第24話

「えー、皆様、飛行機が飛び立つ際は、立ち上がらないようおねがいします。 あてんしょんぷりーず、ホニャララ、ホニャララ」




 俺は、カナシオからもらった紙切れのセリフを棒読みした。


















 飛行機の中へと移動すると、これから仕事をする仲間っつーことで、お互い自己紹介をすることになった。




「……黒木岩男、30才。 仕事は、宅配をしている」




 黒木岩男。


さっきのガタイのいい、寡黙そうな兄ちゃんだ。




「初めまして、白鳥飛鳥です。 よろしくお願いします」




 手を前に組んで、お辞儀をする。


どことなく、高貴な感じのするねーちゃんだけど、年齢も素性も明かしてはくれなかった。


あんまり言いたくねーのかな?


最後に、俺が挨拶をする。




「金魚掬ノラオです。 年は18で、バイトやってます。 よろしくす」




 挨拶を終えると、カナシオが紙を手渡してきた。




「今から皆様には、キャビンアテンダントをしてもらいます。 アナウンスを3人の内のどなたかにやってもらいたいのですが……」




「ノラオ、やれ」




 突然、兄ちゃんにそう言われた。




「えっ、マジ!? 英語しゃべれねんだけど……」




 しかも、いきなりノラオ呼びかよ。


カナシオが説明する。




「英語にはカタカナでルビを振ってありますので」




「……」




 仕方なく、俺がアナウンスを受け持つこととなった。


















 飛行機は無事に離陸し、上空を飛行中だ。


生まれて初めての離陸で、内心ビビってたけど、思ったより普通だった。


むき出しのジェットコースターとは違い、周りが覆われている為、空を飛んでるって実感は薄い。


 これから飛行機はカナダのバンクーバー空港へと向かう。


そこを経由して、最終的にはイエローナイフ空港へと向かうが、バンクーバー空港につくまで、約10時間を要する。




(先はなげーな……)
















 12時になり、俺らはカートに積んである昼食を配ることとなった。




「えー、ふぃっしゅ、おあ、ちきん?」




 俺は、片言英語を自在に操り? 乗客に配っていく。




「chicken、please」




「おけおけ、ちきん、せんきゅー」




 鶏肉と魚の聞き分けくらいなら、俺でもいける。


ところが、飲み物については、相手が何を言ってるのかさっぱりだ。




「うぉーたー、おんりー」




「water、only? fuck! ピーピー」 




 放送禁止用語を連発する外国人。


知ったことか。


俺は、うぉーたーおんりーでその場を凌いだ。


















 昼食を配り終え、前方の添乗員用のスペースに戻って来ると、黒木さんが脂汗をかいていた。




「……俺は、このツアーに参加したことを、既に後悔している」




 どうやら、英語と接客が超苦手らしい。


すると、向こうから白鳥さんが戻ってきた。




「大丈夫でした?」




 俺が質問すると、白鳥さんはにこやかに返事した。




「私、大学の頃留学経験があって。 簡単な英会話ならできるんです」




 ルンルン気分で説明する白鳥さん。


つか、しゃべれんならアナウンスやれっつの!

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