第三章 継承
第6話襲撃者
「太郎様、この辺りにいる者どもは全て片付け、報いを受けさせました。お許しいただければ、今すぐ中の侵入者にも、相応の報いを与えてきます。ここの者達と違い、太郎様のお手を煩わせたという報いを。その所業、死を持ってしても
洞窟から出てきた太郎を、片膝をついて出迎える男がいた。
黒装束に身を包み、視線は地面に落としている。おそらく尻尾があるならば、ブンブンと振り回しているに違いない。
ただ、その男の周囲には、凄惨な光景が広がっていた。
おそらく元は四人であったに違いない。しかし、切り刻まれたその姿は、すでに人の形を成していない。躯と成り果てても、無残な姿をさらしていた。
だが、首の部分で切り離された頭部だけは別だった。
まるでそれが土下座を表現しているというように、その顔が地面に押し付けられていた。その顔の部分は、完全に地面にめり込んだ形で。
「中でこの子を連れ去ろうとした三人は、きっとあの世で後悔してるだろうよ。だが、
少女を胸に抱きかかえた太郎。
腕の中で気を失っている事を確かめたのち、その光景をもう一度見つつ、小さく息を吐いていた。
「お言葉ですが、太郎様。この者どもは太郎様の行く手を遮りました。不敬極まりない所業です。その罪は、死を持っても
さも当然という雰囲気で、
それを困った様子で見る太郎。だが、
「
半ばあきらめの表情で、太郎は
「はっ! この
全身にやる気をたぎらせた
「いや、影に徹しろ。俺はそれ以上望んでいない。逃げた犬神の者にも、追っている
有無を言わせぬ迫力で、太郎は
その言葉がよほど響いたのだろう。
互いに見つめる太郎と
だが、それも
「仰せのままに! 不肖、この
「よし、行け!」
太郎のその言葉を聞くや否や、
その行方を見守るように、太郎はその顔を山に向ける。
「はたして、どれほどの者達が逃げてくれたか……。
再び、視線を少女に戻し、太郎は小さく息を吐く。
「まあ、考えても仕方ないことだな。この俺に託された、この子の命とその先の世。だが、この俺の命もそう長くはないだろう。あとの事、
少女を抱きかかえた太郎は、
月明かりがその道を明るく照らす中、太郎はわき目もふらずに歩いていた。
その前に広がる、深い森の中へと続いている、その道を。
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