カジノ大儲け計画始動
1-15 異世界生活2日目
何時間寝たのかはわからないが、自然とまぶたが開いた。
体の節々からミシミシと音が鳴って、悲鳴をあげている。
疲れが取れているのか、そうでもないのかよくわからない感覚がある。
ベッドの方を見たが、そこには整然とした布団が置いてあるだけで誰の姿もなかった。
同じ部屋で寝たはずなのに、俺は結局ジェスターの寝顔を見ることすらなかったのであった。
頭やお腹をボリボリと掻きむしりながら、俺は一階の店に降りていく。
そこには前回、俺が階段から降りていったときと同じ光景がひろがっている。
調理場で料理をしているジェスターがいた。
「よく眠れた?」
「...おかげさまでね」
「それはよかった。ホストがいがあるってものね」
ホストがいなんて言葉があるのか。
店内には、調理をしているいい匂いが充満をしている。
俺は昨日、食事をしたのと同じテーブルに着席をする。
「それで、この店の昼間は何をするんだ?」
「あら、手伝ってくれるの?」
「もちろんさ、どこに行けばいいのかわからないんで、正直言って働かせもらってご飯を食べさせてもらえるのはかなり助かるんだ」
「それは素晴らしい奴隷根性ね」
「とりあえずは、ここにいさせてもらってもいいのか?」
「まぁ、しばらくくらいなら」
ジェスターは内心では、実は嫌がっているのか、そうでもないのかよくわからないようなつれない返事をしてくる。
そんなことを言っている間に、ジェスターの料理が完成して盛り付けをしていく。
俺は立ち上がって、運ぶのを手伝った。
本日のメニューは、また登場をした水色に輝くスープ。
スープ内には、昨日はなかったテールスープに入っているような肉片が見える。
さらにはベーコンよりもさらに赤い不思議な肉が挟まれた長方形のクロワッサンのようなサンドイッチ。
切った果物が入っていて、緑色のジャムのようなものがかかっている、ヨーグルトより粘度が高そうな白っぽい何か。
そして、最も目を引くのが、かなりの大きさのゆで卵である。
ダチョウの卵くらいの大きさがあるが、殻の模様が明らかに元いた世界のどの卵とも違う。
ケッチャップっぽい赤いソース、マスタードっぽい黄色いソース、そしてコバルトブルーの謎のソースと信号機のような色の何かが添えられていた。
「いただきます」
2人で手を合わせてあいさつをする。
卵につけた赤いソースは辛かった。絶対にケッチャップではない。
相変わらずに、ジェスターの料理は美味い。
店で料理を出しているんだからプロと言ってもいいんだろう。さすがはプロの味である。
「朝食にしてはなかなかの量じゃないか?」
「朝食って言うよりかはブランチね。今はもう昼の時間よ」
「いつも食事するのは、こんな時間なのか?」
「まぁ、深夜まで仕事してるからね」
夜中心の仕事であった。
カジノだから考えてみれば、それはそうな気がする。
「とりあえずやることとしては、メインの仕事は店の掃除に買い出し、あとは家事を少々くらいかしらね」
まぁ、そんなものかとの気がする。
確かに普通の仕事の場合は夜が休む時間だが、深夜営業の店では昼間の今が休む時間なのであった。
そこまで忙しくないのも当たり前と言えば当たり前だった。
まずは買い出しに行こうと俺はジェスターの後ろに付いていって、カジノの近くの商店街である”カンテカンテラ商店街”を歩いて回った。
商店街では、夕方だけではなくこの時間でも賑わいを見せている。
その場で注文したものを食べることができる出店もでていた。
ざっと見渡して見た限り、今俺がいる王国はなかなかの大きさなのだろうか。
見えた範囲だけでも、結構な量の建物を見ることができる。
童話に出てきそうな見た目の巨大な王城のようなものも見つけることができた。
ジェスターは街の中で、様々な人に話しかけられていた。
ご近所様たちなんだろう。あいさつをしていく。
人間に猫耳が生えているタイプではなくて、歩く猫としか言えない見た目の獣人がいた。
それ以外にも、天使のような羽が生えていたりとする謎の種族たちを色々と見つけることができた。
ジェスターが買い物をした店のひとつに魚屋があった。
ここには、昨日店に来ていた蜥蜴男のうちの1人がいた。
魚屋だったのか。
売られているのは、どれも見たことがないようなものばかりである。
アンコウを5倍大きくして、10倍凶悪にしたような魚も置かれていた......、目が合ってしまった。
ジェスターはいろんな店に入って、どんどんと買い物を進めていく。
慣れたものであった。
本日特売のお買い得品などを上手に選定していく。
ビールなどの大量に一括購入するものは、定期的に一気に運んでくれるサービスがあるらしい。
俺が1人でなんとか持ちきれるくらいの量の買い物であった。
普段は店とを何往復かしているらしいので、かなり楽になったと喜んでくれた。
男冥利に尽きる。
男としては見られてないけれど。
店に戻ると掃除をしたりとして、一連の仕事が終わりつつあった。
最後にカジノとして使う、ギャンブルの道具の手入れをしていく。
昨夜はトランプしか使わなかったのだが、それ以外にもサイコロ、ナイフと色々な道具が揃っていた。
ジェスターの手が止まりつつあるタイミングで、俺はカジノの営業について思っていたことを提案した。
「ジェスター、ゲームの数を増やさないか?」
「ゲーム数を増やす?」
「そうだ、種類もやる回数も増やさないか?俺も今日からディーラーをするよ」
「確かにキンが手伝ってくれるのなら、私1人でやってたときよりもゲームの数は増やせるかもね」
「昨日来た男は追い払ったけど、借金がなくなったわけじゃないだろ。あんなところに借りてる金なんかはさっさと返した方がいいぞ。今後も嫌なトラブルに巻き込まれるかもしれない。その為にも稼がなくちゃ」
「それは、確かにそうできた方がベストだけど。魔法が怖いわよ...」
「確かに、魔法は脅威だな。だけどゲームのやり方次第では、店の被害を防げる」
ジェスターが考えた方法以外にも策はある。
この店でできるかもしれないと思った、俺が考えていることをジェスターに耳打ちをした。
このタイプのギャンブルならば、たとえ魔法を使われたとしても店が損をすることはない。
今夜からでも実践をしてみよう。
「後は俺も料理を覚えるよ。ジェスターほど手のかかった料理は作れないけど、ほら、肉の丸焼きみたいな料理があっただろう。ああゆうタイプのものなら俺でも練習さえすれば作れるようになると思うんだ。ジェスターがディーラーをするたびに料理が止まってるのは勿体無いだろ。俺が一部でも出せるようになればかなり変わるはずなんだ」
2人いるんだから、2人いる分だけの仕事ができるようにしたい。
それ以外にも、新しくできるようになったことをああでもない、こうでもないと話し合っていった。
ジェスターも人が増えたらやりたかったことなどを話していく。
こうして、日は沈んでいき、店がオープンする時間が近づいてくる。
「新生ピエロ&ドラゴン」に向けて、俺たちは第一歩を踏み出すのであった。
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