耳が悪いわたし

チェロの音色が鳴っていた

レコードを横で回しているから

その中で誰かが弾いているのだ

虫の声も聞こえないので

わたしはレコードを止めた


音楽が消えて音だけになって

自分の中の音が聞こえてくる

普段は聞こえるはずもないような

わけのわからないきしみのような


耳が悪いわたしは

手をコップの代わりにして

自分の胸に突き立てた


もう片方の手で

隠したいものを隠しながら

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る