1-16 異世界カジノ立て直し計画始動
一日、二日と実験を繰り返していき、新生ピエロ&ドラゴンは徐々にその形を完成形へと近づけていった。
飲食の売上高は明らかに増えている。
これは2人で働き出した初日からもそうだったのだが、数日働くことによって、俺が店でのノウハウをつかみ、しっかりとした戦力につつあるところが大きい。
今では、お客さんたちが何を注文しているのかも、ジェスターに確認せずに把握することができるようになった。
飲食の売上高だけではなく、カジノとして稼げる額も一気に増えた。
この店で行われているゲームは「バカラ」だけではない。
俺はディーラーとして自分で考案したいくつかのゲームを行なっている。
ピエロ&ドラゴンは、18時から0時まで毎日営業をしている。
定休日は、不定休である。
俺とジェスターは、その6時間の営業時間を3つのセクションに分けた。
そして、この時間の中で1つか2つのゲームを行うことにした。
最大で一日の営業時間の中で、6つのゲームを行うことが可能である。
1つやるとか、2つやるのかは俺とジェスターの忙しさによって決まってくる。
というよりかは、この店でもっとも忙しいのは料理を作れるジェスターであり、ジェスターの忙しさに依存をしていると言うのが正確なところである。
今のところは、一日に基本的には4、5ゲームが行われている。
もっとも飲食の注文が多い、18時から20時までの時間は1つのゲームのみを行なっていて、ジェスターには飲食の業務の方に集中をしてもらっていた。
本日行うギャンブルは、新ゲーム、その名も「クラウンorドラゴン」である。
営業を開始して注文をとり、ある程度人が集まってきたところで声がけをする。
「本日もカジノ・ピエロ&ドラゴンにお集まりいただきましてありがとうございます。それでは本日第一部のギャンブルを開始します。参加する人はこちらのテーブルに集まってください」
俺はちょっと格好をつけて、ギャンブル開始の合図をする。
「よしきた」「今日こそは」
待ってましたと言わんばかりに、テーブルの周りに人が集まってきた。
特に、ギャンブルに参加はせずに飲食を楽しんでいたり、カウンター越しにジェスターと軽くおしゃべりをしているお客さんたちもいる。
それぞれの楽しみ方で別れていた。
参加者がざっと10人ちょっとくらい集まってきた。
椅子に座る人もいれば、立ったままの人もいる。
もう動く人がいなくなって、場が落ち着いたところでギャンブルを開始する。
「キン。今日のギャンブルは何なんだ!」
俺の名前を覚えてくれた常連客のグラさんは、俺の真正面に座っていて気合が入りまくりである。
しかし、残念ながらというか、店側としてはありがたいと言うか、俺がこの店に来てからここ数日、グラさんが勝っているところをほぼ見たことがない。
この人、かなり運が悪い気がする。
「”クラウンorドラゴン”ですよ」
すでに2回程このギャンブルをやってみたので、経験済みの人たちはいる。
このギャンブルの名前を聞いて、喜んでいる人もいれば、あちゃーといった感じの顔をしている人もいた。
それぞれに思い出があるのだろう。
初めての人たち向けにと、俺は”クラウンorドラゴン”のルール説明する。
「このギャンブルでは”クラウン”と”ドラゴン”二種類のカードを使います。
”クラウン”は2枚、”ドラゴン”は5枚の合計7枚のカードを使います。そして、カードを7枚横一列に並べたところで、皆さんにベットをしてもらいます。
カードをオープンしていき、カードの並び方によって皆さんの勝敗が決まります。例えば、」
俺は、カードを表向きにして7枚のカードを横一列にして並べる。
クラウン(Clown)の絵柄のカードを|C|、ドラゴン(ドラゴン)のカードを|D|として、7枚のカードの配置は以下のようになった。
|C|D|D|D|D|D|C|
「ゲーム内では、5枚あるドラゴンのカードの並びが重要です。ドラゴンのカードが連続して並ぶ枚数が多ければ多い方が皆さんにとってはいい配置になります。例えば、今並んでいるようにドラゴンが5枚連続で並んでいる”ファイブドラゴン”が最高の並び方であり、ベットした金額は5倍になって返ってきます」
ドラゴンとクラウンのカードを1枚入れ替えて、以下のような並びにする。
|C|D|D|D|D|C|D|
「ドラゴンが4枚連続で並んでいるのが、次にいい配置であり、ベットした金額は2倍になります」
現在の配置からクラウンのカードを1枚ずらして以下のような並びにする。
|C|D|D|D|C|D|D|
「ドラゴンが3枚連続で並んでいる場合は、ベットした金額はそのままで返ってきます」
今度は今までは動かさなかった方のクラウンのカードを1つずらして配置する。
|D|C|D|D|C|D|D|
「ドラゴンが2枚しか連続して並んでいない場合にはプレイヤーの負けとなり、賭け金は全てディーラーのものとなります」
これがプレイヤーに対してお金が還元される場合の説明である。
「ただし、2枚あるクラウンのカードが連続して並んでしまった場合があります。このときは、例えばこのように」
|C|C|D|D|D|D|D|
「ドラゴンが5枚並んでいたとしても、プレイヤーの負けとなります。クラウンが2枚並んでしまう”Wクラウン”は、皆さんにとっては大変不幸な状況です。ドラゴンの配置に関係なくプレイヤーの負けとなってしまいます」
俺はルール説明を終えて、カードを戻してシャッフルをする。
「それでは、ゲームを開始します」
ゲームを考える上では、ジェスターが使っていた不正防止法を流用させてもらった。
賭け金は最大で1,000
プレイヤーに魔法を使われたとしても、店側は大きくは損をしないようにしていた。
俺はこの世界の魔法に対して無知すぎるので警戒は怠らない。
不正は、気付かれずに行われ続けることがもっとも怖い。
何かおかしなことが起きていないのかどうか、カードの並びは全て記録してチェックするようにした。
昼間の空いている時間に、確率的におかしな現象が起きていないかも計算もする。
ここ数日のところでは、一応特質したことは起きていないと思われ、収益も黒字であった。
魔法を使われてある程度の収益をもっていかれてしまっても、最悪、黒字でありさえすれば問題はない。
グラさんが”Wクラウン”で、1,000
グラさん以外のプレイヤーたちは大喜びである。
今日の飲み代が浮いたと席に戻っていくものもいれば、もうひと勝負と意気込む人もいる。
ギャンブルは、特に大勝ち、大負けしたときに、その人の性格がでると思う。
グラさんのサングラスがずれてしまっている。
この人、本当に運をもっていないな。
”クラウンorドラゴン”は新しく始めたギャンブルであり、物珍しかったからか、お客さんたちの反応は悪くなかった。
お客さんたちは、入れ替わり立ち替わりで、2時間のゲーム時間中にテーブルの周りには常に人が囲んでいる。
このギャンブルはピエロ&ドラゴンに新しい風を吹き込むためのものになった。
新作のギャンブルを定期的に増やしていけるといい。
だだし、俺の考え出した、”魔法を使われたとしても店が損をすることがない”との策を使っているのは別のギャンブルである。
”クラウンorドラゴン”では、魔法を使われて不正をされてしまったら、”バカラ”同様にして、ディーラー側は普通に損をしてしまう。
”魔法を使われたとしても店が損をすることがない”としては、例えば”ナイフダーツ”がその一例である。
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