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遺書
貴方がこれを読んでいる時、私は既にこの世を去っているでしょうね——
なんて古くさい言葉は私が好む訳もないけど、結局遺書の冒頭に相応しい言葉なんてそう易々と出てくるほど私の頭は賢く出来てないよ。君も知ってるんじゃない?
本当は遺書を君に遺すかどうか、ずっと迷ってたんだ。けど結局遺すことにしたの。
だって遺書はきっといちばん死に近いものなんだろうけど、同時に生者にとっても切っても切り離せない鎖みたいなものだと思うからね。私がこれを書くことで君に少しでも長く覚えていてもらおうと思ったんだよ。君は私のことを最後まで好きにならないでいてくれたから、すぐ忘れるだろうし。私は全く忘れて欲しくはないんだけども。簡単に言ってしまえば私はこれを遺すことで君を束縛しようとしている。君を少しでも私という存在に縛り付けたいんだ。愛とは醜い独占欲——
なんでどっかの偉い人が言ってたような気がするけど全くその通りだね。
きっと君は表情のひとつも変えないで「わがままだ」って言うだろうね。大丈夫、そんな君を私はちゃんと好きだよ 。残念だけど、今となってはそれを隣で聞くことも叶わないけど。ほんと、死ぬってのはとても虚しいことだよ。あぁ、これを書いている時は別に生きることを諦めた訳じゃないんだよ?ただ、万が一ってのがあるし。まぁもう万が一を考える時点で、どこが生きることを諦めてるのかもしれないけどね。
もし、君がこれを読んで悲しんでくれたりしたら私は万々歳だ。君は私のこと好きじゃないけど、私は君のことが大好きだから。
私はここから、君との出会いから「終わり」までの私の想いを日記のように書こうと思ってる。なぜかって?自己満だよ。生きることを諦めてないといっても私は確実に人より早いスピードで死に向かって歩いてる。そんな私は気持ちの整理のひとつくらいしたいわけさ。君もいつかわかるよ。その時がおばあちゃんであることを祈るけど。
それじゃあ、書かせてもらうね。
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