第31話
「俺が反対しても、2対1だし…… 行きますか」
「っし、行くか!」
黒木さんがアクセルを踏み込むと、車が発車した。
猛烈なブリザード。
外は昼だというのに、真っ暗だ。
車は凍り付き、とうとう動かなくなった。
「ちっきしょう!」
黒木さんがハンドルを叩く。
雪の女王がキレて、吹雪を巻き起こしてるのか。
「吹雪、止むまで待つしかないすね」
「……」
しかし、何時間待っても吹雪は止まらず、車内の暖房もあまり意味を為さなくなってきた。
どんどん気温が低下していく。
「やば、い……」
黒木さんがウトウトしている。
後ろの白鳥さんもさっきからずっと反応が鈍い。
俺は、黒木さんに呼びかけて、起きるよう促した。
「寝たら死にますよ!」
「……う、ぐ」
くっそ、どうする?
俺は幾分、2人よりか耐性はある。
……そうだ、俺はずっとこんな日を過ごしてきたんだ。
(俺が何とかしねーと!)
俺は、後ろの席に身を乗り出し、黒木さんの鞄をまさぐった。
「あった!」
見つけたのは、ライター。
そして、酒とアテ。
「俺らみたいな現場のヤツら、みんな吸ってるぜ」
そう言って空港の喫煙室でタバコを吸いに行くのを見かけた。
確かに、鳶の兄ちゃんらもタバコ率高いし、あながち間違ってないかもだ。
俺はライターの火を付けて、呼びかけた。
「宴の準備、出来ましたよ」
「うた、げ?」
俺は、缶ビールとアテを2人に配り、イントロを口ずさむ。
そして、ある歌を歌った。
今宵は百万年に一度、太陽が沈んで夜が訪れる日 終わりの来ないような戦いも今宵は休戦して祝杯をあげる
ドラゴンナイト 今宵、僕たちは友達の様に歌うだろう。
ムーンライト、スターリースカイ、ファイヤーバード 今宵、僕たちは友達のように踊るんだ。
ライターの火はキャンプファイヤー。
缶ビールはジョッキのグラス。
ビーフジャーキーは骨付きの肉だ。
車内は瞬く間に、宴の場へと変化した。
歌を歌って、イメージを膨らませる。
気がつくと、みんなでその歌を歌い、車内は笑い声で溢れた。
「ドラゲナイ~、ドラゲナイ~」
「あはは、あはははっ」
気がつくと、ブリザードは止んでいた。
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