第29話 アメリカにありそうな一軒家
今日、自分はおかしい。
ソフィーヤは思った。
別に身体に異常があるわけではない。
それは感覚でわかる。
だと言うのに、何かがおかしい。
ソ―フィヤはまだ丸太を組んだだけの家のベランダから、外をじっとみていた。
(ヒカル……)
視線の先には一人の少年と巨大なゴールデンレトリバーがいた。
更地になった平場で一人と一匹は遊んでいて随分と仲が良さそうだ。
信頼し、信頼し合う関係。あれが家族というものだろうとソ―フィヤは思った。
それをみてソ―フィヤの胸のどこかがちくっと傷んだ。
私は何を考えているのだろうとソ―フィヤは自分を分析する。
ヒカル……。自分にとって1番大切な家族、少なくとも自分はそう思っている。
自分をあの場所から救いだしてくれた存在。
宇宙に取り残された牢獄のような場所から。
(嫉妬しているのか?私は犬に……)
「……」
こうしてみると、本当に普通の少年にしか見えない。
だが、その身には信じられない力が宿っている。
生命を自由自在に創り出し、触れるだけで生命を変質させる。
まるで神のような力。
「……」
もしヒカルがNOAHに来なかったら自分はどうしていただろう?。
……そんなの考えるまでもない。
十中八九、そう遠くないうちに自殺していただろう。
人間は社会的な生き物であり、孤独が好きであっても、永遠に孤独というのは耐えきれないものだ。人は一人では生きていけない。
地上に降りた今すら自分はヒカルと離れ離れになることは考えられない。
ずっと一緒にいたいと思ってしまう。
だけど、ヒカルにとって自分は?。
(ヒカルは、……きっと私がいなくてもなんだかんだ楽しく暮らしていただろうな)
だってサンがいる。
人であるかどうかなど関係ない。
大切なのは心であり、関係だ。
「……」
……。
宇宙にいたときは
自分とヒカル、二人だけの世界だったのにな……。
不意にそんな言葉が浮かんだ。
ソーフィヤとヒカルが地上に帰還してから三日目の朝。
それはデパートに行く朝のこと。
*
三週間後。
僕とソーフィヤさんの目の前には、立派な家が立っていた。
なんというのだろう。アメリカにありそうな一軒家とでも言えばいいのだろうか。サッカーコート2個ほどの広い分の土地で、周りは頑丈な柵に覆われている。
そして庭にはプールと貯水タンクがあり、家のすぐ横にはサン用の巨大な犬小屋がある。
「完成したか……」
「しましたね」
作業着姿のソーフィヤさんが安堵のため息を付いていた。
あのデパートでの一件から3週間、僕たちは家を完成させた。手作りのセルフハウスである。
作った手順はシンプル。
僕がゴーレム戦隊をまた10体増やし、ソーフィヤさんの指示の元、家を作った。
雨にも風にも、怪獣にも強い家、しかも電気完備のゲームし放題のマイハウスである。
電気は太陽光パネルと、風車と、発電機によるもので賄っている。もう足りないということはなく、有り余っているくらいだ。
水は貯水タンクから引いており、一度煮沸消毒してから利用している。
外壁はすべてコンクリの二重構造になっており、周囲には五メートルの柵がある。
そして、柵の前には15メートル間隔で、戦闘用兼大工系ゴーレムが置かれている。
理由はもちろん家をパニック映画にでくるような怪獣たちから守るためである。
そして家を新築すると同時に、ゴーレム達に新たな能力を付け加えた。
今までのゴーレム達の特出した能力は、空間把握能力がすごく力持ちというものだったが、僕はこのゴーレム達に新たに自己修復と光合成能力を付け加えた。
自己修復機能は、日々家を守るゴーレムたちが自分で再生できるようにするため。
そして光合成能力というのは、普通に葉緑体をゴーレムの細胞に付け加えた。ゴーレムたちはその力故か割と大食漢だ。食べるの大変そうだなあと思いつけた。
なので、今の計15体のゴーレムはずべて頭から足まで緑色だ。なんか前より可愛い気がする。
僕は新築した家と、進化したゴーレム戦隊を見て頷いた。
割と完璧なのではないかと思う。
屋根があって、お風呂入れて、ゲームできる。
それでは中をゆっくり見てみよう。
まず玄関。
黒い扉の大きな玄関だ。
鍵を差し込み、ゆっくりと扉を開ける。
靴置き場。
ソーフィヤさんは外国人だけど、ここは日本のスタイルに合わせて貰った。
靴を脱ぎ中に入る。
そしてまず目に入ったのは、大きなリビングだ。
100インチの大型テレビがまず目に入った。
三年前だったら、何年バイトしないといけないんだよという値段の4kテレビである。
もちろん放送は映らないので、もっぱらDVDなどで映画みる用とテレビゲーム用だ。
大画面でやるクリハンはいい……。
そしてテレビから2メートル離れた場所に、ガラステーブルと、そこからまた少し離れた場所に巨大なソファーがあった。
とても大きなソファーである。色は水色。座った感想は、「めっちゃふかふかしてるー、最高ー」である。
そしてリビングの奥はキッチンだ。
キッチンだけで僕の昔のアパートの部屋くらいある。冷蔵庫、電子レンジ、トースター、炊飯器なと普通の家庭にあるものはだいたい揃っている。
そしてキッチンとリビングの更に奥にいくと、そこには図書室と、お風呂場とトイレがある。
僕はすぐ近くの扉を開けた。
そこにあったのは本、本、本ありったけの本である。
漫画喫茶かっていうかくらい集められた本達。
左側は僕が集めた漫画コーナーである。有名な漫画や小説などは大体ある。
そして右側はソーフィヤさんが集めた専門書コーナーだ。なんか難しそうな名前がたくさん並んでいる。
そこらの本屋にある本は大体あるので、もう本屋に行くなるのではないだろうか。
ちなみに家具を集めるのは僕の担当だった。
そうこの家具たちは、日本中の家電量販店、家具屋から集められたエリートな家具なのである。
100万超えるのは当たり前てきな超エリート家具。
もう使う人はいないのだ、生きてる人が使わねば(使命感)。
正直言おう。
天国である。
ゲームし放題、漫画読み放題、そして人間らしい発展した生活、そしてソーフィヤさん。
一言で言うなら「幸せ〜」という感じである。
僕もう家からでない。ずっとゲームして暮らすんだ。
*
そんな感じで家が完成して一週間。
僕とソーフィヤさんとサンは新たな生活を謳歌していた。
クーラーががんがん効き、ふかふかのソファに寝転がりながらクリハンをする幸せ。
ソーフィヤさんは日向の当たる場所で、壁に保たれながら読書している。
サンは、新バス5台ほど入れるだろう新たな小屋で一休みである。
サンの姿がリビングからでも見れるようにしたのだ。
匠のこだわり(適当)。
100インチの大画面テレビの中では、赤いドラゴンが空を飛んでいた。
僕はソファーに一層もたれかかる。
幸せ、ここがエデンか。
「ヒカル、お昼に何食べたい?」
ソーフィヤさんが聞いてくる。
「お肉食べたいです、あと」
「あと?」
「ポテチ食べてえ、ソーフィヤさんは?」
「ポテチ?、私はなんでもいいよ、ヒカルの食べたいもので」
ポテチ食いたいけど、もちろんそんなものはない。
おかし類は完全に3年間で消え去った。
というか残っててても賞味期限切れだろうけど。
それにしてもポテチ食いてえ。
ここで食べれるものといえば、肉か魚か、近くの山で取れる山菜かである。
さすがに飽きてきた。
と、僕の脳細胞がキランと名案を生み出した。
やばい、いいことを思いついたかも知れない。
「ソーフィヤさん!」
「きゃあ!」
僕はソーフィヤさんに詰め寄った。
「農場と牧場を作ろう!」
僕はソーフィヤさんにそう提案した。
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