湯上がり

露天風呂は混浴で

そりゃ一部屋に一つの露天風呂なんだから当然なんだけれど

私たちはお互い時間をずらして入ろうかという話もしたんだけれど

結局一緒に入ることになった 話の流れは覚えていない


服を脱ぐときなんだかすごく怖くなって

君は私の体を見たことがあるけれど

それでも君に見せたくなくなってしまった

いそいそと露天風呂へ向かう君を後目に 私は少し遅れて入った


君は星が綺麗だねと言ったけれど

曇る眼鏡は脱衣所に置いてきて

どれだけ目を細めても空は真っ暗なだけで

君の方が綺麗だよなんて適当なことを言ったら君は照れてしまってなんだか申し訳なくなる


湯から上がって浴衣を着た君の頬は

手は 脚は 耳は 肌は 赤く火照っていて

私は自分の体の冷たさに気づく

私の体から剥がれ落ちた熱は

今はどこで漂っているのか

私はヒモを引っ張り電気を消してもう一つの紐をほどき 考えることをやめた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る