故に
赤ずきん
第1話ひねくれ少年
...思っていたより世界は狭く、とても生きやすい。
1人で歩いている。何も考えちゃいない。
家までは残り数十メートル、最後の街頭をくぐり歩いていた蟻を踏み殺そうとした。
右足は蟻を避け少しぎこちなく着地した、それを補うかのように身体は勝手にバランスをとる。
可哀そうと思ったわけでもない。
誰かに見られた可能性を考慮したわけでもない。
何もかもが下らないだけである。
殺そうと思う感情も憐れむ感情も所詮ただの思い付きだ
そんな感情に付き合う自分を後ろにいる自分が見て、見られている自分は途端に恥ずかしくなる
家のドアを開け適度な声を出す。
『ただいま』
カーテンを閉め忘れたせいか、朝日が部屋に差し込んできた。
静かな朝
バイクの音が遠くで聞こえる
また代わり映えしない日常が始まる。
教室に入り、自分の席に座る。
『おはよー』
隣の席の女子生徒にあいさつをされた。
『はよー』
適当に返事をする。
鞄を整理してHRまで時間があるのを確認しいつものグループに向かう
どこの学校にも必ずあり、仲のいい者同士で集まりくだらない世間話を交わし時には誰かの悪口で盛り上がったりする、あのくだらないグループだ。
本気で笑う話などほぼないに等しく作られた笑いを繰り返すだけ。それでもその空間は居心地がいい、どこかに属しているしているというのは悪い気分はしない。
仲間なんてこんなもんだ難しく考える必要はない
本気で笑いあえる友達がいい?
本音を言い合える友達がいい?
そんなことはない、だってそうだろ本気でそう思ってるやつはそもそも友達を選んだりはしない。本気で笑いあえないから友達じゃない、本音を言い合えないから友達じゃない、そんなことを考えてるやつめんどくさいじゃん。
教室の一番後ろ、いつもの位置みんないる。
中心メンバーがピエロのメンバーで笑っている最中であった。
教室中に笑い声が響き、気になりこちらを見ている生徒、迷惑そうに他の生徒と怪訝な顔をしながら悪口をいうもの
これだ代わり映えしない日常の始まりだ。
僕は開口一番
『みんな俺に会いたかったかぁ??笑』
みんなこちらを見てわざと困り顔をしながら
『しね笑』
成功。
授業中は隣の女子に話しかける
『これわかんない』
『はぁ?馬鹿じゃないの?笑』
『早く教えろや笑』
『めんどいー笑』
『ひどー萎えたわ』
『勝手にしなよ笑』
『あーも悲しいから泣くわ笑』
『わかったわかった笑』
授業中の暇はこうやってつぶす。
高校生なんてこんなもんだ、最初は恥ずかしいから断るでも【相手のわがままに付き合ってあげてる】という理由を与えてあげるだけで途端に制限はゆるくなる。
だってしょうがないじゃん。相手がわがままなんだし。
自分悪くないもん。
仲良くしたくないけど君が仲良くしたいなら...まぁ考えてあげなくもないよ?
何事にも理由は必要だ
理由とは自己を守る重要なパーツ言い訳の時に便利だろ?
俺がみんなのなりたくない理由になってあげた途端この狭い世界の中で上手く歯車が回りだす。
敵の敵は味方っていうだろ。
こうして日常が出来上がっていく。
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