第6話 ザビエル公園 雨は降った
ザビエル公園には高く月がのぼっていた
夜の布地がまるく切り取られ
そこだけ明るく光を放つ
公園には灰色がかった白い像が三体
ウォーキング中の人が一人
観光客のメリーとジャン
通りを挟んだ教会は公園と同じ聖人の名が冠せられ
窓からあたたかな明かりが漏れている
晴れた夜だった
けれどメリーはある雨の日の公園で
傘をさして彼女を待っていたジャンの姿を
思い出してしまう
捨て猫にさしかけるように 心もち
ななめにさした傘の下でタバコを吸っていた
そんな風に男に待たれたことはなかった
夜の公園でぽつんと一人
傘をさして
雨のなか女を待つような
そんな詩人はいなかった
三体の像はザビエルが一番高いところに据えられていて
ぴんと伸ばした指先に満月がかかっていた
彼はいまにも月をつまんで引きずり下ろし
光を地面に撒き散らしそうに見える
それはあたたかいのだろうか
今夜何を食べるのかまだ決めていないけれど
月は満腹の顔をしている
ヤキチ ベルナルド
ザビエルより一段低い台に置かれた
日本人の少年二人の像
ヤキチ ベルナルド
繰り返しながら
スマホの明かりを頼りに
ジャンは説明が書かれた碑を
一心に読んでいる
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