプロンドレス、

 黒髪の中央には大きめのカチューシャ、

 そこにもレースを使ったフリルが彩られてる

 いわゆる、ロリィタファッションを身に着けたさよりちゃんが立っていた。


「わぁ!お人形さんみたい……」


 弥生ちゃんがそばに駆け寄る。


 天音が絶句して、可愛さに見惚れているのが分かった。

 天音は昔から可愛い物を見ると、同じ反応をするんだっけ……


「お茶会と言われたので、アリスコーデでまとめてみました……」


 さよりちゃんが照れくさそうに説明してくれた。


 お茶会と言っても西洋と東洋の違いがあるけど……

 俺は心の中でだけツッコミを入れた。


「どうぞ、こちらへ!」


 朝霞部長が椅子を引いて、さよりちゃんを座らせる。


「本日の主役ですから……」


 それを聞いた天音が金縛りから解けたように、

 ふらふらとさよりちゃんに歩みよる。


「本多さん……」


「えっ!」


 天音とさよりちゃんのお互いの顔と顔が近い……

 天音がグッっと親指を立て、サムアップする。


「凄く可愛い!」


 あっ!、天音がゾーンに入った……

 以前、家で土偶男子を説明した時の同じ表情だ。

 好きな物を見ると昔から止まらなくなる癖が出た……


「あ、ありがとうございます」


 何故か、さよりちゃんもまんざらでもない様子だ。


 天音が隣に座り、我々も席に着き、お茶会がスタートした。


 朝霞部長がお手製のお茶セットで用意をする。

 弥生ちゃんがお菓子を運んできてくれた。

 さよりちゃんから貰った洋菓子だ。


「いただきま~~す!」


 お茶会のスタートだ。

 めいめいに好きなお菓子を手に取る。

 煎れてくれたお茶を一口飲みながらお菓子を食べる。

 至福のひとときだ。


「今日のために、わざわざ用意してくれたんだ……」


 天音が服装について訪ねると、


「おかあさんに無理を言って学校まで届けて貰いました

 ちょうどクリーニングに出していた所でしたので……」


 でも、ロリィタファッションが好きなんて意外だな、

 普段のさよりちゃんはショートカットでボーイッシュな

 健康少女って感じだから、その事を聞くと、理由を答えてくれた。


「私、通学途中で、痴漢に合う確率が高くて本当に嫌でした……」

「対策として髪型も短髪にして男の子みたいにすれば、

 そんな目に遭わないのかな、なんて考えていたんです。」


 そうか、だからボーイッシュな風貌にしていたんだな。


「でも、あまり効果が無く、その後も嫌な想いをしました……」


 可哀想に、本当に嫌な思いをしてきたんだな。


「それを天音さんが救ってくれました……」


 うっとりした表情で天音に視線を落とす。


「それと……」


 さよりちゃんがドレスの襟口のフリルをさすりながら語り出す。


「この格好をしていると、普段の抑圧された自分が、

 開放される気がするんです。」


 天音が電流に打たれたかの様に姿勢を正した後、

 さよりちゃんに共感の眼差しを注ぐのが見て取れた。


 天音の男装と、同じなんだな……


 その後、今日の勧誘ビラ配りの苦労話や、今後の部活動の

 展望を語り合い、お茶会は終了した。


 天音と俺、さよりちゃんは電車も同じと言うことで、

 一緒の帰路に着く。


 駅までの帰り道、彼女が思い詰めた表情な事に

 気がついた……


「どうしたの? 何か心配な事があるの」


 天音も様子に気付いて、無意識だろうか、

 さよりちゃんの肩に軽く手を触れようとする……


 次の瞬間、思いも寄らない光景を、俺は見ることになる。


「ごめんなさい……」


 さよりちゃんが肩に触れた天音の手を取ると、

 そのまま、自分の体に強く引き寄せ、

 その手のひらを、胸の膨らみに触れさせた。


「…………なっ、何をするの……本多さん」

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