君への憧憬

君のお腹は思っていたより冷たかった

なぜだか私はお腹というものは暖かく私を包み込んでくれるものだとばかり思っていたようだ


君の腕は思っていたより細かった

なぜだか私は腕というものはしっかりとしていて誰かを支えるためだけにあるものだとばかり思っていたようだ


君の頬には産毛が生えていた

私はびっくりして思わず自分の頬を触って確かめてみたくなった

頬に毛が生えているなんて思いもしなかった


君の鎖骨には溝ができていた

私はなぞってみたくなる

溝の中に鼻を突っ込んでそのまま全身をひとひねりしたら鎖骨の中に飛び込めるような気がした


君の家は思っていたより汚くて

君の作るご飯は私の舌には合わない

君は靴を揃えない

君はタイピングがすごく遅くて

電気を消して寝ることができない

明日の予定を立てずに眠る

足癖が悪く寝相も悪い

寝言で私の名前を呼び

照れると私の腹を蹴る


私は君への憧憬を捨て

てざわりの君を拾い始めた

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