第20話

俺とヨシコは次第に意気投合し、何も無い日はたまに遊びに行ったりもした。


映画を見たり、雑貨屋をウロウロしたり、飯食ったり。


もう少し遠くに行ってみたい、っつー話になると、本屋に行って、トラベルコーナーで立ち読みする。




「海とか面白そうじゃない?」




「海、ねぇ」




 イマイチ乗り気になれない。


俺、泳げねーし。


適当な本を手に取って、ペラペラめくると、気になるページが目に飛び込んできた。




「……オーロラ?」




 緑のカーテンみたいなのが、夜空に映っている。




「なあ、これ……」




 俺が写真をヨシコに見せると、それ、見に行きたいの? と聞かれた。




「なんつーか、星とか、結構好きなんだよな」




「星が好きなの? 意外な一面ね」




 キャンプ場で見た星が凄かったから、その延長なんだけどな。




「死ぬまでに一度は見たい景色、かぁ。 確かに、一度は見てみたいけど、海外だよ?」




 げっ、海外かよ。


この写真はカナダのイエローナイフ、っつー所で撮ったみたいだけど……




「ツアーで20万くらいかかるんじゃない?」




「……」




 無理無理。


今の俺に、そんな金を捻出することは出来ない。


本をそっとじすると、俺らは本屋を後にした。


















 帰ってから、妙にオーロラのことが気になっていた。


部屋で仰向けになって、天井を見つめる。




「……20万か」




 一度、見てみたい。


食費とかをケチって、バイトの数を増やせば、見に行けるんじゃねーか?


パスポートを込みにしても、30万くらいだ。


手に届かない額じゃない気がする。




(おっさんも、何か目的がないと張りが無いっつってたし、いいんじゃねーか?)




 俺は、名案を思いついた気になって、少しワクワクした。
















 翌朝、俺は新宿へと向かった。


アレからどうにか金を稼ごうとしたけど、全然貯まらない。


つか、金を貰ったそばから、店で豪遊するのが良くねーんだけど…… 


まあ、豪遊っつっても、ファミレスでステーキ食べるくらいだ。


そんな贅沢してる感じじゃない。


それでも、一日6000円のバイトを月12回程度こなして、毎月家賃光熱費、食費を払ったら手元はすっからかんだ。


そんなこんなで、俺は野良猫稼業を一時的に復活させることにした。

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