第3話異世界に降りた少年
『で、ここどこ?』
ため息混じりにやっと出せた自分の声を感じ取り少し安堵する。
『ここはね〜そうだな〜夢の世界かなぁ?』
『は?』
ここはキツめに返すのが正しい
下心みえみえのヒロインのために何ていうクサい感情はいらない。
そんなの常識的に考えて好きになるわけがない、都合のいい駒になるだけ。
『ごめんごめん笑
ちゃんと教えるべきだね!ここはみんなの【想い】が力に代わる場所!ね、君たちからすると夢みたいでしょ?笑』
『いや、普通に意味わからんけど』
『えー!わかりやすいよ!』
つめたいー!ブーブー!と、すこし不機嫌そうな演技をしている
『名前はなんていうの』
『あっまだだったね、ごめんごめん』
彼女はシロそう名乗った。
あたりを見回す。
眼前に広がるのは広大な平原、奥には大きな山脈も見える左方には大きな森。
ここはどうやら俺の住んでた世界とは少し違うようだ。考えなきゃいけないことは多々あるが最初に聞くべきことは1つ。
『何で僕を選んだの?』
冗談交じりの口調で恥ずかしげも無くできるだけ自然に聞いた。
彼女は言う、
『君が必要だから』
さっきまでヘラヘラしていた顔がすこしだけ真剣味を帯び、決して冗談ではないことを悟らせる。
誰かに本気で求められなことがない人間がいきなりこんな場面に遭遇すると決まって出てくるのは否定の言葉。
自分を卑下することで合理化しようとする。
そんな凡人の反応をしては異世界に招かれた意味がない。
相手の空気にのまれず、あくまでも自分のペースで口調を崩さず質問をする。
『へぇ。どの辺が必要なの?』
真剣な顔はケロッと驚いたような顔に変わる。
『飲み込みが早いね…うーんとそうだなぁ』
彼女は少し考え込んでいる。
先ほどの威勢は何処へやら、本当に必要なのかよとツッコミたくなるほど空気は柔らかなものへとなっていた。
『君がなにをできるかわからない、君がどんな人なのかもわからない、君がなにを考えてるかもわからない』
うーん。と唸っていたかと思ったらぼそぼそと話し始めた。
『実は他の世界に行って人と出会ったのも君が初めてなの...』
はぁ?こいつ頭大丈夫かよ
適当すぎるだろ。選ばれた喜びがなかったわけではなかったから、その分少しガッカリした。この世界では他の世界から人を呼ぶことは隣駅の友達の家に行く感覚なのだろうか。
『なんだよそれ。』
投げやりに言った。
少し感情制御を誤ってしまった、ガキみたいだな気持ち悪い。
『ご、ごめん!でも君を見たとき、どうしても君じゃなきゃいけない気がしたんだ…』
開口一番は偉そうな事を言って、数多の人間から選んだとか言ってたけどその程度かよ。
こいつの必要のさじ加減が全くわからん。
『でもね適当じゃないんだよぉ。私だってそんな理由で選んでいいか不安だったけど、その不安を理由なく否定できるほど確信したんだ。君が必要なんだって!』
『お、おう』
また唐突に真剣になるから言葉に詰まった。
よくもまぁこんな恥ずかしい頭の悪そうなことを言えるもんだ。俺には真似できないね。心の中でフッと笑う、そして疑問が。
『もう僕の心を読んでないの?』
『そんな能力は僕にないよー笑
君をこっちに連れてくるときは身体を持っていけなかったから意識だけそっちに送っててさ!心で会話してたんだよ!』
なるほど。それも十分奇天烈な話だ。
まぁよくわかんないけど大体わかった(?)心が四六時中ずっと心を覗かれてたらたまったもんじゃないからな。
ここでようやくくだらない話題へシフトすることにした。
『で、会った時から気になってたんだけどさ』
『へ?うん?』
『その耳なんなの?』
仲良くなるにはまずは質問だよな。
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