第4話 Unknown Energy
動物の鳴き声と風の音しかしない街中を一つの自転車が駆ける。
街中には“動かない人“とそれを食べる犬や猫。
首輪がついているのもいるがもはやすべて野良だ。
「ってかやっぱまだ慣れん」
僕は独り言をつぶやく。悪臭にまだ鼻が慣れない。
“動かない人“を見てもどうじなくなったがこの悪臭はまだキツかった。
水と電気、それとネットが止まってから早3日。
僕は外を彷徨っていた。
それはなぜか。
簡単に言えばトイレが流れないので部屋にいられなくなった。
最悪である。家の周りでしてもよかったがなんとなく嫌で家を出てきたのだ。
なので今、バックパックを背負いながら自転車で街を徘徊中である。
バックパックの中には、近所のコンビニから拝借した水と食料、あとホームセンターから拝借したテントと簡易トイレと双眼鏡と懐中電灯。それと携帯ゲーム機と太陽光モバイルバッテリー。それと適当に役に立ちそうなもの。
そこら中に死体“があることを除けばそれなりに快適な暮らしである。
今はまだ。
わかっている。この暮らしが長く続かないことは。
今に街中に狼や熊、野犬が徘徊するようになり、死体はもっと悪臭を放ち、コンビニやスーパーからはカップラーメンやクッキー以外食べられなくだろう。
実際僕の“能力“は野生動物が街に入りかけているのを察知していた。
なので早急に移住可能な家を見つける必要があるのだ。
基本的な条件は、太陽光パネルがあり、野犬などから身を守れる場所だ。
まあ太陽光発電は、べつに発電機があればいいかなとも思ったが選択肢はあればあるだけ良いので、太陽光発電と発電機を併用することにした。
水分は、雨水を集めようかなと思ったが、それだけだと数日雨がふらなかったら怪しいので近くに川があれば最善か。
でも川の近くは動物たちが集まるだろうか。うーん。少し予想できない、やってみないとわからない。
そのほかには農園が造れるくらいの土地があれば最高。
あ、あと近くに図書館やデパートがあれば文句なし。
「あるかねえ、そんなとこ」
とりあえず川の近くを彷徨っているが目的の家は見当たらない。
まずここはそれなり都会なので太陽光発電設備があるような豪華な家の近くで農業できるくらいの土地がある場所なんてあるのか?
「今日はもう無理かな……」
日もくれ始めてそろそろ夜になる。
夜は危険だ。暗い中動物に遭遇したらあぶない。
まあ゛能力゛があるので近くに動物がきたらすぐわかるのでそう心配はしてないが、念には念をである。
「もしかしたら宇宙人いるかもしれないし……」
日本海に落ちたらしい隕石。その日に人類が滅亡したのだ。
何が居てもふしぎではない。
僕の゛能力゛はこの事態はあの隕石のせいだと言っている。
直感とも言えないものだが。
それにあの隕石が落ちてから周囲で゛奇妙な違和感゛を感じるようになってから数日。一つだけわかったことがある。
僕の゛能力゛は日に日に進化している。
なんとなくだがわかる。
1日にずっと本気で゛能力゛を使っている。するとある程度限界が見えてくるのだが、使っていくうちにまるで筋肉の様に少しずつ範囲が広くなっている。
人が死に文明崩壊する前は、本気で能力を使うことがなかったから気が付かなかった。
それと、この周りを満たす゛奇妙な違和感゛。これは何かのエネルギー体であり、これも能力進化に関与してる。
とりあえず゛奇妙な違和感゛とずっと呼ぶのもなんなのでこの゛奇妙な違和感゛をUEと呼ぶことにする。ちなみにUnknown Energyの略である。
これに人間という種は耐えきれなくて死んだのだ。
僕は知能が生死に関係してるんじゃないかと思ってたりする。
そして驚くべきことに僕の身体はそのUEを吸収し始めていた。
まるで肺のように。新たな臓器が作られている。
そしてUEを吸収するたびに゛能力゛も強くなっている。
この2つのおかげで1日1日過ぎるたびにに能力が進化しているのがわかる。
僕はほんとになんなのだろうか。
実は母のお腹に寄生した宇宙人の子供?それとも異世界人?。実は地底人だったりして。
謎である。
このままいけば゛周りの生き物の心の声がなんとなくわかる゛からもっと色んなことができるようになりそうだ。そんな予感がする。
現に昨日、猫に触れると、いつもの心の声とは違う情報が頭に少しだけ入ってきていた。生物の体を構成する情報。DNAてきな何か。
ほんとわからないことだらけである。
とそんな風に最近わかったことを考察していると、中くらいの大きさの本屋が見えてきた。
「おっ、◯◯堂」
有名な本屋だ。
入口近くに自転車を止める。
今日はここを寝床にすることを決めて中に入る。
中には店員の死体と無数の棚があった。
お客さんの死体はなさそうだ。閉店後だったらしい。
入り口から一番近くの本棚に行くと、読みたいと思っていた本がたくさん積まれていた。
「漫画読み放題ひゃっほい!」
僕はなんだかんだこの崩壊した世界を堪能していた。
店員の死体に新聞紙を広げて重ねる。
やはり悪臭がすごい。
顔をしかめながら新聞紙をかぶせてその匂いを逃さないように軽く漫画で重しをする。
「なむ」
手を合わせたあと、入り口にあるていど空間があったのでそこにテントを設置することにした。
室内でテント。不思議な感覚である。
テント設置を数分で終わらせ中にはいる。
僕がぎりぎり寝れるくらいの大きさのテントだ。
あまり大きいと持ち運ぶの大変だし。
それに実は結構狭いところ好きだったりする。
「ごはんたべるか……」
バックパックの中から食料と水を取り出す。
「今日のご飯~」
食料は、カロリーミートと飛ばれるクッキーとポテトチップス。
水は天然水のペットボトルだ。
袋から取り出し食べる。まずくはないが、味気ない。それに口の中が乾燥する。
水が欲しくなりペットボトルをあけて飲む。
数分で本日分は食べ終わり、僕テントから出た。
「本日の楽しみ~」
とりあえず、棚にある読みたかった本を全部とりテントに持っていく。
テントの近くに漫画の山を作る。
とりあえず最近話題になっていたコミックを手にとった。
地面におけるタイプの懐中電灯をテントの中に置く。
それなりの光量があり漫画を読むには困らなそうだ。
ただひたらすらにページをめくる。
「ふふっこれ面白」
話題になっていただけはある。
無我夢中で読む。
世界がこんなになってからは数少ない娯楽だ。
10巻くらいあるのでそれなりしに時間が潰せそうだ。
3時間ほどでそれは読み終わった。
思い出したように周りに耳を傾ける。
静かだ。風の音しかしない。
もうとっくに夜になっており、懐中電灯の光しかない。
子供の頃、夜一人で留守番していた時を思い出す。
なんてことない留守番だったのに無性に怖かったあの頃。
あのときの感覚が蘇っているようだ。
孤独。
「あーそんなこと考えるなって」
首を振る。こんなこと思い出しても良いことなんてないのだ。
新しい漫画に手を出す。
今度は学園ものだ。
なんてことない日常ものだ。
山も谷もないので笑えるかと思ったのだ。
「やば笑える」
薄暗い本屋の中に僕の声が響く。
独り言だ。いや、もう独り言しかできないのか……。
そんなことを考えながらもページをめくる。
漫画はとても面白かった。
「フフッ」
特に主人公と友達の会話が。
ギャグセン高い。
「フッ……っ」
いつのまにか漫画のページの一部が丸く濡れていた。
雫が溢れこちたように。
視界がぼやけてるのに今気づいた。
目に手を当てる。
涙が流れている。
「エ、あー泣いてるし」
クソ、青春ものの漫画を読んでたら学校でも日々を思い出して泣いてしまった。
胸が痛い。辛い。寂しい。嫌だ。一人は辛い。死にたい。なんで僕だけ生き残ったのだろう。
そんな感情が心の奥底から溢れる。
これ以上、続きを読む気分になれず懐中電灯の明かりを消してテントの中に横になった。
僕は怯えるように身体を丸ませながら目を閉じた。
僕の精神はさらに摩耗し始めていた。
外が明るい。朝になったようだ。
スマホを見ると時刻は7:45だった。ちゃんと寝れたらしい。
ゆっくりとテントを出る。
テントの周りには昨日読んでいた漫画が散乱していた。
昨日は薄暗くて良く見えなかった店内も朝日でよく見えるようになっている。
新聞におおわれた店員の死体。あときれい並んでる本棚。文房具も売っていて、レジの前には知恵の輪やルービックキューブが売られてある。
とりあえず外にでた。
自転車が壁にもたれていた。
ふーっと深呼吸をする。
朝だ。そう全身が感じる。
「今日はどうしよっかな」
家を探すのは確定事項だったが、問題はどこに行くかである。
この街の中央を横断する川。
またこの近くを彷徨うことにした。
店内に戻って出ていく準備をする。
数分で準備が終わりバックパックを背負って本屋から出る。
壁にもたれていた自転車のハンドルに手を掛けたところで僕は思った。
自転車漕ぐのめんどくせえと。
「というか僕はなんで自転車漕いでんだ?」
いつもの習慣でつい、自転車で家を探していたがよくよく考えたら自転車の必要性はまったくないのだ。
だってそこら中に移動手段はあるし。
本屋を出て適当に歩く。
すると無数の路駐している車があった。
中を覗くと運転席に死体がある。
「これには乗れそうにないな」
次々と道沿いを歩き路駐している車を覗いていく。
すると工事現場で使われるような小さなバス?のようなものがあった。作業服を着た運転手らしい男はその車の近くで横になって死んでいた。作業用車だ。
男のポッケを探る。死体に触るのも慣れたものだ。
漢のポッケの中には鍵があった。
ドアを開けて中を見る。
この車はいいかもしれない。乗り方を選ばなかったら成人男性が9人くらい乗れそうだ。
内装はそこまできれいではなかったが掃除すればいい、後ろのシートを倒せているので荷物もたくさん載せられる。
「これで車中泊とかいいかも」
思わぬ掘り出し物だと思う。
とりあえず鍵を差し込み、ゆっくりと回す。
するとチチチチと音がなりエンジンがかかった。
「おお、かかった!!」
バッテリーが上がってなくてよかったと思う。
ライトつけっぱだとすぐ乗れなくなるということを僕は知っていた。
もしこの運転手が外に出ず、中でハザードランプとライトをつけたまま休んでいたら今この車は乗れなかっただろう。
昔、健の先輩の車に乗せてもらったときトラブルがあったのだ。
それで学んだ。本当にラッキーである。
「ええとこれがガソリンのやつで、これがメーターかな」
ハンドルの隙間から見えるアイコンと数字。
「で、ええとこっちがドライブとかニュートラル?だっけ」
シートとシートの間にあるにあるレバー。これできっと車を制御するのだ。
「で、こっちがサイドレバー」
坂道のときとかにやるやつと健の先輩が教えてくれたことを思いだす。
ちなみに先輩の運転はめちゃくちゃ下手だった。
車を運転するのは何もかも初めてなので緊張する。
無免許である。崩壊前ならすぐ警察に捕まっていただろうそれ。
はやく捕まえてくれよと僕は複雑な気持ちになった。
「うをおおお、すげえー、車すげえ!!」
運転にも少しずつ慣れてきた。
すごい速さで道を進んでいく。
超絶快適である。
もはや家を探すという目的と朝食すら忘れてドライブしていた。
気分はゲームの中で車を動かしているようだ。
たってもう標識などが意味ないのだ。おそらく免許覚えるときに覚えるそれはもうこの世界では必要なくなってしまった。なので好き勝手に車を動かす。
楽しい。
すごい楽しい。
誰もいない道を高速で駆け抜ける。
とりあえず僕は一日中車を乗り回した。
これなら生存者探しと家探しも楽になるし夜に拠点を作るひつようもない。
ほんとに移動手段に車を選んだのは良い案だった気がする。
今日は車で遊び明日から本格的に探すことにした。
僕は明日から本気出す!!。
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