2-14 LUCKY 17

 さて、本日のカジノ・ピエロ&ドラゴンでは新たなギャンブルを行うことになった。


 その名も、”LUCKY 17(ラッキー・セブンティーン)”である。


 数字の「17」にまつわるこのギャンブルでは、2つのサイコロを使用する。



 果たして、このギャンブルは”ピエロ&ドラゴン”で、人気がでるんだろうか?


 考案者として、少しワクワクしながらお披露目する日を迎えた。



 一般的なカジノには、サイコロを使ったいくつかの人気のゲームがある。


 ピエロ&ドラゴンには道具としてのサイコロはあったのだが、俺が店に来てからはサイコロを使ったギャンブルは行われていなかった。


 そこで、サイコロを使ったギャンブルをひとつ考えてみたのだ。



 ”LUCKY 17(ラッキー・セブンティーン)”では、通常の見慣れた、1から6までの数字が各面に割り振られている「6面ダイス」は使用しない。


 1から20までの数字が割り振られている、「20面ダイス」を利用するのだ。



 ゲームでは、「20面ダイス」を2つのみを道具として使用する。


 2つの「20面ダイス」を振り、出た目のみで全てが決まり、それ以外の要素は一切関係がないギャンブルである。


 それぞれのダイスは「赤」と「青」色であり、どちらの目でどの数字がでたのか、使うダイスの区別をする。


 例えば、「赤」のサイコロで「10」の目、「青」のサイコロで「17」の目が出た場合と、「赤」のサイコロで「17」の目、「青」のサイコロで「10」の目が出た場合では結果が変わってくるのである。



 1ゲームあたり、1回、2つのダイスを同時に振る。


 プレイヤーは2つのダイスを振った結果、どの数字が出るのかの予想に自分の「金」を賭けていく。




 このギャンブルでは、チップを導入した。


 ダイスを振る前に、緑色のマットレスに書かれている賭けたい場所のマスにチップを置いていく。


 ダイスのでた数字の結果次第で、勝ち負けが決まっていく。




 ”LUCKY 17(ラッキー・セブンティーン)”において、プレイヤーは、3つのタイプの賭け方をすることができる。


 それぞれについて解説をしていこう。



 1つ目の賭け方は、『「赤」と「青」のダイス、どちらが大きな数字の目がでるのか』である。


 「赤」が勝つ方「RED」に賭けて当たれば「2倍」、「青」が勝つ方「BLUE」に賭けて当たれば「2倍」である。


 同じ数字が割り振られているサイコロなので、出目が引き分ける可能性もある。


 引き分けた場合は、「赤青」に賭けてしまったら負けになる。


 「引き分け」である「DRAW」に賭けて、予想が当たった場合は、「19倍」である。


 さらに、引き分けの内容を細かく賭けることもでき、奇数で引き分け「ODD DRAW」に賭けて当たった場合は「38倍」、偶数で引き分け「EVEN DRAW」に賭けて当たった場合も同様にして「38倍」となる。


 これが1つ目の賭け方、「赤」と「青」のダイスの数字の目のどちらが大きいか、である。




 2つ目の賭け方は、『「赤」と「青」のダイスの数字の目の合計に賭ける』方法である。


 例えば、赤のダイスの目が「1」、青のダイスの目が「16」で合計「17」になれば当たる「SUM 17」がある。


 合計の値が「17」にさえなれば、「赤、青」の組み合わせが、「4、13」「12、5」「9、8」と何でもいい。


 合計の値のみに依存をした賭け方だ。


 この予想が当たれば、賭け金は「24倍」になる。


 合計の値が「17」の2倍で「34」になることに賭ける「SUM 34」もある。


 例えば、「赤、青」の組み合わせとして「20、14」「15、19」「16、18」などがある。


 この予想が当たれば、「50倍」になる。


 合計の値が「17」と「34」のどちらになるのかに賭ける「SUM 17 or 34」もあり、これは当たると「15倍」になる。


 これが2つ目の賭け方、「赤」と「青」のダイスの数字の目の合計がどうなるか、である。




 3つ目の賭け方は、『2つのダイスの目で「17」の数値がでるのかどうか』である。


 赤か青のダイス、それぞれで「17」がでるかどうか「RED 17」「BLUE 17」に賭けると、予想が当たれば賭け金が「19倍」になる。


 二つのダイス、どちらでもいいから「17」がでることに賭ける「PURPLE 17」に賭けて当たると、賭け金が「10倍」になる。


 そして、最後にこれがこのギャンブルの中で、最も当てるのが難しいのだが、当たると返ってくる金額が大きい賭け方として「W17」がある。


 これは、「赤」と「青」のダイス、両方の目が「17」に賭けるマスである。


 この「W17」を当てることができれば、「395倍」になる。


 これが3つ目の賭け方、2つのダイスの目で「17」の数値の目がでるのか、である。




 以上が、俺が考案をした新たなギャンブル、”LUCKY 17(ラッキー・セブンティーン)”の賭け方だ。



 このギャンブルの特徴としては、サイコロを使っている事以上に、プレイヤーへの賭けた金額に対するリターンが大きくなりやすいことをあげることができる。


 これぞ、まさにギャンブルの醍醐味だ。


 一攫千金とまではいかなくても、そこそこの大金を手に入れる可能性があるギャンブルだ。



 しかし、残念ながら我々のカジノでは、”LUCKY 17(ラッキー・セブンティーン)”は、その力を全て発揮することはできないのである。

 

 魔法による不正が怖いのであった。


 10,000Dドリームを賭けることを許して、「W17」の「395倍」を当てられてしまったら、3,950,000Dドリームが店から奪われる。


 この店の規模と財政状況では、一発で店が閉店の危機を迎えてしまう。



 というわけで、ピエロ&ドラゴンではお馴染みであるMaximum Bet(マキシマム・ベット)、「最高賭け金」は500Dドリームに設定をされてしまった。


 ダイスをプレイヤーが振ることができるようにしようかとも検討されたのだが、これも魔法による不正防止の為に禁止にして、ダイスは全てディーラーである俺かジェスターが振ることに決まった。


 後は、これは最後までジェスターと意見が別れたのだが「W17」のマス(「赤」と「青」のダイスで両方「17」がでることに賭けるマス)は結局、封印をされることになった。


 「最高賭け金」が500Dドリームだとしても、「395倍」で197,500Dドリーム、不正をするのに十分な動機を与えてしまい、リスクが高すぎるとの判断になった。



 俺は、”LUCKY 17(ラッキー・セブンティーン)”がいつかその力の全てを発揮する日を夢見て、制限バージョンでありながらもワクワクとしながらギャンブルに望んでいった。


 ピエロ&ドラゴンでは、6時間を2時間ずつ3つのセクションに分けて、様々なゲームを行なっている。


 ”LUCKY 17(ラッキー・セブンティーン)”は、いい盛り上がりを見せていた。


 常連客のグラさんとモサモも参加をしてくれて、楽しそうにギャンブルをしてくれた。



 ただし、「最高賭け金」が500Dドリームがやはりというか足を引っ張ってしまい、収益に関してはもう少し改善が必要だなと感じた。


 グラさんからも、もっと賭けさせろとの不満を言われてしまった。



 完全版”LUCKY 17(ラッキー・セブンティーン)”は、いつか必ずやってやろうと心に誓いつつも、このセクションを終わらせた。



 ”LUCKY 17”、”ナイフダーツ”、”バカラ”......と、本日のギャンブルを行なっていき、飲食物を提供して、ピエロ&ドラゴンの営業を終了した。



 俺は、ジェスターに”お願い”された通りに、元気一杯で働いていた。


 終わり良ければすべて良し、の精神で今日一日は良い日であったとこの瞬間には思っていた。


 心に深い傷を負ったが、ジェスターとも仲直りできたしね。




 そして、店の閉店作業をしていたところで、異変は突如起こる。


 扉が開いた音が鳴り、白スーツに身を包んだ男たちが、店内になだれ込んできたのであった。

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