第2-4話 任官

 まずは徹底的な基礎運動。基礎運動と言ってもまさか一朝一夕で身になるわけもないので、これはテストだったんだろう。

 走らされたり、兎跳びや、懸垂など、様々なことをやった。

 銃の扱いも確認された。構える、狙う、撃つを確認し、反乱軍が使用する、帝国軍から奪ったらしい銃器の分解と組み立てもやらされた。

 これがほとんど休みなく、二日間、続いたのだった。

 二日目の夕方、最後にやらされた長距離走が終わって、俺は地面に倒れこんだ。

 教官役の少尉が俺に指示を飛ばし、本部へ行くように命じてくる。従わないわけにはいかない。早く解放されたかった。起き上がり、重い体を進ませる。

 例の建物の二階で、俺はフェス大尉とともに少佐の前に立った。

「君を曹長に任命する」

 少佐は静かな声でそういうと、何かを投げ渡してくる。高重力独特の軌道で、それは俺の手元に収まった。

 曹長の階級章である。

「所属は海兵隊だ。不満かな」

「いえ」

 俺は背筋を伸ばす。

 これで、帝国に有益な情報にもっと接することができそうだ。連中は俺の真意に気づいてすらいない。

 これで俺も帝国軍で佐官かもしれないぞ。

「しかし」

 少佐がかすかに姿勢を正した。

 嫌な予感がする。

「君の力では我々の海兵隊においては、今もまだ足手まといだ」

「……は?」

「もうしばらくは、訓練を続けてくれ。この惑星もこれでなかなか、悪くないのだ」

 どういうことだ?

 訓練?

「フェス大尉、ご苦労だった。もう本部へ戻りたまえ。この若造は、こちらで責任を持つ」

「はっ!」

 事務屋がビシッと敬礼し、部屋を出て行った。

 俺は動けなかった。

「どうしたね? 曹長。青い顔をしているが」

「いえ、その……」

 少佐が微笑む。

「帝国軍とやりあう反乱軍が、帝国軍と同じ軟弱さでは話にならんのさ。君には期待しているよ。下がってよろしい」

 俺はもう何も言えず、重たい腕で敬礼してから、部屋を出た。

 こんなことなら、帝国に送りかえされればよかった……。

 建物の外では、反乱軍の兵士たちが一日の訓練を終え、賑やかに過ごしていた。

 俺、こんなところで、何をしているんだ?

 誰も、答えてくれなかった。



(第2話 了) 

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