第2話少年は少女と出会った

家へ帰っている。


何度繰り返した作業だろう毎日毎日、よく飽きないものだ。


いや飽きている考えないようにしているだけなのだ。


いつもの帰り道いつものメンバーいつものアスファルトいつもの街頭、わざと歩幅をずらしてみる自分は自分の意志で行動していることを確認するように。


代わり映えしない毎日は少しずつ心を殺し時間を喰いつぶしていく、記憶は劣化しつまらないものが上書きされていく。変化がほしい輝く時間が夢が...




そんなことを考えていても耳に届くのは大きな友の声


うんざりだ。何度も思った。


でも手放したからと言って身の回りが静かになるだけ本質は何も変わらないのだ。


変えるべきは環境ではなく己自身なのだ。


自問自答もむなしく時間は刻々と残酷に過ぎていく、たぶんこれが大人になる通過儀礼なのだろう




気づけばもう一人で歩いていた


皆、それぞれの帰路につき時刻は20時を回っていた。


家に帰りよく寝て、また同じ日を繰り返そう。毎日そう思っている。


そうして1歩また1歩と歩みを進めていく。














『ようこそ』


少女の声だハッキリと聞こえた。


だが自分が現在いるのはなんの変哲もないいつもの最後の街灯下。


いつもどうりの道を曲がり、いつもどうりの坂を上った。


ただおかしな点があるとしたら。




身体が動いていない


いや自分がいない


意識は鮮明なの視点を動かすこともままならず、ましては身体がないのだ。


いつもは意識外に捨ててしまっている風の音も車の音も何も聞こえない。


静寂に包まれ止まった世界に心だけ取り残されている。


怖い、という感情は不思議とないわけではないが自分は不安に駆られていた、これは良くある【お話】どこにでもありふれた【お話】の世界なのだ。




人は期待してしまうのだろう


ここから始まる女の子とのイチャイチャ生活を不満に満ちた現世を捨て充実した異世界へ。


能天気なおとぎ話世界の主人公の様にはなれない、そんな意味ではあいつらは別格なのかもしれない。


いきなり静寂の世界に意識だけ投げ捨てられよくもまぁそんなお花畑になれるものだ、自分は怖くて仕方がない、これは脳のバグでこのまま一生1人身動きも取れないまま死ぬまで考え続ければならないのか。


それとも人体実験で俺の精神が崩壊するのを待っているのか。


可能性はいくらでもあるだから怖くて仕方がない。


そもそも…


『もぉ!忘れないでよ!』


そうだ忘れていたこの幻聴はなんだ


気持ち悪い


俺もやっぱり頭はお花畑やろうだったのだろうか。


『筒抜けなんですけど…お花畑は好きだけど自虐的な人は苦手かな』




???




俺の唯一の自由である意識さえ干渉されるのか…もう好き実験してくれ反抗などしたくてもできないのだから。


『そんなひどいことしないよ!君を選んだんだ!数多の異世界住人の中から、君を!』


ますますわけがわからない


平凡な高校生


平凡な人生


平凡な能力


俺には何一つ選ばれる要素などない。


ついに俺の脳は自己防衛のために俺を主人公とした物語をスタートさせたらしい、気持ち悪い。


『もー物分かり悪いなー。


しょうがない後は適当に連れて行って現地説明するしかないねー


いきなりだし君の意見もなにも聞いてあげられなくてごめん。』




『君がとっても必要なんだ』






誰かを必死に求めたことはない


恥ずかしいじゃないか


相手に気持ちを伝えて断られたとき何が残る。


清々しさなどなく、そこにあるのは虚無。


当たって砕けろなどというがそんなのは周りの人間が面白おかしくするために考えたもっともな方便なのだ。くだらない。




でも人に初めて必要とされた時、


体中が重くなり、胸の奥が少し握りつぶされた感覚がした。


それを嬉しいと形容するのかはわからない、でももし声が出せたのなら


俺はどんな言葉を話したのだろう。


言葉一つで人はこうも揺れ動いてしまうのか、あまりにも単純で嫌気がさすほどに

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