第28話

ミイラ男って、あのミイラ男?




「9時には来られますので、それまでには起きてこられるよう、お願いします。 部屋は、空き室をお好きにお使い下さい」




 そう言って、俺らが唖然としている中、カナシオは下のフロアへと消えた。


















 翌朝、重たい体を起こして、どうにか起床。


時刻は8時丁度だ。


俺は、202号室から出て、1階のキッチンへと向かった。




「おはようございます、金魚掬様。 お好きな席にお座り下さい」




 どうやら俺が一番乗りらしい。


カナシオはエプロン姿で、俺が正面の椅子に座ると、料理を運んできた。




「おー、うまそー」




 運ばれてきたのは、サンドウィッチとスクランブルエッグだ。


サンドウィッチの具はバッファローの肉、とのことで、それにありついていると、遅れて白鳥さんがやって来た。


突然、カナシオの口調が変わる。




「よっ、白鳥。 飯、できてっから、早く食っちゃえよ」




「は、はあ……」




 タメ口かよ……


白鳥さん、明らかに戸惑ってるし。


まさか、遅れてくるとどんどん扱いが酷くなるパターンか?


最後に黒木さんがやって来ると、案の定、雑な対応を受ける。




「おい、黒なんとか。 早く飯食って仕事しろ」




「な、何だよ、急に……」




 寝ぼけ眼の黒木さんは、何故自分がそんな扱いなのか訳も分からず、始終、頭の上にはてなマークが浮かんでいる風だった。


















 9時になると、俺たちは玄関の前でミイラ男を待った。




「……本当に、来るのか?」




「……さあ」




 すると、正面玄関の扉が開いて、外から誰が現れた。


コートを羽織り、手には旅行鞄。


顔は、包帯でグルグル巻きだ。




(本当に、ミイラ男!?)




 俺ら3人がその場に釘付けになっていると、カナシオが前に出て何やら話をしている。




「……では、2階の方にお上がり下さい」




「カサカサ」




 カサカサ言いながら、ミイラ男は階段へと向かう。




「鞄を」




「……! あっ、鞄、持ちます」




 俺は慌ててカバンを手に持ち、2階へと案内した。


201号室に案内すると、紙の擦れるような音で何かを言われた。




「カサカサ」




「……あ、ありがとうございます」




 何て言われたんだ?


鞄を持ってくれてありがとう、かな?


入室が終わると、今度は食事の支度。


朝食べたバッファロー肉のサンドウィッチとスクランブルエッグを準備する。


卵を引っ掴んで、豪華にフライパンの中に投げ入れる。


ヘラで卵の殻ごと炒めると、皿の上にもそる。


白鳥さんと黒木さんの方も、サンドウィッチの準備を終え、ミイラ男を呼びに行った。


















「バキバキ、ゴリッ…… ベキ、バキ」




 ミイラ男がスクランブルエッグを食べると、ガラスでも砕いた様な音が響く。


白鳥さんが小声で俺に言った。




「殻、取ってないでしょ?」




「え、スクランブルエッグって殻取るの?」




「当たり前でしょ!」




 ミイラ男が何かを言った。


相変わらず、カサカサとしか聞こえないが、カナシオには通じているらしい。


ミイラ男が飯を完食し終えると、俺らに言った。




「部屋に戻ったら、マッサージをして欲しいとのことです。 白鳥様、後でお部屋に向かって下さい」




「えっ、私?」




 

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