第30話 眼前には北海道の広大な大地が広がっていた

牛乳飲みてえ、ポテチ食いてえと思った僕は牧場と農場を作ることにした。


「ふむ、牧場と農場か」

「どう?」

「ヒカルが作りたいなら喜んで手伝うに決まっているさ、卵や、ミルク、野菜は生活に彩りをもたせる。賛成だ。ただこれは能力を使わないと難しいかもしれないね」


いちおう、僕も能力を使わないで農場や牧場をつくる方法を考えたのだが、やはり難しいだろう。


まずこの世界に家畜化されていた牛や豚は残っているのだろうか。

それに、じやがいもや、他の野菜はまだこの世界に元の姿のままで残っているのか。今の地球では、多かれ少なかれ生命体にはUEによる影響がある。


完全に元のままとはいかないだろうし、変化した自然界で生きていけているのか。


最も簡単な方法は、僕の能力を使って、じゃがいものような植物を生み出すことだ。牛に関してもそう。だが、あくまでそれは僕の能力が考えたじゃがいものような何かだ。完全にじゃがいもというわけではない。


「いや、でもまだ種類によっては発芽できるか?」


ソーフィヤさんが顎に手をあて、考えている。

あっ、メガネつけてる。

メガネ美人いい、踏まれたい。


「ヒカルは、植物の種の寿命をしっているかい?」


「わからないでござるよ」


「何その口調、まあ、もちろん植物の種類や保存環境によっても違うんだが、もっとも長いのでいえば1000年以上前の種子が発芽したという事例もあるんだ」


「すげえ、平安時代じゃん」


「ただ一年しか種子の発芽期間がないものある、例えば玉ねぎや、人参、ニラなんかだね、ナスや、大根、トマト、白菜なんかは3年は持つはずだからまだホームセンターの野菜の種からでも発芽するかも知れない」


「おお、じゃあジャガイモは?」


「私もそこまで詳しいわけじゃないけど、おそらく三年以上は持つはずだ、意外と思うかも知れないけど、ジャガイモはナス科だからね。トマトやナスと一緒だ。ただ」


「ただ?」


「ヒカルはジャガイモの種を見たことあるかい?」


「そういえばないかも」


「そう、一般的にジャガイモは種子ではなく、種芋から栽培する。もちろんこれには理由があって種から作ると大きくなるのに時間がかかるんだ、何世代も繰り返してやっとあの手のひらサイズになる」


「へー、あっということは」


「他の植物みたいにホームセンターの種から育てるという方法は使えない」


「あーじゃあどうしよう」


「そうだね、もしかすると放置でも生き残っている種があれば」


んーとソーフィヤさんも僕も頭を悩ます。

そして数分後。


「ソーフィヤさん北海道行かない?」


「どうして北海道?」


「だって美味しいじゃがいもや牛乳って言ったら北海道じゃん?」


そんなノリで僕たちは北海道に旅行することに決めた。

たしか、北海道のじゃがいもと牛乳の生産量は日本一だったはず。


もしかするとまだ自然界に適応し残っている種もあるかもしれない、すくなくとも闇雲に探すよりは北海道に行くほうが1番可能性が高いはずだ。


牛とジャガイモが一緒に入手できる、一石二鳥である。


北海道。幼い頃に一度だけ行ったことがある。

カニ美味しかったなあ。


やべ、蟹も食べたくなってきた。


僕の能力があれば、一匹見つかった時点で何匹でも生産可能だ。


カニ食べてえ!!。









眼前には北海道の広大な大地が広がっていた。


というわけ思い立ったららすぐ、僕たちは北海道に来ていた。

空飛んで。マッハの速度で。


「結構すぐ付いたね」


「うん……なんか翼が凝っ……」


僕は翼をコキコキと動かした。

む、少し無理をさせすぎたか。


僕は視線を前に移動させる。


そこには、だだったぴろい野原が広がっていた。


「あっキツネ」


「キツネだね」


「でもソーフィヤさん、なんかあのキツネ」


「大きいね、しかも尻尾が三本ある」


あれは、アカギツネ系のキツネかなとソーフィヤさんは呟いて視線を周りに移した。


僕がそのキツネをみて思ったのは一つ。


なんかデブい。


キツネってあんなんだっけっと思うくらいデブい。


中年のおっさんみたいな腹をしているキツネだ。

ついでなぜか尻尾も3本あるし。

いや、よく見てみると、一本の尻尾の途中から2本の尻尾がでてる。

つまり本数自体が変わっていないということか。


うーんなぞ進化。


だめだ、UEによる進化をまとも考えたら頭がおかしくなる。

変な進化したデブキツネは気にしないでおこう。

本題に行かねば。


「ヒカル、あのソナーのような能力使える?」


「うん」


「その力ってジャガイモを他の植物や生き物と区別できるの?」


「yes,yes」


そして僕は”声”の力を使った。

範囲は北海道すべてを満たすくらいだ。








5時間後。


「結構ジャガイモはあったね」


「うん、ただ牛はなしかあ」


結論から言おう。

じゃいもという種自体はまだまだ生き残っていた。


大繁殖していたくらいだ。


だけど、牛はまったく、本当に一匹残らず生息していなかった。


北海道にである。


「まさか牛が絶滅するとは」


「UEの変化によってなのか、他の生命体に食べつくされたか。おそらくUEによってだろうね、さすがに後者の場合、一匹残らずというのは考えにくい」


「まじかー、これからはもう牛肉食べられないのかなあ」


「どうだろうね、牛は世界中にいる。UEによる影響が全世界共通なのか、ここ北海道だけの現象なのか、難しいところだ」


と、そんなわけで僕たちはジャガイモを入手した。

あとは、これを僕の能力で、ゲノムを編集し、すぐに畑にできるような種にする。


大きく、美味しく、病気にも強い種に。UEによる変化した性質は取り除いて。


なので、この種芋となったジャガイモを畑に植えれば、普通に美味しいジャガイモができるはずだ。


明日植えれば、三ヶ月後には美味しいジャガイモが食べれはず。


まあ、本気をだせば、植えて明日、即収穫できるジャガイモも作れるのであるが、ソーフィヤさんがそれはやめたほうがいいんじゃないかと言ったのでやめた。


あまりに元来の性質から外れてしまうと、どんな進化を遂げるのかわからないからね。もしかするとその進化ジャガイモが一年後には地球の大地すべてを覆うようになっているかもしれないとのことだった。


ジャガイモによる地球征服を恐れた僕は進化ジャガイモを作るのをやめた。

だからあくまで、このゲノム編集したジャガイモが現実の技術で作れるものだ。

突然変異という自然界でも起こりうるジャガイモ。


肉じゃが、じゃがバター……は牛いないからきついか、他にはコロッケ、ポテトサラダ、ポテトフライ、そしてポテイトチップス。


夢がひろがーる。


だけどやっぱり牛が手に入らなかったというのがきつい。

バターや、ミルク、生クリームいろんな料理で使用するのに。


「んー」


ソーフィヤさんは、顎にてをあって考えるポーズをしている。

可愛い。

そして顔をあげた。


あっ、なにか思いついたようだ。


「ヤギで代用するのはどうかな?」


「ヤギ?」


「そうヤギ、やぎの肉は食べれるし、ミルクも飲めるからね、それにヤギ、ヤギに近い種なら家の近くにいたはずだよ、角が剣みたいになってたけど」


「ヤギ肉……美味そう」


というわけで牛はヤギで代用することになった。

ヤギって美味しいのかなあ。

ソーフィヤさんに言わせれば、まあまあらしい。


というわけでこれで僕たちの北海道旅行は幕を閉じた。


あとついでに、北海道の海でカニもたくさんとってきました。

絶滅してなくてよかった、本当によかった。


今日はカニ鍋ー。カニカニカニ。


明日から本格的に農場と牧場制作の開始だ。

楽しみだなあ。


今日の日記

『カニ美味えええええええええええええええ』












深夜、ベッドで寝ているヒカルの顔を薄くソーフィヤは見つめていた。

ヒカルの顔を見ていると自然と微笑んでしまう。


(私の……)


ヒカルの髪をあげ頭を撫でる。


窓は開きっぱなしで、風がカーテンをなびかせる。

静かでいい夜だとソーフィヤは思った。


そして数分後、ソーフィヤはヒカルの腕に抱きつきながら深い眠りの世界に入っていった。





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